「バーン=ジョーンズ展―装飾と象徴」 三菱一号館美術館
東京
chariot

丸の内の三菱一号館美術館では「バーン=ジョーンズ展―装飾と象徴」が開かれています。
会期は8月19日(日)までです。

B001

チラシもタブロイドの新聞風です。

イギリスのラファエル前派と関係の深い美術家、エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ
(1833-98)の展覧会です。
「物語の世界を描いた、英国絵画の巨匠。」という副題が付いていて、約80点が
展示されています。

バーン=ジョーンズはバーミンガム出身で、職人の子としては珍しくオックスフォード大学に
進み、神学を学びます。
そこで、後に詩人・デザイナーになるウィリアム・モリス(1834-96)と友人になり、
また美術評論家のジョン・ラスキン(1819-1900)やラファエル前派を結成した
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828-82)の影響を受けます。

1861年にはウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動にも参加しています。
アーツ・アンド・クラフツ運動は、産業革命により大量生産された粗悪な品を否定し、
手仕事による製品により芸術と生活の一致を主張する運動です。

ウィリアム・モリスは神話や伝説を基にした長編叙事詩、「地上の楽園」を書き、
バーン=ジョーンズの挿絵で世に出す予定でしたが実現せず、テキスト版だけが
出版されています。
解説によれば、バーン=ジョーンズの生涯は、モリスが活字で実現しようとした
「地上の楽園」を絵画により具現化したものとなっています。

「フローラ」 1868-84年 油彩、カンヴァス 郡山市立美術館
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花の女神フローラが春風の中で花の種を撒き、その足元ではチューリップが花開いて
います。
体の線を風を受けた衣装が包んでいて、風は西風の神ゼピュロスを暗示しています。
フローラとゼピュロスはボッティチェッリの「プリマヴェーラ」や「ヴィーナスの誕生」などにも
描かれています。

「運命の車輪」 1871-85年 油彩、カンヴァス 
 ナショナル・ギャラリー・オヴ・ヴィクトリア(メルボルン)

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運命の女神フォルトゥナの回す車輪にくくりつけられた、上から鎖を付けた奴隷、
冠を被り笏を持った王、桂冠を被った詩人です。
どんな身分の者も運命の流転には逆らえないことを表しています。

連作 「ピグマリオンと彫像」 1878年 油彩、カンヴァス バーミンガム美術館
物語の世界を好んで描いたバーン=ジョーンズは連作もよく手掛けています。
ギリシャ神話のお話で、キプロスのピグマリオンは自分の彫った理想の女性
ガラテアの彫刻に恋してしまいます。
それを憐れんだ愛の女神アプロディーテーは彫刻に生命を与え、ピグマリオンは
ガラテアと結ばれます。
ミュージカルや映画の「マイ・フェア・レディ」はこのお話を元にしています。

1.「恋心」
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物思いに沈むピグマリオンです。
向こうに三美神の彫刻が見えます。
バーン=ジョーンズはよく三美神を描いていて、会場にも三美神の見事なデッサンが
展示されています。

2.「心抑えて」
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ノミと金槌を持ち、出来上がった像を前に、恋心を抑えているところです。
家の外には点景として風俗画のような人物が描かれています。

3.「女神のはからい」
B004

美と愛の女神、アプロディーテーが鳩や薔薇とともに現れ、ガラテアに生命を与えます。
灰色だったガラテアも人肌色に変わっています。
海で産まれた女神なので足元には水が描かれています。

4.「成就」
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喜んでひざまずくピグマリオンと、人になったばかりのガラテアです。
どの絵も背景に工夫があって、場面に奥行きと変化を見せています。

「メドゥーサの死 II」 -連作「ペルセウス」より 1882年 グワッシュ、紙 
 サウサンプトン市立美術館

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イギリスの政治家、アーサー・バルフォアの邸宅の装飾を依頼されて描いた、
縦約150cmの大きな下絵です。
バルフォアはパレスチナでのユダヤ人国家の設立を支持した、「バルフォア宣言」で
有名です。

作品は、ギリシャ神話の英雄のペルセウスが切り取った怪物メドゥーサの首を
袋に入れて飛び去ろうとしているところです。
ペルセウスはヘルメスから与えられた、翼のあるサンダルを履いています。
黒い翼の二人はメドゥーサの死を知って駆け付けた姉たちです。
放射状に広がる三人の動きには迫力があります。

「果たされた運命-大海蛇を退治するペルセウス」 -連作「ペルセウス」より 
 1882年頃 グワッシュ、紙 サウサンプトン市立美術館

チラシに使われている作品です。
同じく下絵で、大海蛇の生贄にされそうになっていたアンドロメダを救い、
海蛇と戦うペルセウスです。
ペルセウスは肩に掛けた袋に入っていたメドゥーサの首を海蛇に見せ、
海蛇を石に変えて退治します。
スサノオのミコトがヤマタノオロチを退治する話とよく似ています。
ペルセウスや海蛇の黒とアンドロメダの白の対比が強調され、海蛇も四角い
画面の中で窮屈そうに暴れています。

「ティブールの巫女」 1875年 鉛筆、黒チョーク、パステル、金のハイライト
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ローマの初代皇帝アウグストゥスにキリストの降誕を告げたとされる巫女です。
ライオンの毛皮を被り、棍棒のような物を持った、まるでヘラクレスのような装いで、
右上には聖母子が見えます。
衣のひだが波打ち、量感のある堂々とした姿です。
イエスの産まれたのはアウグストゥスの治世に当たる時です。

「東方三博士の礼拝」 タペストリー 1894年(原画1888年) 
 マンチェスター・メトロポリタン大学

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縦258cmの大きく豪華なタペストリーで、制作はモリスの設立したモリス商会です。
マタイによる福音書の一場面で、人物の姿は彫像彫刻のように威厳があり、
ゴシックのステンドグラスを観るようです。
天使の掲げているのは、イエスの誕生を知らせるベツレヘムの星です。
マリアを象徴する白百合などの草花はとても華やかです。
地面と花のデザインはジョン・ヘンリー・ダールです。

当時人気が高く、10枚織られた内の1枚とのことで、上部にはバーン=ジョーンズの
デザインであること、この品はマンチェスター市民による寄贈であることなどを
書いた文が織り出されていて、1品ずつの注文生産だったことが分かります。

「眠り姫」 -連作「いばら姫」より 1872-74年頃 油彩、カンヴァス 
 ダブリン市立ヒュー・レイン美術館

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シャルル・ペローやグリムの童話で有名な「眠れる森の美女」の一場面で、
茂る野いばらに囲まれて眠る王女と侍女たちです。
横237cmの大きな画面は眠りを表す暗い緑色でまとめられ、右から左に
流れるように描かれ、布のつくる装飾的なリズムが目を惹きます。

解説によれば、眠りこそバーン=ジョーンズの求めてやまなかった、聖なる永遠性の
象徴とのことです。
産業革命以来の、無機的で騒々しい社会への異議の申し立てと言ってもよいでしょう。


神話、聖書、物語とさまざまのテーマを描いているので、観ていると自分もその世界に
惹き込まれてしまいます。
本人も描いていて、さぞ楽しく、耽溺していたことだろうと思います。
「描かれざる傑作の群れ」と題した、白いままの何枚ものカンヴァスを前にした、
マンガのような自画像もあるので、まだまだ描き足りなかったのでしょう。

展覧会のHPです。

バーン=ジョーンズやラファエル前派の作品は2011年に目黒区美術館で開かれた、
「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展にも展示されていました。

「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展の記事はこちらです。




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