「再興第97回 院展」 東京都美術館
上野
chariot

上野の東京都美術館では、「再興第97回 院展」が開かれています。
会期は9月16日(日)までです。

院001

目録の表紙や入場券の絵は菊川三織子、「秋桜花」です。

東京都美術館の改装工事が終わったので、昨年までの会場の日本橋三越から
こちらへ戻ってきました。

昨年の第96回院展の記事はこちらです。

9月2日には代表理事の田渕俊夫さんのギャラリートークがあったので、
それに合わせて行ってきました。

まず、同人の作品の一部を紹介します。
同人の作品にはそれぞれ作者による解説メモが添えられています。

小田野尚之 「響」 
院005

小田野さんの解説メモによれば、JR日田彦山線筑前岩屋駅近くの
7月中頃の風景です。
コンクリート橋なのでディーゼル車の音もカタンカタンとのんびり響き、
植物が橋の周りを覆っていて、人工物が自然の中に取り込まれていく様子に
心動かされたそうです。

倉島重友 「合歓」
独特の柔らかな色彩と筆触で、ねむの花と人物を描いています。

小山硬 「満鉄アジア号」
院006

小山さんの満洲の想い出シリーズの一つです。
「あじあ号」は南満洲鉄道(満鉄)を代表する、蒸気機関車による
特急列車で、大連とハルビンの間を運行していました。
小山さんのメモによれば、3才から小5の時まで満州に住んでいて、
姉が大連に居たので度々アジア号に乗って遊びに行ったそうです。

清水由朗 「煙波」
院003

ノルマンディーのバイユーのタペストリー美術館の庭に置いてある、
ノルマン人の船です。
バイユーには1066年のノルマン・コンクエスト(ノルマンディー公
ギヨーム2世によるイングランド征服)を描いた刺繍画が保存され、
その中には遠征軍の乗った船も描かれています。
清水さんのメモによれば、風と人の力だけで移動した人々の知恵と勇気を
想像して描いたそうです。

西田俊英 「鳴々生々」
院004

白と黒を主にした墨絵のような画面でタンチョウを描いています。
広々とした空間の中の白が際立っています。

村上裕二 「巨木とハシゴ」
院002

堂々として存在感のある巨木の下を山高帽を被った小人のような人物が
ハシゴを持って歩いています。
ちょっと演劇的な情景で、村上さんのメモによれば、彼は誰か自分でも
答えを探しているが、ただぼんやりと見てもらえればそれがいい、
とのことです。
村上さんの作品は時々、童話的な世界が顔を見せるのが特徴です。

田渕俊夫 「木の間」
吉野に取材した作品で、杉の木立を線描で表し、一部に緑色を
散らしています。
吉野は室町時代から植林が行われていたとのことで、古木と新芽の
取り合わせに興を感じたそうです。

以上が同人の作品です。

以下は田渕さんの解説のあった作品の一部です。

番場三雄 「タルチョ舞う中で」 日本美術院賞
院007

タルチョ(風旗)は5色の旗で、チベットで仏教の広がりを表すものとして
用いられ、屋外に張られています。
風の中を行くヤクの群れと人を量感のあるかたまりとして描いています。
本来は鮮やかな色彩のタルチョに敢えて色を加えず、抑制した色調で
まとめています。
田渕さんの解説によれば、番場さんは東北の在住で、その作風には
細かいところまで追求する粘り強さがあるそうです。

高島圭史 「旅の博物誌」 日本美術院賞
暗い赤紫色の色調で、女性が伏せて眠っているテーブルにはガラスの器や
さまざまな小物が置いてあります。
テーブルの辺りだけ光が当たり、幻想的な雰囲気を感じます。
解説によれば、日本画では難しい小さい物の描き込みもしっかりしている
そうです。

加藤厚 「松崖」
崖に生えた2本の松を、墨や緑青などわずかな色彩で描いていて、
昔の襖絵を見るようです。
田渕さんが解説で強調していたのは、日本画の色は元々は緑青、群青、
朱、胡粉など数種類しか無かったのが、最近は合成でさまざまな色が
出来るようになり、かえって色彩に頼る傾向が強くなってしまっている
ということです。
日本画の将来を考えると、色彩を抑えた作風を大事にする必要がある
とのことです。
田渕さん自身の作品も色数は極めて少なく、緑青や朱の色を対象の説明
としてではなく、独立した色面として使っています。

浅村弥生子 「工房へ」
白い壁、床、ドアを描いた画面で、ドアの隙間から黒猫がこちらを
覗いています。
解説によれば、単純明快で、壁などのマチエールがとても良く、
空気感もあって、猫の存在が効いているとのことです。

武部雅子 「無双の花」
こちら向きの女性を線描だけで描き、抽象化された背景の方に色彩を
加えています。
解説によれば、武部さんは存在感の無さを描く人で、普通は人物を
強調して描くところを、その逆を行なっているところが面白く、
自分ならこの人に賞をあげたいくらいだそうです。

田渕さんは新入選者の作品についての解説で、この人たちの技量は
常連の人に比べても遜色は無い、自分も院展に7回落選した後、
入選して都美術館の旧館の3階の隅に展示されたときは本当に
嬉しかった、と話されていました。


私の気の付いた作品を幾つか紹介します。

岩永てるみ 「天の窓
石造りの円形の塔の内側から見上げた画面で、丸く開いた天井の上に
教会の尖塔が見えます。
岩永さんは建築や構造物をよく描いています。

芝康弘 「みつめるもの」
幼稚園児くらいの子供たちが淡い光に包まれ、並んで座って一心に
何かを見ています。
芝さんの作品はすぐれた写実が際立っています。

柳沢優子 「いってきます」
真上から見下ろした大胆な構図で、玄関から出かける3人のちいさな
子供を描いています。
玄関の床の模様、石畳などに金を使った日本画特有の装飾性も見せ、
勢いのある元気な画面になっています。

院展のHPです。


上野の山の各施設では9月から11月にかけて、「上野の山文化ゾーン
フェスティバル」が開かれ、展覧会や講演会などさまざまなイベントが
行われます。

院008

今年は20周年にあたり、10月20日(土)には夜9時まで開館時間を
延長するナイトミュージアムも行われます。

詳しいことは台東区役所のHPの中のフェスティバルのぺージをご覧ください。

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【2012/09/04 00:01】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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  • コメント有難うございます。
  • 私も今年の院展では水墨画のような色数を抑えた作品が印象に残りました。
    田渕さんの解説にあった、日本画の原点への回帰が行われているのでしょうか。
    会場も広くなったので、作品も大きさが戻って、のびのび描いているように感じました。

    【2012/09/04 20:37】 url[chariot(猫アリーナ) #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 院展
  • 初日に行った院展、モノクロのような作品が多いなと感じていましたが、記事にあった田渕俊夫さんの解説に、日本画の原点に還るようなお話しがあったと知り、とても納得がいきました。
    会場に入ってすぐの松尾敏男さんの絵もそうでしたし墨の濃淡の美しさを改めて感じました。
    西田俊英さんの丹頂も4~5年前の作品よりも紅が抑えられていて、その分羽の白、水の濃灰色が美しく感じました。




    【2012/09/04 10:56】 url[ごとうはるえ #-] [ 編集]
    please comment















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