「吉川霊華展 近代にうまれた線の探求者」 国立近代美術館
竹橋
chariot

竹橋の国立近代美術館では、「吉川霊華展 近代にうまれた線の探求者」が
開かれています。
会期は7月29日(日)までです。

吉001


吉川霊華(きっかわれいか)(1875-1929)は繊細で優美な線描を駆使して、
日本や中国の古典に題材を採った作品を描いた日本画家です。
作品やスケッチなど、約100点が展示されています。
チラシなども工夫してあって、作品目録は縦書きです。

吉川霊華は旧幕臣の子として明治8年に東京湯島で生まれています。
幼い頃から、文芸や作画を好み、初め浮世絵や狩野派を学んだりしています。
やがて幕末の復古大和絵の絵師、冷泉為恭の作品に出会って感動し、私淑します。

(参考)
冷泉為恭 「山越阿弥陀図」 文久3(1863)年 重要美術品
仏8-5-2010_002

この作品は出品されていません。
冷泉為恭は典雅で綿密な描きぶりが特徴です。

大正5(1916)年には結城素明、平福百穂、鏑木清方、松岡映丘とともに金鈴社を結成して、
古典絵画の研究に打ち込みます。
この時期から日本や中国の古典文学や伝説に題材を採り、線描美を追求するという
作風が確立します。

ここからは吉川霊華の作品です。

「藐姑射之処子(はこやのしょし)」 大正7(1918)年
吉008

部分
吉013

第3回金鈴社の出展作で、「荘子」の「逍遥遊」編に拠っています。
藐姑射の山に住むという、氷雪のように白い肌の、風を吸い、露を飲んで生きる乙女を
描いています。
遠景の山は中国六朝時代(3~6世紀)の遺物を参考に描き、手前の草木は日光の
植物を写生したものとのことで、いろいろ研究を重ねていることが分かります。

「香具耶姫昇天 竹取物語」 大正9(1920)年
吉009

第3回金鈴社の出展作で、吉川霊華としては色彩の多い作品です。
来迎図の形を借りた構図で、天人たちは奈良時代の衣装を着て、異界の住人である
ことを表しています。

「山水」 大正12-13(1923-24)年頃
吉010

流れる山霧か雲の中に浮かぶ山々です。
奇山、奇岩を描く訳でもなく、穏やかな山水を淡々と気負い無く、そして丁寧に
描いています。

「南極寿星」 大正14(1925)年
吉011
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部分
吉014

南極寿星は寿老人ともいい、道教では長寿をもたらす南極星(カノープス)の
化身とされています。
吉川霊華は紺紙金字経に触発されて、紺紙に金泥で描いた作品を何点も制作しています。
線描の冴えが際立つ作品です。

「離騒」 双幅 大正15(1926)年

吉006


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左部分
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右部分
吉003

楚の詩集、「楚辞」に収められている、屈原の詩、「離騒」に依った作品です。
屈原は諫言が楚王に容れられず、絶望して入水自殺しています。

この年の帝展に出品した作品で、軸物としてはかなり大きく、ほとんど彩色の無い、
白描画です。
「春蚕吐絲描」と名付けた、繊細で精密な描線によって、すがすがしく、張りのある
画面を描き出しています。

吉川霊華の作品の多くは金泥や銀泥などを少し差した程度のあっさりした白描です。

絵巻物風に絵に和歌を散らし書きした作品も多く描いています。
絵と書を組合わせた作品は後の安田靫彦や森田曠平にも見られますが、
吉川霊華の書は絵の中で描線と溶け合っています。

吉川霊華は「正しき伝統の理想は復古であると同時に未来である」と述べており、
奇をてらうようなところはまったくありません。
その作品は清雅という表現がふさわしく、現在ではこのような種類の画家はほとんど
思い浮かびません。

吉川霊華が54歳で亡くなったのは1929年ですが、川端龍子(1885-1966)はこの年に、
従来の室内観賞用の「床の間芸術」ではなく、展覧会での鑑賞にふさわしい、大きな画面の
力強い「会場芸術」を主張して青龍社を結成しています。

吉川霊華の作品の多くは個人の所蔵する掛軸であり、たしかに「床の間芸術」と言えます。
また、題材を古典に採っているため、現代から見ればなじみの薄い感じがするかもしれません。
しかし、逆にこのような気品に満ちた作品は、現在では大変貴重であると言えます。

展覧会のHPです。


美術館の庭にいたセキレイです。
吉0033

美術館の前の代官町通りです。
吉0035

坂を下った左は毎日新聞の入っているパレスサイドビルです。
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近くの神保町に寄って帰りました。
吉0091

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【2012/06/21 00:15】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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