「シャルダン展」 三菱一号館美術館
東京
chariot

丸の内の三菱一号館美術館では「シャルダン展」が開かれています。
会期は9月8日(土)から2013年1月6日(日)までです。
シ001

フランスのロココ時代の画家で、静物画・風俗画を得意とした、
ジャン=シメオン・シャルダン(1699-1779)の作品38点を展示する
展覧会です。

シャルダンはルイ14世の治世の時代にビリヤード職人の子として
パリで生れています。
画家を志し、1728年の展覧会に出品した、彼の代表作「赤えい」などが
好評を得て、王立絵画彫刻アカデミーに入会します。

「食前の祈り」 1740年頃 ルーヴル美術館
シ003

静物画の画家として登場したシャルダンですが、静物画は格の低いジャンルと
されていたため、それより格の高い風俗画を描き始めます。

原題の「Bénédicité:べネディシテ」は、食前の祈りの最初の言葉で
「祝福あれ」という意味です。
お祈りの言葉を唱える男の子とそれを見つめる母と姉が描かれています。
この時代は小さな男の子には女の子と同じ服装をさせる習慣があったそうで、
椅子にかけてある太鼓は男の子であることを示しています。
観る人の目を惹くため、スプーンか何かをテーブルからはみ出させています。

落着いた色彩で何気ない日常の情景を優しく描いた作品で、シャルダンが
ルイ15世に謁見を許された時にこの主題の絵を献上し、評判となったので、
何点か同じ作品を描いています。

現在、同じ主題の作品は4点現存し、展覧会ではそのうち2点が出展されています。
画像はシャルダン未亡人が亡くなるまで所持していた作品で、もう1点は
エルミタージュ美術館の所蔵する、エカチェリーナ2世の愛蔵品です。

「病後の食事、(別名)思いやりのある看護人」 
 1747年 ナショナル・ギャラリー

シ004

鍋から卵を取り出して殻を剥く女性を淡い色彩で浮かび上がらせています。
背景を暗くして奥行きを見せない画面構成は「食前の祈り」と同じです。
テーブルに置かれた水差しや、パン、皿、銀のゆで卵立ては、これだけで
静物画の画面になりそうです。

シ005


シャルダンは1950年代半ばには風俗画を止め、静物画のみを描くようになります。

「カーネーションの花瓶」 1754年頃 スコットランド国立美術館
シ006

花を描いた絵として唯一の作品です。
描かれているのは、デルフト焼の花瓶に差されたカーネーション、月下香、
スイートピー、クロッカス、百合とのことです。
背景を浅くし、明暗を付けて立体感を出し、白を強調した色彩ですっきりと
まとめています。

「木いちごの籠」 1761年頃 個人蔵
シ002

左右対称を意識した画面で、左に白いカーネーションとガラスのコップ、
右に赤い桃とさくらんぼが置いてあります。
コップにはカーネーションの白が映り、コップ、桃、さくらんぼの質感の
違いも描き分けられています。
真中の三角形になった木いちごの山は輝き、自分で光を発しているようです。

影は右側にありますが、対称的に背景は左側を暗くしてあります。
シャルダンは対象の影と背景の明暗を逆にして全体の明暗を際立たせる
技法をよく使っています。
地味な色調のシャルダンの中では、とりわけ華やかな作品です。

「銀のゴブレットとりんご」 1768年頃 ルーヴル美術館
シ007

赤い鉢とシャルダンの作品によく登場する銀のゴブレットが並んで
バランスの取れた構図になっています。
無駄の無い、堅牢で緊密な画面で、セザンヌはこのような作品に
影響を受けただろうなと思います。

シャルダンは当時は一番格上の歴史画を描かない画家で、作風もロココの
派手さの無い、地味で落着いたものですが、ルーヴル宮に官舎を与えられ、
アカデミーの会計官とサロンの展示係も勤めます。
晩年には眼を患ったため、パステルで自画像などを描いてもいます。


シャルダンは各国の美術館の所蔵作品数も少なく、日本での個展は今回が最初です。
2点で一対になっている作品も何点か展示されていて、この展覧会はシャルダンの
作品をまとめて観ることのできる、とても貴重な機会です。

展覧会のHPです。


会場の一室には、三菱一号館美術館の収蔵した、オディロン・ルドンの
「グラン・ブーケ」も展示されています。

「グラン・ブーケ」についての記事です。

***
三菱一号館美術館の次回の展覧会は、「奇跡のクラーク・コレクション
― ルノワールとフランス絵画の傑作」展です。
会期は2013年2月9日(土)から5月26日(日)までです。

クラーク001

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【2012/09/09 00:11】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(4) |
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  • dezireさん、こんばんは。
  • コメント有難うございます。
    「食前の祈り」のような作品や静謐な静物画の揃った充実した展覧会でした。
    「食前の祈り」の2つの作品についてのdezireさんのコメントは興味深く読ませていただきました。

    【2012/12/25 23:05】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • こんにちは。
    私もシャルダン展を見てきましたので、興味深く読ませていただきました。
    「食前の祈り」は心温まるすばらしい作品でしたね。
    「木いちごの籠」を始め、静粛の巨匠を感じさせる静かな雰囲気の静物画もすてきでしたね。

    私もブログにもシャルダン展について書いてみましたので、ご意見、ご感想などコメントなどをいただけると感謝します。

    【2012/12/25 11:23】 url[dezire #tLX0El8c] [ 編集]
  • flowerhさん、コメント有難うございます。
  • flowerhさんのブログはいろいろな分野の
    ことを書かれていて興味深いです。
    9月になると一斉に展覧会が始まるので、
    まだ暑い中を歩き回っています。
    最近は新しくオープンしたカフェにも
    顔を出したりしています。

    【2012/09/10 06:45】 url[chariot(猫アリーナ) #/8nqih4Y] [ 編集]
  • こんばんは~

    美術になかなか詳しいのですね。
    普段そんなに行きませんが、
    たまにいくと落ち着きます。

    芸術の秋ですね(^^)

    【2012/09/09 18:07】 url[flowerh #-] [ 編集]
    please comment















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    blog_name=【弐代目・青い日記帳 】 ♥   「シャルダン展」
     
    三菱一号館美術館で開催中の 「シャルダン展― 静寂の巨匠」に行って来ました。 「シャルダン展」公式サイト http://mimt.jp/chardin/ 千言万語を費やしてもこの展覧会の素晴らしさ語
    【2012/09/15 01:00】

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