「藤田嗣治と愛書都市パリ -花ひらく挿絵本の世紀-」展 松涛美術館
渋谷
chariot

渋谷区立松涛美術館では、「藤田嗣治と愛書都市パリ 
-花ひらく挿絵本の世紀-」展が開かれています。
会期は9月9日(日)までです。

藤田001


藤田嗣治(1886-1968)がパリで手掛けた多数の挿絵本を中心に、
同時代のエコール・ド・パリの画家たちが手掛けた挿絵本を
紹介する展覧会です。

ヨーロッパでは挿絵本は古くから芸術品として愛好され、19世紀末から
20世紀にかけては印象派などの影響で挿絵本の世界も大きな影響を受け、
出版ブームが起きていたそうです。

藤田がパリに渡った1913年はその挿絵本の興隆期で、藤田は1919年に
最初の挿絵本を手掛け、1920年代には30点以上も手掛けています。

藤田嗣治 「朝日の中の黒鳥」より 1927年
藤田008

フランス駐日大使ポール・クローデルが任期中に出版した本で、
546部刷られています。
歌舞伎、文楽、能などの日本文化や関東大震災についても書かれた
日本文化論です。
黒い鳥というとカラスを思い出しますが、この絵はタカのようです。

1920年代の藤田の挿絵本は圧倒的に日本的モチーフが多いそうです。

藤田嗣治 「中毒について」より 1928年
藤田003

ジュール・ボワシエールの著で、アヘンを題材にしており、
97部刷られています。
挿絵はインドシナの風俗が描かれています。

藤田嗣治 「海龍」より 1955年
藤田004

ジャン・コクトーの旅行記から日本にまつわる部分を抜粋したもので、
175部刷られています。
細い線描が際立っています。


パスキン、ヴラマンク、ピカソ、デュフィ、ボナール、シャガール、
ドラン、マティスなどの挿絵本も展示されています。

ジュール・パスキン 「シンデレラ」 1930年
ちょっと退廃的な雰囲気のシンデレラ物語です。


パブロ・ピカソ 「知られざる傑作」より 1931年
藤田009

画家を題材にしたバルザックの短編小説を気に入り、挿絵を描いています。

アンドレ・ドラン 「パンタグリュエル物語」 1943年
ルネサンス期にフランソワ・ラブレーの著した、ガルガンチュワとその子の
パンタグリュエルの繰り広げるこっけいな物語です。
ドランがフォーヴィズムを離れ、古典的な作風になっている時代の作品で、
ゆったりと素朴な描き方は大津絵を観るようです。


ヨーロッパでは第一次世界大戦(1914-18)の衝撃と絶望を経験した人たちは
近代文明というものに懐疑を抱くようになったということです。

そこで、「秩序への呼びかけ」(ジャン・コクトーの言葉)に代表される
意識を持ち、ギリシャ神話の「ダフニスとクロエ」や中世説話の
「ラ・フォンテーヌ寓話」の世界を古きよき時代の象徴として見直すように
なります。

マルク・シャガール 「ダフニスとクロエ」より
「フィレータースの果樹園」 1957-60年

藤田007

1952年に制作を依頼され、実際にギリシャにも2度行き、3年かかって
完成したもので、始め5、6色のつもりが20色以上になったそうです。

藤田嗣治 「ラ・フォンテーヌ 二十の寓話」より 1961年
藤田006


たしかに、戦車や毒ガスが登場し、ヨーロッパの多くの若者たちが機関銃で
命を落とした第一次世界大戦は人々に近代に対する深刻な懐疑を植え付けた
ことでしょう。
おおらかな古代ギリシャや懐かしい中世説話の世界を描いた作品も、
その背景には深い意味があることを知らされました。


日頃は目にする機会の少ないヨーロッパの挿絵本の魅力を教えてくれる、
興味深い展覧会です。

展覧会のHPです。





ポール・クローデルの「朝日の中の黒鳥」は日本語訳もされています。



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【2012/08/16 00:18】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(2) |
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  • akiさん、こんにちは。
  • コメントありがとうございます。
    そして、いつもご覧いただいてありがとうございます。

    私もこの展覧会で藤田の挿絵本の世界を初めて知りました。
    本当に多才な人だと感心します。

    カフェはニューオープンのお店も加えて書いていこうと思います。

    【2012/09/17 07:49】 url[chariot(猫アリーナ) #/8nqih4Y] [ 編集]
  • こちらのブログで知って
    会期ギリギリの先週の日曜日に行って来ました。

    藤田ってなんでもかける人だなと
    乳白色も良いですが、こちらもかなり魅力的でした。

    乳白色はどこかで見れそうですが、こういった物は、なかなか見る機会がなさそうなので行って良かったです!!
    ありがとうございます。

    いつもブログ楽しみにしてます
    カフェ巡りが大好きなので、東京に行った時の参考にさせてもらってました。

    【2012/09/17 01:14】 url[aki #-] [ 編集]
    please comment















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