「DOMANI・明日展」 国立新美術館
乃木坂
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六本木の国立新美術館では「DOMANI・明日展」が開かれています。
会期は2月12日(日)までです。

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文化庁が1967年度から実施している、若手芸術家を研修のため海外に派遣する、
「芸術家在外研修(新進芸術家海外留学制度)」の成果を発表する展覧会で、
毎年開かれています。

前回の展覧会に行った時の記事はこちらです。

今回は以下の8人の作品が展示され、作家によるギャラリートークも3回に分かれて
行なわれます。

児嶋サコ・山口牧子・横澤典・綿引展子・津田睦美・阿部守・塩谷亮・元田久治

1月15日(日)11:00~
児嶋サコ・山口牧子・横澤典・綿引展子

1月27日(金)18:00~
津田睦美+rimaconaコンサート
(この回だけ時間が18:00からです。)

2月5日(日)11:00~
阿部守・塩谷亮・元田久治

また、今回は45周年の特別企画として、研修制度を経験したベテラン作家53名の
新作も展示され、以下のスケジュールでのギャラリートークも行なわれます。

1月28日(土)11:00~
遠藤彰子・奥谷博・福島瑞穂・峯田義郎・柳澤紀子

1月29日(日)11:00~
北久美子・北郷悟・絹谷幸二・久野和洋・田村能里子・宮いつき・谷中武彦・渡辺恂三

2月4日(土)11:00~
相笠昌義・池田良二・今井信吾・内田あぐり・大成浩・高柳裕・中井貞次・馬越陽子


私は15日のトークに行ってきました。
トークには今年も50人以上のお客さんが集まっていました。

山口牧子(1962~) 2007年 イギリス

7点の展示です。

「Bird Spinning No.9」 2010年
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縦195cmあり、滲んだ色彩の中にうっすらと鳥の形らしいものが見えます。

山口さんのトーク
「顔料のメディウムに蜜蝋も使い、水に溶いて綿布に染み込ませている。
以前から五感に感じるものを描きたいと思い、光や風をテーマにしてきた。
研修派遣以来、感覚的な画面だけでは伝えきれないと思い、フェニックスのような
再生の意味を込めて鳥を描き込むようにした。
画面には消えていく鳥、生まれてくる鳥を描いている。
背後を暗くすることで鮮やかな色を鮮やかに見せる工夫をしている。」


横澤典(よこざわつかさ)(1971~) 2007年 アメリカ

現在もニューヨーク在住で、写真による作品、7点の展示です。

「Lexington Avenue」 2011年
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(部分)
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横200cmで、樹木の写真を縦に細く切って長く並べてあります。

横澤さんのトーク
「美術学校を出てから郵便配達の仕事をしているとき、さまざまな視点から
町の風景を眺めるようにしていた。
派遣前は町の夜景や雪の日の風景を山から見下ろして、フラットな雰囲気の
写真にしていた。
そこには金持ちの家もそうでない家も等価で並列している眺めがあった。
ニューヨークには山が無いので、川の対岸から夜景を撮ったりした。
ニューヨークこそ多様性が並列している街と言える。
「Lexington Avenue」は通りの街路樹を端から端まで1本ずつ撮影して、
細く切ってつないだもの。
ニューヨークは自然に乏しいが、1本1本は小さくても集めれば豊かな自然が
あると思った。」

横澤さんのHPです。


綿引展子(1958~) 2008年 ドイツ

現在もドイツ在住で、布の作品、11点の展示です。

「つまさきだけは正直に」(部分) 2010年 
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縦205cmで、水彩で彩色したキャンバスに古着を切って貼ってあります。

綿引さんのトーク
「以前は目鼻の付いた顔を和紙に描いていたが、派遣をきっかけにドイツでは
布を使ったものを作っている。
古着には身体性があるので、それを利用して袖をそのまま貼り付けたりもする。
布の地塗りはアクリルや水彩を使うが、古着はそのものを残したいので着色しない。
古着からは感情的な働きかけがあり、それとのやりとりが生まれる。
知り合いの人の古着を使った作品はその人のポートレートに見える。」

綿引さんのHPです。


児嶋サコ(1976~) 2009年 ドイツ

現在もドイツ在住で、アクリル画11点、石膏像1点と写真映像の展示です。

「He kidnapped her daughter for bring up to his friend.」 2007年
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ネズミが鳥の卵を大事そうに抱えています。

児島さんのトーク
「普遍的な人間を表すため、ネズミやハムスターの姿を描いている。
実際の人を描くと、人種、性別、年齢などにとらわれてしまうし、猫だと女性的な
感じが出てしまう。
自分のイメージに一番合うのはネズミやハムスター。
以前はハムスターに仮装して、美術館の中に作った檻の中で1週間暮らす
パフォーマンスもした。
ネズミやハムスターは囲われた籠の中で管理され、せかせかと生きており、
自由は無い。
それが現代の人間に通じるように見える。
並べてある作品はホルマリン漬けのネズミ、他の動物の餌にするため解凍された
ネズミなどを描いたもの。
自分にはネズミは可愛い動物に見えるが、ドイツではペストの記憶があって
嫌悪感が強い。」

「He kidnapped ・・・」について児島さんに訊ねたところ、引きこもりの人間が
自分の部屋の中に人を引張り込んで恋人あるいは友達にしようとしている状況を
イメージしたとのことでした。

児島さんのHPです。


「DOMANI・明日展」のギャラリートークはここ数年、毎年聴いていますが、
今年もとても面白く、参考になりました。


他の3人の作品です。

阿部守(1954~) 2000年 イギリス、2009年 ノルウェー

鉄の彫刻1セットの展示です。
鉄板をゆがんだ円筒形に造形しています。

「曳船」 2008年
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この作品は展示されていませんが、同じように鉄をひも状に巻いたオブジェが
展示されています。

自己の内面にある形象、心象風景を、現実には存在しない空間、形態として
創造したいとのことです。

阿部さんのHPです。


津田睦美(1962~) 2009年 オーストラリア・ニューカレドニア

写真を中心に31件の展示です。
フランス領ニューカレドニアに移住し、太平洋戦争によってオーストラリアの
強制収容所に送られた日本人と、その子供たちの歴史をたどる写真や資料で
構成されています。

「ニナ/日系二世」 2006年
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現地の女性との間に生まれた日系二世の一部は今もニューカレドニアに住んでいます。
その人たちを訪ねたときの写真です。
地道に調べ、取材していて、ドキュメンタリーとしての重みがあります。

津田さんのHPです。


塩谷亮(1975~) 2008年 イタリア

人物画を中心にした油彩画15点の展示です。
風景画も1点あり、とても濃密でありながら穏やかな落着きがあります。
塩谷さんのコーナーはお客さんも多く、人気の高いことが分かります。

「Olga」 2008-2009年
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シャツの繊維まで細かく描き込まれていますが、やわらかな光の中の静かな時間を
感じます。

塩谷さんのHPです。


元田久治(1973~) 2009年 オーストラリア・アメリカ

リトグラフを中心に21点の展示です。
東京駅や国会議事堂、高層ビル、旅客機などが朽ちていく様子を描いています。

「Indication-Harbour Bridge(Sydney)」 2010年
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シドニーのシンボル、ハーバーブリッジが崩れかかっていて、向こうにオペラハウスが
見えます。


以下は45周年の特別展示です。

櫃田伸也 「方舟」 2003年
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淡く透明感のある色彩で、半ば抽象的な景色を描いています。
水の中に箱が浮かんでいるように見えます。

2011年に損保ジャパン東郷青児美術館で開かれていた、「櫃田伸也展
―通り過ぎた風景」の記事
です。


田村能里子 「砂の箱舟」(部分) 2008年 
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中央アジアのどこかでしょうか、老人が何か語り合っています。
壁にはうっすらと駱駝が描かれ古い壁画を見るようです。
ゆったり流れる時間を感じます。

田村能里子さんのHPです。


遠藤彰子 「映ろう街」 2009年
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とても箱舟には乗せてもらえないような人びとが欲望全開で乱痴気騒ぎを
繰り広げています。
ヒエロニムス・ボスの描く世界のようですが、右側でそれを見ているのは
作者自身でしょうか。
遠景の夕焼けの街の景色には何か懐かしさがあります。

遠藤彰子さんのHPです。


今年はベテラン作家の展示もあって、楽しい展覧会でした。

展覧会のHPです。
作者紹介やTwitterもあります。

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【2012/01/18 06:07】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(0) |
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国立新美術館で開催中の 「DOMANI・明日展」未来を担う美術家たち(文化庁芸術家在外研修の成果)に行って来ました。 展覧会公式サイト http://domani-ten.com/ 今年のDOMANI展の出展作家は以下の8名。 阿部守(彫刻) 児嶋サコ(絵画) 塩谷亮(洋画) ?...
【2012/02/05 21:30】

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