「マウリッツハイス美術館展」 東京都美術館
上野
chariot

上野の東京都美術館では、「マウリッツハイス美術館」展が開かれています。
会期は9月17日(月・祝)までです。
その後、9月29日から2013年1月6日まで神戸市立博物館に巡回します。

マ001


17世紀オランダ・フランドル絵画を数多く所蔵している、オランダ・ハーグの
マウリッツハイス美術館の改修工事のため一時休館するのに伴う展覧会で、
副題も「オランダ・フランドル絵画の至宝」となっています。
約50点が以下の章に分かれて展示されています。

第1章 美術館の歴史
第2章 風景画
第3章 歴史画(物語画)
第4章 肖像画
第5章 静物画
第6章 風俗画

17世紀にオランダは独立戦争の末、プロテスタント国家としてハプスブルグ家の
スペインから独立します。
そして海外貿易により発展したオランダでは裕福な市民層により絵画の需要も高まります。
皇帝を戴かず、カトリックを否定した市民層の好みを反映して、歴史画、宗教画よりも
風景、肖像、静物、風俗といった親しみやすい画題が好まれます。

17世紀オランダ絵画の展覧会で楽しいのは、これらの我々にも分かりやすい、
さまざまの作品を鑑賞出来ることです。

第2章 風景画

ヤーコプ・ファン・ライスダール 「漂白場のあるハールレムの風景」 
 1670-75年頃

マ010

オランダの風景画らしい、広々とした空と湧き上がる雲を主題にした作品です。
遠くに聖バフォ教会が一際高くそびえていて、ハールレムのランドマークになっています。
当時の教会の財力と地位の高さを示した作品にもなっています。
肖像画家のフランス・ハルスはここに葬られています。

手前ではハールレムの特産の麻布を漂白しています。
小千谷縮は雪に晒して漂白しますが、こちらはどうやっているのでしょう。

第3章 歴史画(物語画)

ペーテル・パウル・ルーベンス 「聖母被昇天(下絵)」 1622-25年頃
マ007

「フランダースの犬」にも書かれた、ベルギーのアントワープ大聖堂の祭壇画の下絵です。
カトリックでは聖母マリアは神によって天に上げられているので、被昇天となります。
プロテスタントにはマリア信仰が無いので、この画題は描かれません。
ベルギーを中心とするフランドル地方はオランダ独立戦争でもカトリック側に留まっています。
ルーベンスの描く女性はふくよかなので、マリアもちょっと重そうです。

ヨハネス・フェルメール 「ディアナとニンフたち」 1653-54年頃
マ003

ディアナはローマ神話の狩の女神で、月の女神ともされています。
金色の衣装の女性は三日月の冠を着けているので、ディアナと分かりますが、
あまり古代風の雰囲気はありません。
初期の作品で、まだフェルメールのスタイルになっていませんが、やはり光を
意識しています。

第4章 肖像画

ヨハネス・フェルメール 「真珠の耳飾りの少女」 1665年頃
マ002

今回の展覧会の一番の呼び物です。
黒を背景にしてこちらを振り向いている姿は何か物語を感じさせます。
やわらかなフェルメールブルーも際立っています。
背景を無地にした場面設定のまったく無い絵というのはフェルメールの中でも珍しく、
誰を描いたのか興味が湧きます。
生涯売らずにいた作品とのことなので、自分の娘の肖像画なのでしょうか。

同じ時期に近くの国立西洋美術館で開かれている、「ベルリン国立美術館展 
学べるヨーロッパ美術の400年」で、フェルメールの「真珠の首飾りの少女」が
展示されているというのも嬉しいことです。
「ベルリン国立美術館展」の記事です。

フランス・ハルス 「笑う少年」 1625年頃
マ006

フランス・ハルスは笑い顔の肖像画で有名です。
服の襟やもじゃもじゃの髪を勢いの良い筆捌きで描いていて、少年の活き活きとした
笑顔とよく合っています。
このような自由でのびのびした対象の捉え方はマネや印象派に影響を与えたようです。

レンブラント・ファン・レイン 「自画像」 1669年
マ004

レンブラントが亡くなる年に描かれた、63歳の自画像です。
当時の63歳はかなりの年齢なので、老けてはいますが、自信を持った顔をしています。
肌のたるみまで表しているところなどには画家の執念を感じます。

この展覧会にはレンブラントの歴史画と肖像画の6点が展示されているというのも
大きな魅力です。

第5章 静物画

カレル・ファブリティウス 「ごしきひわ」 1654年
マ011

落着いた色調の小品で、声が美しいのでペットとして飼われている
ごしきひわを描いています。
五色ひわというだけあって色数の多い鳥なので、絵心の動く鳥なのでしょう。
逃げないように脚に付いている鎖も描かれていて、ちょっと見ると本物の鳥がいるようです。
ファブリティウスのサインと1654の数字が入っています。

カレル・ファブリティウスはレンブラントの弟子の才能のある画家で、フェルメールたちにも
影響を与えたようですが、この絵を描いた1654年に起きたデルフトの火薬庫の大爆発に
巻き込まれ、32歳で亡くなっています。

第6章 風俗画

ヤン・ステーン 「親に倣って子も歌う」 1668-70年頃
マ013

大きな作品で、赤ん坊の洗礼式のお祝いの場面ということですが、質素で勤勉な
オランダ人とは思えない、飲めや歌えの大騒ぎになっています。
オウムは物真似、バグパイプは怠惰や放蕩の寓意で、日本の「親の背を見て子は育つ」と
同じ意味の格言を絵にしたものです。
子供にパイプを吸わせている男はステーンの自画像とのことで、これでは子供の将来が
思いやられます。
ワインのグラスを中心にした、登場人物の多い、猥雑でその分活気のある画面です。

ヤン・ステーン(1626-79)は教訓的な風俗画を多く描いていますが、かえって
その猥雑さに魅力があります。

ピーテル・デ・ホーホ 「デルフトの中庭」 1658-1660年頃
マ012

ピーテル・デ・ホーホ(1629-1684)はフェルメールと同じデルフトやアムステルダムで
活動した画家です。
しんとしたおだやかな情景が特徴で、母子の姿もよく描いています。
透視図法もよく使い、この作品では煉瓦の床、石段、扉と続いて奥行きを深くしています。


「真珠の耳飾りの少女」はもちろんのことですが、オランダ・フランドル絵画の各分野の
代表的作家の作品が揃った、見応えのある展覧会です。

ミュージアムショップでは、キーホルダーを購入しました。
フェルメールの作品によく描かれている、窓のステンドグラスとデルフトタイルの
床の市松模様をあしらった、なかなかセンスの良い一品です。

私は初日の6月30日(土)の午後4時に行ってきましたが、入場までに館内で
約20分待ちでした。
その時点での展覧会のHPや入口での掲示では待ち時間は10分となって
いましたので、表示よりもう少し時間がかかるようです。

展示は地下1階の、美術館の歴史、風景画、歴史画から始まり、1階の肖像画
(フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」はこちら)、2階の静物画、風俗画、
ミュージアムショップとなっていて、上の階にはエスカレーターで上がります。




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【2012/07/03 05:07】 美術館・博物館 | トラックバック(4) | コメント(2) |
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  • 21世紀のxxx者さん、こんばんは。
  • コメント、ありがとうございます。
    フェルメールはもちろん、レンブラントなど、もう一度ゆっくり観たい作品が多かったので、私もまた行きたいと思っているところです。
    待ち時間も気にかかるので、HPでチェックして、いつ行ったら良いか考えています。
    やはり夕方が狙い目のようです。

    【2012/07/04 23:57】 url[chariot(猫アリーナ) #/8nqih4Y] [ 編集]
  • こんにちは
    こちらの展示は期待以上の内容で驚きでした。フェルメールだけでなくご紹介されている他の画家も素晴らしかったですね。
    もう一度行きたいと考えています^^

    【2012/07/04 21:25】 url[21世紀のxxx者 #-] [ 編集]
    please comment















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