「磯江毅=グスタボ・イソエ マドリード・リアリズムの異才」展 練馬区立美術館
中村橋
chariot

練馬区立美術館では、特別展「磯江毅=グスタボ・イソエ マドリード・リアリズムの
異才」が開かれています。
会期は10月2日(日)までです。
10月22日から12月18日まで奈良県立美術館でも開かれます。

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油彩による写実画を追求し、53歳で亡くなった磯江毅(1954-2007)の回顧展で、
約80点の展示です。
一部の作品は練馬と奈良で展示替えがあります。

磯江毅は大阪出身で、1974年にスペインに渡り、マドリードに定住して写実画を
研究します。
スペインではグスタボ・イソエとして高い評価を受け、神戸にもアトリエを構えて
活躍しますが、惜しくも2007年に亡くなります。

会場には磯江毅が絵画について述べた文章と、作品についての夫人の回想も
掲示されています。

「自画像(習作)」 1976年 キャンバス、油彩
スペインに渡って間もない、若い頃の自画像で、唇の厚い、負けん気な顔をしています。

磯江毅は自画像のほかに静物画でもガラスに映る形で自分を描き込んだりしています。

「新聞紙の上の裸婦」 1993-94年 紙、ジェッソ、鉛筆、水彩
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モデルと同じ方向にキャンバスを置いて描くことの出来た最初の作品とのことです。
それまでは部屋が狭いので、対象とキャンバスの距離を取るためキャンバスを部屋の
隅において、対象とキャンバスの間に立って描いていました。
対象を観てから振り向いている間に忘れてしまうと冗談を言っていたそうです。

新聞紙の活字や写真まで細かく描き込まれていますが、静かな統一感があります。
スペイン人が観ると新聞に書かれた現実の世界と裸婦の姿との間の緊張を感じる
かも知れません。

「静物(柘榴と葡萄とスプーン)」 1994年 板、油彩
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画面を横切る板の上に静物の置かれる構図は引き締まっています。

「深い眠り」 1994-95年 紙、鉛筆、水彩、アクリル、墨
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宙に浮いたように裸婦のみを描いています。
「新聞紙の上の裸婦」とは違って、対象のみに意識が集中します。

「鳥の巣」 1995年 板、油彩
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鳥の巣は写実画でよく選ばれる題材です。
卵の殻や羽毛も見え、鳥の巣を過ぎて行った時間を感じます。

「静物(鶉)」 1996年 板、油彩
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羽根をむしられたウズラも克明に描かれることで存在感を持ちます。

「かかし(鳥よけ)」 1997年 キャンバス、油彩
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長谷川町子美術館の所蔵です。
ぶら下げられた鳥の姿には、「静物(鶉)」と同じく、生きている時とは異なる
存在感があります。

「サンチェス・コタンの静物(盆の上のあざみとラディッシュ)」 2000-01年 
キャンバス、油彩

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スペインの写実画家、ファン・サンチェス・コタン(1560-1627)の「食用アザミの
ある静物」に倣っています。
叔母さんがこの絵を上下逆に観ていたのでがっかりしたとのことですが、
たしかに「食用アザミのある静物」でもアザミは右側に描かれています。
礒江の静物画では素材を片方に寄せるなど、構図に緊張感があります。

「鮭 ”高橋由一へのオマージュ”」 2003年 板、油彩
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まさしく、高橋由一の「鮭」へのオマージュです。
細長い板に直接描かれていて、正面からだと絵で描いたのか本物の板なのか
見分けが付きません。

「19世紀タラベラ焼と葡萄」 2004年 板、油彩
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タラベラ焼はスペインの地方の焼き物の一つで、素朴な味わいがあります。
葡萄はすぐ古くなるので、その部分を取り替えてはセロテープで貼り付けたり
していたそうです。
この作品も葡萄を右側に寄せてお皿も見せるなど、面白い構図にしています。

「バニータス II(闘病)」 2006-07年 板、油彩
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磯江毅が発病を知ったのは2002年とのことです。

バニータス(ヴァニタス)とは人生のはかなさ、空しさを表す静物画の画題です。
鏡、頭蓋骨、本、ロザリオはそれぞれ意味を持って置かれています。
鏡の中はキャンバスの前に立つ裸の自画像です。
画面構成はスペインのリアリズムの画家、エドワルド・ナランホの自画像、
「私は七月に犬の頭蓋骨を描いている」に拠っています。
ベラスケスの「ラス・メニーナス」を思わせますが、「ラス・メニーナス」では絵の
奥の方はドアが開いて明るくなっていますが、こちらは暗い空間です。

夫人の回想によればこの作品は内面告白の意味もあったとのことです。

「鰯」 2007年 板、ジェッソ、鉛筆、水彩
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完成作としては最後の作品です。
大胆な空間構成とオブジェのような鰯で、写実画を超えた世界を見せています。
皿の上には鰯の位置をずらせて出来た染みまであって、時の経過をうかがわせます。
この作品を描いたときは元気で、次の段階へのステップになると思っていたとの
ことです。

本当に次へのステップを感じさせる作品で、ここで亡くなったのはつくづく惜しいことと
悔やまれます。


磯江毅が絵画について述べていることの要旨です。

「表現するのは自分ではなく、対象物自体。
その物が表現している姿からどれだけ重要なエレメントを読み取り、抽出できるか。」

「物をよく見るということは物の成り立ちを見極め、それを解体、解剖すること。
ヨーロッパ美術の歴史が教えてくれたことである。」
セザンヌ以来の絵画のことを念頭に言っているのでしょう。

「私にとって写実は対象物の再現であって私自身の表現方法でもある。
写実表現は絶対的に信頼できるものでありながら、それを自分の問題として進化させて
ゆくことができない限り、”本当の写実絵画、普遍性を持った絵画”とはいえない。」
この言葉は写実画とは何かをよく表していると思います。


以下のスケジュールで画家によるギャラリートークも開かれます。
事前申込不要ですが観覧券が必要です。

8月20日(土) 15:00~ 諏訪敦
9月3日 (土) 15:00~ 石黒賢一郎

また、9月24日(土曜)15時から木下亮昭和女子大学教授による講演会、
「磯江毅とマドリード」も開かれます。
事前申込による抽選で、締切は9月2日です。

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【2011/08/14 04:45】 美術館・博物館 | トラックバック(2) | コメント(0) |
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