「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」 国立西洋美術館
上野
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上野の国立西洋美術館では、「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」が
開かれています。
会期は9月17日(月・祝)までです。

べ016


プロイセン帝国の首都、ベルリンに19世紀に設立されたベルリン美術館の所蔵する作品の内、
15世紀のルネサンスから18世紀までの絵画、彫刻、素描約100点の展示です。

第1章 15世紀:宗教と日常生活

ルネサンス時代の宗教画や彫刻です。

エルコレ・デ・ロベルティ 「洗礼者聖ヨハネ」 テンペラ、板 1480年頃
ベ006

洗礼者聖ヨハネはヨルダン川でイエスに洗礼を授けたとされ、毛皮をまとい、
十字架の形の杖を持った姿でよく描かれます。

この絵のヨハネはやせこけ、現実の肉体から離れた存在に見えます。
体と同じように細い杖をつまむようにして持ち、恍惚とした表情で十字架を見つめています。
この立ち姿ではあまりに不安定だと思ったのか、画家はヨハネの身に着けた衣を
下に垂らして、添え柱のような役目をさせています。
背景に港が見え、空は朝焼けか夕焼けの赤い色に染まっています。

エルコレ・デ・ロベルティ(1451頃-1496)はフェラーラの宮廷画家を勤めていました。

ルーカ・デッラ・ロッビア 「聖母子」 彩釉テラコッタ 1450年頃
ベ012

つややかな釉を塗って焼いたテラコッタの聖母子像で、中世とは違って、
優しげで人間味のある表情をしています。
ルーカ・デッラ・ロッビア(1400-1481)はフィレンツェ出身の彫刻家で、
テラコッタによる彫刻を多く制作しています。

ティルマン・リーメンシュナイダー 「龍を退治する馬上の聖ゲオルギウス」 
 菩提樹 1490-95年頃

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聖ゲオルギウスは4世紀に殉教した聖人で、町に災いを為す悪竜を退治した
という伝説があります。
高さ50cmほどの像で、鎧兜姿の聖ゲオルギウスは馬上で剣を振りかざした姿ですが、
垂れ目で優しげな顔をしています。
馬に踏まれている悪龍は四天王像に踏まれている邪鬼のようです。

イタリアではルネサンスの盛りの時期で、ドイツのリーメンシュナイダーはレオナルド・
ダ・ヴィンチと同時代の人ですが、作品には中世的な雰囲気があります。

ティルマン・リーメンシュナイダー(1460頃-1531)は彫刻家で、多くの祭壇彫刻などを
残しています。
ヴュルツブルクの市長も勤めていますが、晩年にはルターの宗教改革を契機にして
起こったドイツ農民戦争に加担した廉で、腕を折られてしまったとも言われています。

バルトロメオ・ピントリッキオ 「聖母子と聖ヒエロニムス」 テンペラ、板 1500年頃
べ001

聖ヒエロニムスはラテン語訳聖書のヴルガータ聖書の翻訳者とされていて、
聖母子もヒエロニムスも聖書を持ち、イエスは何か書き入れています。
粗末な衣を着て、荒野でライオンを従えて瞑想している姿で描かれることの多い
ヒエロニムスですが、ここではカトリックの枢機卿の豪華な衣装を着ています。
イエスもお洒落なボンネットを被っています。
聖母子はつつましやかな表情で、静かな雰囲気の作品です。

ピントリッキオ(1454-1513)はペルージャ出身の画家で、繊細な作風で知られています。

第2章 15-16世紀:魅惑の肖像画

アルブレヒト・デューラー 「ヤーコプ・ムッフェルの肖像」 
 油彩、板(カンヴァスに移替え) 1526年頃

ベ002

デューラーらしい厳格なデッサンに基く見事な肖像画です。
ヤーコプ・ムッフェルはデューラーの友人で、ニュルンベルクの市長も勤めています。
着ている毛皮のコートや縁無しの帽子は上流階級のファッションとのことで、
毛皮の手触りまで表されています。
背景も渋くて深みのある青色をしています。
ムッフェルの亡くなった年に描かれていますが、表情には病の気配や衰えは見えません。

ルーカス・クラーナハ(父) 「マルティン・ルターの肖像」 油彩、板 1540年頃
ベ003

宗教改革の指導者、マルティン・ルター(1483-1546)の肖像画です。
ルーカス・クラーナハ(1472-1553)はドイツのヴィッテンベルクに住み、
ザクセン選帝侯フリードリヒ3世の御用絵師を勤めています。

フリードリヒ3世はローマ教皇と対立したルターを匿っていたので、クラーナハは
ルターの肖像画を何点も描いています。
クラーナハはルターの友人でもあり、ルターの結婚式の立会人も努めています。
そもそもカトリックでは聖職者の結婚を認めていないので、結婚すること自体が
カトリックへの反逆にあたります。
ルターのいかにも意志の強い、頑固そうな性格はクラーナハの作品にも表れています。

クラーナハはデューラーと同時代のドイツの画家ですが、描き方にデューラーのような
厳しさはなく、ややロマンチックです。

第3章 16世紀:マニエリスムの身体

ルネサンスの盛りを過ぎると、誇張された人体表現の目立つマニエリスムの時代に入ります。

ルーカス・クラーナハ(父) 「ルクレティア」 油彩(?)、板 1533年
ベ015

マニエリスムはイタリアを中心にした美術傾向ですが、ドイツのクラーナハにも
その影響が見られます。
ルクレティアは古代ローマの女性で、身の潔白を証明するため、短剣で自殺したと
されています。
黒を背景にした、大きくカーヴした身体と謎めいた表情を浮かべてこちらを見ている
顔の表現は、貞淑な妻とされているルクレティアのイメージには合いません。

第4章 17世紀:市民と戦士

17世紀はスペインからの独立を果たしたオランダの黄金時代です。

レンブラント派 「黄金の兜の男」 油彩、カンヴァス 1640年頃
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暗い背景の前で、強い光に照らされた黄金の兜を被った男の肖像です。
豪華な黄金の兜が見所で、兜の輝きがかえって老いた男の内面を映し出しています。
光を劇的に使っていて、同じオランダでもフェルメールの柔らかい光の表現とは
かなり異なります。

ヨハネス・フェルメール 「真珠の首飾りの少女」 油彩、カンヴァス 1662~65年
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この展覧会の一番の呼び物の作品です。
窓からの光は黄色い上着を着た少女を照らし、少女のその姿は鏡に映り、少女は
それを見てうっとりしています。
光と映像が画面の中で左右に往復しています。
リボンを持つ手もふわりと持ち上がった感じがします。

他の作品では地図や絵が掛けてある壁には何も無く、淡い光が当たっているだけで、
この白壁が作品の魅力になっています。
壁際の中国から輸入された磁器の壷や椅子の鋲は光を反射していますが、絵に見える
窓からの光ではこのようにならない筈で、フェルメールの工夫なのでしょう。

ヤン・ダヴィッドゾーン・デ・ヘーム 「果物、花、ワイングラスのある静物」 
 油彩、カンヴァス 1651年

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縦122.5cmの大きな作品で、精密な筆遣いによってみずみずしい花や果物を
描いています。
画像が暗くて分かりにくいですが、真中にはワインの入ったグラスも置かれています。
ヤン・ダヴィッドゾーン(ダヴィス)・デ・ヘーム(1606-1684以前)は細密な静物画を
得意としたオランダの画家です。

第5章 18世紀:啓蒙の近代

イタリアはロココの時代になっています。

セバスティアーノ・リッチ 「バテシバ」 油彩、カンヴァス 1725年頃
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旧約聖書に書かれた、ダビデ王がウリヤの妻バテシバの入浴する姿を見て横恋慕し、
ウリヤを戦場に送って戦死させ、バテシバを妻としたという話を題材にしています。
レンブラントの作品にも描かれた有名な場面ですが、こちらは華やかな明るい色彩で、
画面に動きもあり、聖書というより古典古代の世界を見るようです。

セバスティアーノ・リッチ(1659-1734)はヴェネツィア出身の画家で、ヨーロッパ各地で
神話や歴史を題材にした作品を描いています。

第6章 魅惑のイタリア・ルネサンス素描

ルネサンス時代の素描、約30点の展示です。

サンドロ・ボッティチェッリ 『ダンテ「神曲」写本より「煉獄篇第31歌」』 
 ペン、褐色インク、羊皮紙 1480-95年頃

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ダンテ(1265-1321)の叙事詩、「神曲」を102枚の素描連作に描いたうちの1枚です。
地獄を抜け、煉獄の山を登り詰めたダンテの前に、グリフィンの曳く車に乗った
ベアトリ-チェが現れ、ダンテを天国に導きます。

大勢で天上から迎えに来るという画面は浄土教の来迎図を思わせるところがあります。
ダンテを囲んで踊っている4人のニンフは、「思慮、正義、節制、剛毅」とのことです。
ニンフたちは、同じボッティチェッリの「プリマヴェーラ」や「ヴィーナスの誕生」に似ていて、
活き活きと軽やかに描かれています。

ミケランジェロ・ブオナローティ 「聖家族のための習作」  
 ペン、褐色インク、紙 1503-04年頃

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斜線を連続させるハッチングの技法によって、彫刻家らしく立体感を出しています。
左側に見える横顔はミケランジェロの横顔とされています。


絵画の他に彫刻も多く、ルネサンスのイタリアと北方のドイツやオランダなどとの
違いも分かり、楽しめる展覧会でした。


 

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【2012/06/17 00:08】 美術館・博物館 | トラックバック(3) | コメント(2) |
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  • あかーるさん、こんばんは。
  • フェルメールの作品が隣り合った美術館に展示されるというのは、とても嬉しいことです。
    「真珠の耳飾りの少女」もゆっくり鑑賞したいのですが、土曜日が初日なので、どれだけ混むだろうか少し心配です。

    【2012/06/17 23:51】 url[chariot(猫アリーナ) #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 首飾りと耳飾りの2つ
  • 真珠の首飾りの少女が日本公開され、続いて超有名な耳飾りの少女もまもなく公開され、東京はまたフェルメールフィーバーの季節ですね。耳飾りの方は映画にもなったので観るのも一層興味を誘う筈ですね。

    【2012/06/17 21:52】 url[あかーる #X037UcDo] [ 編集]
    please comment















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