「セザンヌ パリとプロヴァンス」展 国立新美術館
乃木坂
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六本木の国立新美術館では、「セザンヌ パリとプロヴァンス」展が開かれています。
会期は6月11日(月)までです。

セ002


国立新美術館開館5周年記念の展覧会で、油彩、水彩、デッサンなど、セザンヌの
作品ばかり約90点が展示されています。

セザンヌ(1839-1906)は南フランスのエクス=アン=プロヴァンスで生まれ、
亡くなっています。
我が道を行く画家だったような印象がありますが、芸術の中心地パリへの思いは
強かったようで、若い頃には絵画の勉強のため滞在し、その後もサロンへの出展を
繰り返していて、晩年までにパリとプロヴァンスの間を20回以上も往復しています。

展覧会ではプロヴァンスで描いた作品か、パリとその周辺で描いた作品かが
分かるように展示されています。

展示は以下の章で構成されています。

第1章 初期
第2章 風景
第3章 身体
第4章 肖像
第5章 静物
第6章 晩年

第1章 初期

「四季」 1860-61年 パリ市立プティ・パレ美術館
セ010

縦314cmの長い画面に、四季を寓意化した人物が描かれています。
裕福な父の購入したエクス=アン=プロヴァンスの別荘の大広間を飾る作品で、
セザンヌとは分からない装飾的な画風です。

セザンヌが画家になることを喜ばなかった父に申し出て描いた絵とのことです。
実際に大広間に飾られていた時は壁の中心に、横向きで新聞を読む父の姿を
描いた絵が置かれ、その両脇に「四季」が並んでいました。
セザンヌも父にはかなり気を遣っていたようです。

「砂糖壺、洋なし、青いカップ」 1865-70年 
 グラネ美術館(オルセー美術館より寄託)

セ009

銀の砂糖壷や皿とともに描かれている青いカップも高価な品だったそうで、セザンヌの家が
裕福だったことを示しています。
パレットナイフによる荒々しい厚塗りはクールベの影響とのことですが、後のセザンヌを
思わせる存在感のある絵です。

第2章 風景

「首吊りの家、オーヴェール=シュル=オワーズ」 1873年 オルセー美術館
セ005

パリに出たセザンヌは印象派の人たちと交流を始め、特に長老格のピサロと
よく郊外での写生を行なっています。
作品も印象派の明るい絵柄になっています。

オーヴェール=シュル=オワーズはパリの北郊にある町で、後にゴッホは
この地で亡くなっています。
この絵は1874年の第1回印象派展にも出品されています。

「サント=ヴィクトワール山」 1886-87年 フィリップス・コレクション
セ004

やがてセザンヌは光を追及する印象派の技法に飽き足らなくなり、パリを去って
エクス=アン=プロヴァンスに戻ります。
セザンヌと言えば思い浮かぶサント=ヴィクトワール山がテーマとして登場してきます。

この作品では、画面手前にかぶさるように樹木を描くという、浮世絵の影響を受けた
構図が見られます。
画面両脇に木を置いて区切り、松の枝と山の稜線を揃え、道路や水道橋の直線を
入れるなど、色々工夫しています。
手前に樹木を描く構図が逆に日本画に影響を与え、若い頃の小野竹喬もよく似た作品を
描いています。

「トロネの道とサント=ヴィクトワール山」 1896-98年 エルミタージュ美術館
セ007

サント=ヴィクトワール山の描き方もより自由になってきます。
セザンヌ独特の、構築的筆触と呼ばれる短い規則的な筆遣いも、勢い良くおおらかです。
青い山と空が湧き上がっています。

第3章 身体

「3人の水浴の女たち」 1876-77年頃 パリ市立プティ・パレ美術館
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水浴図は古典的な画題で、女性美を描くため神話的な場面がよく利用されています。
セザンヌも男性や女性の水浴図をよく描いていますが、物語的な雰囲気は無く、
女性も優美とは言い難く、オブジェとして描いているようです。
両側の木が中心に向かって傾いていて、安定した画面構成を意識しています。

第4章 肖像

「自画像」 1875年頃 オルセー美術館
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30歳台半ばの自画像で、髪はもじゃもじゃ、いかにも頑固そうな顔をしています。
印象派の光を意識した描き方をしていますが、がっちりとした構成です。
筆の遅いセザンヌには自画像は具合の良い画題だったようです。

「赤いひじ掛け椅子のセザンヌ夫人」 1877年頃 ボストン美術館
セ006

パリ時代に妻のオルタンスを描いた作品です。
青系統でまとめた夫人の姿をソファの赤いかたまりが支えています。
オルタンスはまったく動かずにモデルを務めるので、セザンヌは「りんごのように
ポーズを取る」とほめています。

「アンブロワーズ・ヴォラールの肖像」 1899年 パリ市立プティ・パレ美術館
セ012

パリで初めてセザンヌの個展を開いた画商、ヴォラールの肖像です。
水色の入ったシャツの白が映えています。
こちらを向いている手や組んだ足は顔に比べて大きく、立体的に描かれています。
セザンヌに傾倒していた安井曾太郎が1939年に描いた、「F夫人像」も組んだ足を
大きく描いています。

ヴォラールはこの絵のために115回もポーズを取らされ、少しでも身動きすると、
「りんごが動くか!」と怒られたそうです。
セザンヌにとって静物画も肖像画も同じで、モデルはりんごのようなオブジェの一つで
あったことを良く示している逸話です。
光を追う印象派の描き方が時間をかけて描き込むタイプのセザンヌには合わなかった
のも分かります。

第5章 静物

「壷、カップとりんごのある静物」 1877年頃
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ありふれたカップや布、果物を並べただけの、堅牢でセザンヌらしさの表れた静物画です。
「赤いひじ掛け椅子のセザンヌ夫人」と同じ頃の作品で、パリの同じアパルトマンの壁紙が
背景に描かれています。
ここに描かれた壷の実物も展示されています。

「りんごとオレンジ」 1899年頃 オルセー美術館
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セザンヌの無骨な静物画も後にはここまで複雑で豪華な域に達しています。
3種類の布を使い、りんごやオレンジを4つのかたまりにして並べ、真中に1個りんごを
置いて画面をまとめています。
果物や陶器は無秩序に置かれているようで、絵としての統一感があります。

第6章 晩年

「サント=ヴィクトワール山」 1902年頃 プリンストン大学付属美術館
 (ヘンリーアンド・ローズ・パールマン財団より長期寄託)

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色彩も水彩画のように淡く、サント=ヴィクトワール山も水色の空に溶け込んでいます。
手前の景色は思いのままに筆が走っていて、抽象画のような趣きがあります。


セザンヌは色彩も形もきらきらしたところが無く、地味で無骨です。
何度もサロンの入選を目指していたのが不思議に思えるくらいです。
しかし、堅牢で揺るぎが無く、観ていて飽きが来ません。
日本でも洋画家ばかりでもなく、日本画家にまで大きな影響を与えています。
奥村土牛の作品の堅牢さを観ていると逆にセザンヌを思い出します。

セザンヌの初期から晩年への作風の移り変わり、パリ時代とプロヴァンス時代の違い、
テーマごとの特徴などがよく分かりました。
これだけまとまった作品を一度に観ることの出来る、貴重な展覧会です。





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