「東京美術学校から東京藝術大学へ 日本絵画の巨匠たち」展 ホテルオークラ東京 2.西洋画
六本木一丁目・神谷町
chariot

虎ノ門のホテルオークラ東京ではチャリティーイベント、
「第18回秘蔵の名品アートコレクション展」として、
「東京美術学校から東京藝術大学へ 日本絵画の巨匠たち」展が開かれています。
会期は8月26日(日)までで、期間中は無休です。
今回の展覧会の純益は東日本大震災の復興支援のために寄付されます。

美術001


前回の日本画に続き、西洋画について掲載します。
会場の写真は主催者の許可を得て撮ったものです。

黒田清輝 「婦人像(厨房)」 1892年 東京藝術大学
美術009

フランス留学時に定宿だった家の女性を描いています。
色彩は明るいのですが、冬の情景なので、冷たい空気も感じます。

黒田清輝は元々、法律を学ぶためにフランスに留学したのですが、絵画に転向し、
師のラファエル・コランに学んだ外光派の技法を日本にもたらします。
外光派とは従来のアカデミズムの中に印象派の明るさを取り入れた画家を指します。
黒田清輝は1896年の東京美術学校の西洋画科の新設時には教官となり、以後日本の
洋画界を指導します。

黒田清輝 模写「羽根帽子をかぶった自画像」(原作:レンブラント) 
 1889年 東京藝術大学

美術005

黒田清輝はフランス留学中にルーブル美術館などで数多くの模写を行ない、
オランダのマウリッツハイス美術館にも行ってこの絵を模写しています。
レンブラントの原作はちょうど、上野の東京都美術館で開かれている、
「マウリッツハイス美術館」展で展示されているところです。

外光派の画家として帰国した黒田清輝ですが、さまざまの画風の習得も
怠らなかったことが分かります。

青木繁 「旧約聖書物語 挿絵」より「ソロモン王とエルサレム」 
 1906年 ニューオーサカホテル

青木010

青木繁の好んだ神話的な題材で、挿絵原画8点が展示されています。
青木繁は1904年に東京美術学校を卒業していますが、向こう気が強く、
先生の黒田清輝にも反発しています。

青木繁の「旧約聖書物語 挿絵」連作です。

美術0068


藤島武二 「池畔納涼」 1897年 東京藝術大学
美術006

師の黒田清輝ゆずりの明るい外光派の作品です。
藤島武二は黒田清輝に推されて、1896年に東京美術学校の助教授に就任し、
ヨーロッパ留学後に教授に就任しています。

岡田三郎助 「支那絹の前」 1920年 高島屋史料館
美術007

着物を好んで描いた岡田三郎助による夫人像です。
艶のある質感を油彩画ならではの技法で描き出しています。
着物は紅縮緬地松竹梅に匂袋小袖で、背景の裂とともに高島屋史料館が
保存しているそうです。

岡田三郎助は黒田清輝の下で東京美術学校の助教授に就任し、フランス
留学ではラファエル・コランの画塾に入っています。
1902年には教授に就任しますが、帰国後は外光派とは違った、官能性のある
女性像を描くようになります。

小磯良平 「裁縫女」 1932年 東京藝術大学
美術008

縦193cmの大作で、重厚な布地の表現が目を惹き、白との対比も
際立っています。
フェルメールの影響の感じられる作品で、テーブルから落ちそうな
ハサミなどはオランダ風俗画に見られる描き方とのことです。
床に三角定規が落ちているのもご愛嬌です。
小磯良平は東京美術学校を首席で卒業し、1950年からは東京藝術大学で
教えています。


東京美術学校時代から西洋画科の生徒は卒業時に自画像を遺していくことに
なっているので、作家の若いときの作風を知ることが出来ます。
黒田清輝が自画像を重視していたので、それ以来の伝統かもしれない
とのことです。
会場には萬鉄五郎、牛島憲之、山口薫など、13人の自画像が展示されています。
自意識の強そうな人、おだやかな感じの人などさまざまです。

佐伯祐三 「自画像」 1923年 東京藝術大学
美術010

印象派風の明るい色彩ですが、力強い筆触に特徴があります。
佐伯祐三は東京美術学校では藤島武二に師事し、卒業の翌年の1924にパリに
渡っています。
そこでヴラマンクに自分の作品を見せたところ、「このアカデミック!」と
一蹴されてしまい、それ以後画風も変わります。

佐伯祐三の、右はセザンヌ風の「パレットを持つ自画像」(1924年)、
左はヴラマンク風の「パリー雪景」(制作年不詳)、
ともにJX日鉱日石エネルギー(株)所蔵です。

美術0063


岡鹿之助 「自画像」 1924年 東京藝術大学
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横向きで空間を大きく取り、花も浮かばせて、夢想的な雰囲気があります。
自画像というより、自分の世界を描いているように見えます。

岡鹿之助 「燈台」 1967年 ポーラ美術館
美術012

岡鹿之助独特の点描による、堅牢な画面構成の中に抒情性を感じる作品です。 

野間仁根 「自画像」 1925年 東京藝術大学
美術013

キリコのような、静かに固まった自画像です。
後年の活気に満ち、あふれるような色彩の世界とはかなり違います。

香月泰男 「自画像」 1936年 東京藝術大学
美術014

おだやかな自画像ですが、香月泰男は1942年に応召して満洲に渡り、
1945年の敗戦とともにソ連に抑留され、1947年までシベリアで過酷な
抑留生活を送ります。
その体験が有名なシベリアシリーズを生みますが、この自画像を描いている
頃はまさかそんな運命が待ち受けているとは思ってもいません。

小磯良平は太平洋戦争中に戦争画を描いたことを終世悔いていたそうですが、
出征した後輩たちのことも思ってのことでしょう。

現在、東京藝術大学の所蔵する自画像は5000点を超えますが、もったいない
ことに展示する場所が無いそうです。
ウフツィ美術館の、自画像を集めて展示するヴァザーリの回廊にならって、
上野駅の通路あたりに展示スペースを設けられないものでしょうか。


なにしろ東京美術学校は日本を代表する作家たちを数多く送り出しているので、
この展覧会も明治以降の日本美術史を観るように濃密です。

展覧会のHPです。

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【2012/08/20 00:43】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(1) |
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    【2012/08/20 21:29】 url[ #] [ 編集]
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