「大エルミタージュ美術館展」 国立新美術館
乃木坂
chariot

六本木の国立新美術館では「大エルミタージュ美術館展」が開かれています。
会期は7月16日(月・祝)までです。
火曜日が休館日です。

エ001


副題が「世紀の顔 西欧絵画の400年」となっていて、エカテリーナ2世以来、
ロシアのエルミタージュ美術館の収集してきた、16世紀から20世紀初頭にかけての
西欧絵画の83作家、89点の展示です。
ロシアの作品はまったく含まれていません。

展示は世紀別に以下のグループに分かれています。

I 16世紀 ルネサンス:人間の世紀
II 17世紀 バロック:黄金の世紀
III 18世紀 ロココと古典派:革命の世紀
IV 19世紀 ロマン派からポスト印象派まで:進化する世紀
V 20世紀 マティスとその周辺:アヴァンギャルドの世紀

I 16世紀 ルネサンス:人間の世紀

ロレンツォ・ロット 「エジプト逃避途上の休息と聖ユスティナ」 1529-30年
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ベネツィア派のロレンツォ・ロットの作品で、エジプトに逃避する聖家族に、
剣で刺されて殉教した聖ユスティナを組み合わせています。
色彩は明るく、普通は脇役的な聖ヨセフは赤い衣服の動きのある姿です。
聖ユスティナが剣を胸に刺したまま礼拝しているという、大らかな描きぶりです。

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 「祝福するキリスト」 1570年
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十字架の付いた球体(帝国宝珠)を持って祝福するキリストの姿です。
帝国宝珠はキリストによる世界の支配を表しています。
長い画業のティツィアーノが晩年に描いた作品で、内面的な深さを感じさせます。

バルトロメオ・スケドーニ 「風景の中のクピド」 16世紀末-17世紀初め
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クピド(キューピッド)が、商売道具の矢を入れたえびらを木に掛け、今度は誰に
矢を射ようかとこちらを見ています。
ちょっと考えているような表情に特徴があります。
バルトロメオ・スケドーニ(1578-1615)はモデナ出身で、パルマに住んだ画家ですが、
夭折しています。

2010年に国立西洋美術館で開かれた、「カポディモンテ美術館展」にもこの絵と同じ
図柄の作品が展示されていました。

「カポディモンテ美術館展」の記事はこちらです。


II 17世紀 バロック:黄金の世紀

ペーテル・パウル・ルーベンス 「虹のある風景」 1632頃-1635年
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ドラマチックな、いかにもバロックという絵を描いたルーベンスですが、晩年には
フランドル地方の風景画も描いています。
風景はライスダールのようにも見えますが、人物、特に豊満な女性の姿はまさしく
ルーベンスです。
大げさな人物画に比べて、ルーベンスの風景画には親しみやすさがあります。
情景は古代ローマの詩人、オウィディウスの「変身物語」にある、「黄金時代」に拠る
とのことで、争いのない平和な理想郷です。
オランダ独立戦争の時代に生きたルーベンスにとって、平和な世界は切実な願い
だったのでしょう。

レンブラント・ファン・レイン 「老婦人の肖像」 1654年
エ010

一時はレンブラントの母の肖像と思われていましたが、現在は不明とされているそうです。
フードを被った顔には老いの疲れと諦めのようなものが浮かび、大きなごつごつした
手にも表情があります。


III 18世紀 ロココと古典派:革命の世紀

クロード=ジョゼフ・ヴェルネ 「パレルモ港の入口、月夜」 1769年
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月明かりの港の情景で、雲もくっきり照らし出されています。
埠頭の焚き火との対比が効果的で、船室の窓の明かり、ボートのオールから
したたる水も描かれています。
クロード=ジョゼフ・ヴェルネ(1714-1789)はフランスの風景画家で、国立西洋美術館には
「夏の夕べ、イタリア風景」という、夕方の水辺を描いた叙情的な作品もあります。

ユベール・ロベール 「古代ローマの公衆浴場跡」 1798年
エ015

ユベール・ロベール(1733-1808)はフランスの風景画家で、荒廃した古代神殿や
モニュメントのある風景を描いて、「廃墟のロベール」と呼ばれていました。
横約194cmの大作で、古代ローマの巨大な浴場というかプールが描かれていて、
古代幻想と廃墟趣味が合わさっています。
ユベール・ロベールはルイ16世の宮廷の庭園デザイナーも勤めていたため、
フランス革命では投獄されたこともあり、これはその後に描かれた作品です。

ちょうど、国立西洋美術館では5月20日まで、「ユベール・ロベール-時間の庭-」展が
開かれています。
「ユベール・ロベール-時間の庭-」展の記事はこちらです。

エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン 「自画像」 1800年
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エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン(1755-1842)はマリー・アントワネットの
お抱え画家で、フランス革命後には一時、ロシアにも亡命しています。
ロシアの美術アカデミーに迎えられ、その後アカデミーに寄贈した作品です。
仕事着の黒い服を着ていますが、首飾りやショールの金色の輝きを強調しています。
チョークで描いているのはアレクサンドル・パヴロヴィッチ大公夫人とのことです。

この作品は2011年に三菱一号館美術館で開かれた、「マリー=アントワネットの画家 
ヴィジェ・ルブラン展-華麗なる宮廷を描いた女性画家たち-」のも展示されていました。

「ヴィジェ・ルブラン展」の記事はこちらです。

ジョシュア・レノルズ 「ウェヌスの帯を解くクピド」 1788年
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ウェヌス(ヴィーナス)と、その子のクピド(キューピッド)です。
モデルはネルソン提督の愛人だったエンマ・ハミルトンとされています。
ネルソン提督は1805年のトラファルガーの海戦でナポレオンのフランス艦隊を
破りますが、自身も戦死しています。
ジョシュア・レノルズ(1723-1792)はイギリスのロイヤル・アカデミーの初代会長に
なった人で、特に肖像画に優れていました。
この絵は保存状態に問題があったのでしょうか、かなりヒビが入っていて、一部が
剥落しているほどです。

ピエール=ナルシス・ゲラン 「モルフェウスとイリス」 1811年
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夢の神のモルフェウスが虹の神のイリスに起こされているところで、クピドは夜を表す
カーテンを開けています。
モルフェウスはモルヒネの語源とされています。
磁器のような硬質で艶やかな肌の神々による、ロマンティックな情景です。
ピエール=ナルシス・ゲラン(1774-1833)は「ナポレオンの戴冠式を描いた、
ジャック=ルイ・ダヴィッドに続く新古典派の画家ですが、感傷的な作風が特徴との
ことです。


IV 19世紀 ロマン派からポスト印象派まで:進化する世紀 

アルフレッド・シスレー 「ヴィルヌーヴ=ラ=ガレンヌ風景」 1872年
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ヴィルヌーヴ=ラ=ガレンヌはパリの北にある、セーヌ川に面した町です。
木立の向こうの対岸を眺める、印象派らしい明るい作品です。

ポール・セザンヌ 「カーテンのある静物」 1894頃-1895年
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しっかりと描きこまれた、安定感のある静物画です。
ちょうど同じ国立新美術館では6月11日(月)まで、「セザンヌ パリとプロヴァンス」展が
開かれているところです。

「セザンヌ パリとプロヴァンス」展の記事はこちらです。

フェリックス・ヴァロットン 「アルク=ラ=バタイユ風景」 1903年
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アルク=ラ=バタイユはノルマンディーの田舎町です。
明暗の対比を強調していますが、描き方は平面的で、アンリ・ルソーのような雰囲気です。
波打つ水流を真中に置いた画面は、尾形光琳の「紅白梅図屏風」に似ています。
フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)はスイス生まれの画家で、フランスで活動し、
ドニたちのナビ派にも参加しています。

フェリックス・ヴァロットンの作品は、2010年に国立新美術館で開かれた、『オルセー
美術館展2010「ポスト印象派」』に、「ボール(ボールで遊ぶ子供のいる公園)」(1899年)が
展示されていました。

『オルセー美術館展2010「ポスト印象派」』の記事はこちらです。

また、同じ年に世田谷美術館で開かれた、「ザ・コレクション・ヴィンタートゥール
スイス発―知られざるヨーロピアン・モダンの殿堂」展にも、「浴女のいる風景」
(1913年)など数点が展示されていました。

「ザ・コレクション・ヴィンタートゥール」展の記事はこちらです。


V 20世紀 マティスとその周辺:アヴァンギャルドの世紀

アンリ・マティス 「赤い部屋(赤のハーモニー)」 1908年
この展覧会を代表する作品です。
横220cmの大作で、ともかく画面いっぱいの赤色に目を奪われます。
とても平面的な描き方で、青い花柄は壁もテーブルクロスも区別無く埋めています。
赤と緑という補色を使った大胆な配色ですが、楽しく暖かな雰囲気に包まれています。
赤の部分は元は青色だったのを赤に塗り替えたということで、画面下の部分に
青緑色が残っています。
窓から見える家の壁の色もピンク色です。


さすが300万点以上を所蔵するエルミタージュ美術館だけあって、ルネサンス以降の
西欧絵画の歴史をなぞることの出来る、ぜい沢な展覧会です。
私は連休初日の4月28日に行ってきましたが、朝一番ということもあって、ゆっくり
観ることが出来ました。

展覧会のHPです。




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【2012/05/02 03:31】 美術館・博物館 | トラックバック(2) | コメント(0) |
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