「スイスの絵本画家 クライドルフの世界」展 Bunkamuraザ・ミュージアム
渋谷
chariot

渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでは「スイスの絵本画家 クライドルフの世界」展が
開かれています。
会期は7月29日(日)までで、開催期間中は無休です。

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エルンスト・クライドルフ(1863-1956)はスイスの絵本画家で、草花や虫を主人公に
した絵本で有名です。
展覧会では絵本の原画を中心に約220点が展示されています。

「自画像」 水彩、紙 1916年
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クライドルフはベルン生まれで、小さい頃から絵が好きで画家を志しますが、
家が貧しいため、先ずリトグラフの職人となって技術を身に付け、それから
ドイツのミュンヘンの美術学校に入学し、美術アカデミーにも進みます。

その頃の油彩画も何点か展示されていますが、古典的な写実画です。

ところが、学費を稼ぐための無理な生活や弟や姉、母の死が重なった衝撃で神経を
病んでしまったため、バイエルンのバルテンキルヘンで療養生活を送ることになります。

このアルプス近くの村での11月のある日、季節外れのプリムラとリンドウが
咲いているのを見付けたクライドルフはその花を摘んで持ち帰りますが、後でそのことを
後悔し、花の命を少しでも長く留めようと絵に描きます。
このことがきっかけで、花を主人公にした最初の絵本、「花のメルヘン」が生まれます。
写実と空想の間で模索していたクライドルフは絵本という形式を得ることで、新しい方向を
見出していきます。


「花のメルヘン」より(輪舞) 墨、水彩など、紙 1898年
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花が輪になって踊っています。
一番きれいな花が女王さまになるそうです。

「アルプスの花物語」より(アルペンローゼのところで) 水彩など、紙 1918-19年頃
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赤いアルペンローゼはスイスの高山植物の代表で、王冠を差し出している白い花は
北極起源のジルバーヴルツです。
クライドルフはさまざまな植物をとてもよく観察して描いています。

「アルプスの花物語」より(アザミとエリンギウム)
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左の棘のあるチャボアザミたちが右の棘の無いエリンギウムを馬鹿にしています。

「くさはらのこびと」より(こびとの村のけんかするふたりのお父さんこびと) 
墨、水彩、グワッシュ、紙 1902年以前

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バッタと小人を主人公にした、ストーリーのあるお話で、クライドルフの絵本の中で
もっとも人気のある作品です。

相手の家のバッタが自分の家の屋根の草を食べたといって喧嘩しています。
二人はバッタにまたがり、騎バッタ戦を演じますが、お月さまにいさめられて仲直りします。

元々はバッタに乗ったこびとの絵をユーゲントという雑誌に投稿して不採用になったのを
きっかけに生まれた作品とのことです。
ユーゲントはドイツのアール・ヌーヴォーであるユーゲント・シュティールの名前の元に
なっています。

日本と違ってヨーロッパでは昆虫への関心は薄く、ファーブル昆虫記も日本の方が
人気があるとのことですが、クライドルフはよく虫たちも描いています。

「バッタさんのきせつ」より(ボーリング) 墨、水彩など、紙 1931年
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バッタの奥さんたちはボーリングよりおしゃべりに夢中になっています。

「バッタさんのきせつ」より(秋のおまつり)
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バッタたちがハープに合わせて行進しています。

「バッタさんのきせつ」より(しあわせの女神)
先日、三菱一号館美術館の「バーン=ジョーンズ展」で観た、運命の女神の
「フォルトゥナ」が描かれています。
不安定さを表す球体に乗ったフォルトゥナをバッタたちがつかまえようとしています。

「ふゆのはなし」より(雪おばけの下で) 墨、水彩など、紙 1924年以前
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グリム童話の「白雪姫」を元に独自につくったお話です。
白雪姫と7人の小人に会いに、いとこの3人の小人が冬の森の中をやって来ます。
雪おばけを起こさないようにそっと通り抜けて行きます。

「花を棲みかに」より(音楽の散歩道) 墨、水彩など、紙 1926年以前
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春になったアルプスに次々と春の仲間が登場します。
これぞ妖精たちの生きがい、とあります。

「花を棲みかに」より(まま母さん) 
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スミレは蝶々の坊やには大喜びで蜜を勧め、トゲトゲ小僧にはけんもほろろです。
ドイツ語圏ではスミレの花の下弁を継母、側弁を実子、上弁を継子に見立てるそうです。

「花を棲みかに」より(わたりどり)
チラシに使われている作品です。
枯れた野づらの上をきらめく雲とまごうばかりに威風堂々と空を行く渡りの蝶とあります。

クライドルフはドイツのアール・ヌーヴォーであるユーゲント・シュティール(青春様式)の
画家とされていますが、そんな雰囲気に満ちた絵です。

「花を棲みかに」は自然の中の死と再生を描いた作品です。
クライドルフは死を生命の循環として捉えています。
自画像でも、手前を種、花、実、シャベルを持った虫が行進していますが、シャベルは
墓を表しているとのことです。
また、新しい種を植えることで再生がなされるという意味もあるように思えます。

「運命の夢と幻想」シリーズより(運命) 水彩、厚紙に貼られた紙 制作年不詳
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クライドルフの心象風景と思われる作品です。
橋の架かった道は山の方へと続き、空には月が出ています。
道端のベンチの背もたれには花の精が座り、遠くには小さな人影が見えます。
人影はクライドルフ自身で、人生の道を象徴しているのでしょうか。

クライドルフは、自分の芸術で花の儚さを少しでも引き止めることができたらという願いが
さまざまな作品を生んでいる、と述べています。

正確な自然観察と優しさが合わさり、日本人の自然観とも共通したところがあって、
とても親しみやすい作家です。

会場にはクライドルフの絵本も置いてあって閲覧できます。

展覧会のHPです。


 

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【2012/06/27 01:08】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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