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「ボストン美術館 日本美術の至宝」 東京国立博物館
上野
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上野の東京国立博物館平成館では特別展、「ボストン美術館 日本美術の至宝」が
開かれています。
会期は6月10日(日)までです。

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ボストン美術館の日本美術の収集はアーネスト・フェノロサやボストンの医師で
資産家のウイリアム・スタージス・ビゲロー、美術館の中国・日本部長に就任した
岡倉天心に始まり、現在10万点以上を所蔵しています。
特に明治15年に来日し、後に美術館の理事を勤めたビゲローは日本文化に心酔し、
4万1千点を収集しています。

展覧会ではそのうち約90点が展示されています。

展示は以下の章に分かれています。

第1章 仏のかたち 神のすがた
第2章 海を渡った二大絵巻
第3章 静寂と輝き―中世水墨画と初期狩野派
第4章 華ひらく近世絵画
第5章 奇才 曽我蕭白
第6章 アメリカ人を魅了した日本のわざ-刀剣と染織

展示は、1、2、3、6、4、5の順になっています。

第1章 仏のかたち 神のすがた

「法華堂根本曼荼羅図」 奈良時代・8世紀
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釈迦が霊鷲山(りょうじゅせん)で法華経を説いている場面で、法華経如来寿量品
第十六による図像とのことです。
東大寺法華堂に伝来していたことからこの名があります。
諸仏のお顔は後の平安時代に比べておおらかです。

「普賢延命菩薩像」 平安時代・12世紀後半
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普賢延命菩薩は密教において普賢菩薩から派生した仏で、延命の力があると
されています。
台密(天台宗系密教)では二臂(腕が2本)で、頭が3つの白象に乗っています。
東密(真言宗系密教)では二十臂で4頭の白象に乗っています。
四天王に護られ、とても優美で繊細な、平安貴族の美意識を写した姿です。

「弥勒菩薩立像」 快慶 鎌倉時代・文治5年(1189)
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興福寺伝来で、像内に納められた経典の奥書から快慶の作と分かりました。
現存する快慶の作品の中で最も若い時に造られたとされています。
軽く腰をひねった端正な姿で、補修によるものか金泥が輝いています。


第2章 海を渡った二大絵巻

「吉備大臣入唐絵巻」 平安時代・12世紀後半
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後白河法皇が描かせた絵巻で、遣唐使として派遣された吉備真備(695~775)が
唐で難問に立ち向かい、大活躍するというお話です。
元は24m以上あり、現在は4巻になっていますが、すべて拡げて展示してあります。
ストーリー展開が面白く、マンガのような楽しさがあります。

唐に着いた吉備真備が案内された先は・・・
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高楼で、そこに閉じ込められてしまいます。
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「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」 鎌倉時代・13世紀後半
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「平治物語絵巻」は平治の乱(1159年)の模様を描いた絵巻で、合戦絵巻の最高峰と
され、元は15巻ほどだったらしく、現在は3巻と断簡数枚、摸本2巻が残っています。

ボストン美術館の所蔵する「三条殿夜討巻」は藤原信頼、源義朝らの軍勢が
後白河上皇の三条殿を襲撃する場面です。

右から左へ、急を知って駆け付ける公卿たち、後白河上皇を牛車に乗せる
武者たち、炎上する三条殿と武者の乱暴狼藉、一団となって引揚げる軍勢が
次々と描かれています。
絵巻を描いた頃より100年ほど前の、平氏の全盛をもたらした事件を、今見て来た
ばかりのような臨場感あふれる場面に描き出しています。

駆け付けた牛車は暴走し、轢かれる者もいます。
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三条殿は炎上し、抵抗する者は首を掻かれています。
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画面下の左に、逃げ惑う女房たちが火を逃れて落ちて死んだ井戸が見えます。
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討ち取った首を薙刀に掲げて引揚げます。
画面左に首が見えます。
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後白河上皇の車を囲んで引揚げる軍勢です。
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日本の美術品が海外にあるのは、日本美術を知ってもらうためにもとても良いことでは
ありますが、この絵巻だけは日本に残ってほしかったと思います。


第3章 静寂と輝き―中世水墨画と初期狩野派

「山水図」 祥啓 室町時代・15世紀末~16世紀初
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祥啓は鎌倉の建長寺の書記を勤めた禅僧画家で、関東で活躍しています。
空間を広く取った、のびやかな山水画です。


第4章 華ひらく近世絵画

「龍虎図屏風」 六曲一双 長谷川等伯 江戸時代・慶長11年(1606)
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長谷川等伯(1539-1610)の晩年の作で、尊敬する南宋の画家、牧谿の描いた
龍虎図に倣っています。
龍も虎も面白い表情をしていて、両者の間の雲がゆったりと広がっています。

「松島図屏風」 六曲一隻 尾形光琳 江戸時代・18世紀前半
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フリーア美術館所蔵の俵屋宗達の松島図屏風を元にしています。
うねる波が大胆に描かれ、画面からあふれ出しそうで、何かただならぬ気配があります。


第5章 奇才 曽我蕭白

曽我蕭白の作品が11点も展示され、展覧会の見所の一つになっています。
明治の頃に蕭白に注目したフェノロサやビゲローの眼力は大したものです。

「雲龍図」 八面 曽我蕭白 江戸時代・宝暦13年(1763)
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襖から剥がされたままの状態になっていましたが、修復によって公開可能になり、
日本で初公開される作品です。
左側に頭、右側に尻尾が描かれ、胴体の部分は欠けています。
漆黒の背景から迫力いっぱいに押し出された龍の頭には凄みがあります。
顔に愛嬌のあるのが面白いところです。
長谷川等伯の「龍虎図屏風」と見比べると作風の違いが分かります。

「商山四皓図屏風」(右隻) 六曲一双 曽我蕭白 江戸時代・18世紀後半
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商山四皓とは秦の時代に乱世を避けて商山に隠棲した4人の眉や髭の白い
老人のことです。
衣服や松の幹など、一気に描き上げた筆の勢いには圧倒されます。
太い墨の線には抽象画のような趣きもあります。


第6章 アメリカ人を魅了した日本のわざ-刀剣と染織

太刀や能装束などの展示です。

「唐織 紅地流水芦菊槌車模様」 江戸時代・18世紀
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流水に芦、菊、水車を織り出した豪華な能衣装です。
加賀前田家の旧蔵品にこれと同じ意匠のものがあるそうです。


展示された作品は逸品揃いで、ボストン美術館の日本美術コレクションの
充実振りには驚きます。
特に、明治初めの廃仏毀釈で危機的な状況にあった仏像や仏画が
多数救われたのは幸運でした。

私は初日のほぼ朝一番に行きましたが、会場はもうかなり混んでいました。
「平治物語絵巻」は並んで流れに沿って観る状態ではありましたが、しっかり
観ることが出来ました。

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【2012/03/21 04:00】 美術館・博物館 | トラックバック(4) | コメント(4) |
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  • 阿笠さん、こんばんは。
  • 行ってみるまでは蕭白があれだけ揃っているとは思いませんでした。
    ともかく龍の頭が圧倒的な迫力で、他のところはあまり気が付きません。
    等伯の雲は良かったですね。

    【2012/03/27 20:28】 url[chariot(猫アリーナ) #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 私も行ってみました。
    絵巻が観たくて行ったんですが、
    長谷川等伯や曽我蕭白に圧倒されて帰ってきました。
    曽我蕭白の龍、胴体部分欠けてたのですね、気づかなかった。恥ずかしい。

    【2012/03/27 03:19】 url[阿笠 香奈 #-] [ 編集]
  • あかーるさん、こんばんは。
  • 私もそこまで人気があるとは予想していなくて、行ってみて驚きました。
    絵巻をしっかり観ることが出来て良かったです。
    日本の美術品が流出したという問題がある一方で、海外で評価されたことで見直されたという面があって、難しいところです。

    【2012/03/21 20:25】 url[chariot(猫アリーナ) #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 初日行ってよかった
  • 私も初日の午後足を運びました。外の行列はありませんでしたが、絵巻は人だかりでした。事前にNHK番組を見て、物語を知っていて効果的に見れました。音声ガイドは簡単な感じでしたし。海外流出と日本美術評価の両面を考える企画ですね。私も追って簡単な記事を載せたいと思います。

    【2012/03/21 12:43】 url[あかーる #-] [ 編集]
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    blog_name=【なんとなく感想、レポートc⌒っ゚д゚)っφ メモメモ...】 ♥   ボストン美術館 日本美術の至宝@東京国立博物館
     
    すごいコレクションでした。でも、明治、大正の日本では、廃仏毀釈や西洋文化崇拝で評価低かったんですよねぇ。 そういう意味では、第二次世界大戦の戦災も逃れ、今の時代に見れる
    【2012/05/06 10:46】

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