「お伽草子 この国は物語にあふれている」展 サントリー美術館
六本木・乃木坂
chariot

六本木のサントリー美術館では「お伽草子 この国は物語にあふれている」展が
開かれています。
会期は11月4日(日)までです。

伽001


室町時代から江戸時代初期に作られた短編の物語、「お伽草子」は
約400種類が残っているそうです。
その中には「浦島太郎」や「酒呑草子」なども含まれています。
平安時代の貴族文学に連なる文芸ですが、戦乱が続き、民衆が台頭してきた
時代を背景にしており、貴族文学に比べると、短編で、絵が付いていて、
テーマが新奇なのが特徴です。

「福富草紙」 室町時代 京都・春浦院 重要文化財
伽005

伽011

ある男が、自在に放屁する芸で財を得た男をうらやんで、貴人の前で真似を
したところ、粗相をしてしまい、散々に打たれて追い出されるという話です。
血が噴き出し、着物は破れて逃げ帰る男を、道行く人も容赦なく笑っています。
愚か者に対する痛烈な嘲りを観て取れます。
個人の才覚に目覚め始めた、室町という時代を表しているのでしょうか。

「酒伝童子絵巻」 狩野元信 大永2年(1522) サントリー美術館
伽006

伽012

酒呑童子の説話には、舞台を大江山とするものと、近江伊吹山とするものがあり、
こちらは伊吹山です。
小田原の北条氏綱の注文により狩野元信と弟子が描いた絵巻で、源頼光と
家来たちが討っている場面では酒呑童子の首が源頼光に喰らい付いています。
戦国時代の好みを映して凄惨な光景ですが、他の場面では同じ日の出来事の中に、
季節の異なる紅白梅、藤、萩、菊が描かれ、目を楽しませてくれます。

「蛙草紙絵巻」 室町時代 
根002

根007

蛙の精に頼まれた男が御屋敷の床下に閉じ込められた蛙を掘り出し、
呪いの解けたその家の娘と結ばれるというお話です。
でんと構えた蛙や、逃げ出す子供、恐る恐る覗き込む人、あわてて
駆けつける人の姿がユーモラスです。

「ささやき竹物語」 江戸時代 西尾市岩瀬文庫
伽010

花見に訪れた娘に一目惚れした毘沙門堂の別当が、夜中にその両親の寝ている
所の近くに忍び込み、耳元に長い竹を伸ばして、毘沙門のお告げを偽って
毘沙門堂に娘を預けるよとささやきます。
信じた両親は娘を長櫃に入れて送り出しますが、不審に思った貴公子が娘を
子牛と入れ替えて、別当の企みは失敗します。

旧約聖書でも神は静かにささやくとありますが、この僧はとんでもないことを
ささやいています。
お伽草子は主人公の出家や成仏で終わる話が多いですが、破戒僧を嗤う話も
数多くあります。

岩瀬文庫のHPには、ナレーション付きで「ささやき竹物語」が紹介されています。

「鼠草子絵巻」 室町~桃山時代  サントリー美術館
伽007

伽013


サ011

四条堀川に住む鼠の権頭(ごんのかみ)は、子孫が畜生道に堕ちることを
恐れて清水寺に祈願して美しい姫君と結ばれるものの、清水寺にお礼参りに
行っている隙に正体が露見してしまい、世をはかなんで出家するという
お話です。
逃げていった姫君の残した、鏡、かもじ、碁盤などの道具を眺めながら、
鼠の権頭がいくつか和歌を詠む場面もあります。
和歌は源氏物語の中の歌を下敷きにしているそうです。

鏡: おもかけのとまるならひのありとせは
    かゝみをみてもなくさめてまし

本歌:源氏物語、須磨の巻 紫の上

   別れても影だにとまるものならば
    鏡を見てもなぐさめてまし

なかなか雅な権頭です。
布団を詠んだ歌もあるのは、田山花袋の「蒲団」のようです。

お伽草子には清水寺が登場する作品が多くあり、「蛙草紙絵巻」も清水寺詣り
から話が始まっています。 

「雀の小藤太絵巻」 室町時代 サントリー美術館
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子を蛇に食べられて悲しむ雀の小藤太夫婦の許にさまざまの鳥たちが弔問に訪れ、
和歌を詠み交わします。
やがて出家した夫婦は諸国の社寺を訪れた後、庵を結んで極楽往生を遂げます。
墨染の衣を着た雀の姿がとても可愛らしく描かれています。
この絵巻でも清水寺に参詣している場面もあって、社寺巡り絵巻となっています。

「是害房絵巻」 南北朝時代 泉屋博物館 重要文化財
伽002

「今昔物語」にあるお話で、中国から来た天狗の是害房は比叡山の僧と法力競べを
して負けてしまいます。
日本の天狗たちによる賀茂河原での湯治などの介抱のおかげで回復した是害房は
送別の歌会を催してもらった後、帰って行きます。
巧みな筆さばきの絵巻で、湯を沸かして是害房を風呂に入れたりして甲斐甲斐しく
介抱する天狗たちの様子が活き活きと描かれています。

「付喪神絵巻(つくもがみえまき)」 室町時代 岐阜市・崇福寺
伽008

伽014

節分の煤払いで不用品として捨てられた、燭台、臼、壷などの古道具類が、
長年のご奉公が報いられなかったと恨んで、人間に復讐しようと妖怪になる
お話です。
止めようとした数珠の一蓮を手棒の荒太郎が追い払う場面もあります。
船岡山の奥の長坂に棲み付いた妖怪たちですが、最後は数珠の一蓮の導きで
成仏を遂げます。
モノに対する日本人の感性をよく表した絵巻です。

「百鬼夜行絵巻」 室町時代 京都・真珠庵  重要文化財
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仏事の道具や生活の道具が妖怪となって深夜の京都の町を練り歩いている図です。
「百鬼夜行」を描いた作品の中で最古とされる有名な絵巻で、「付喪神絵巻」と
関連があるようです。
日本の妖怪たちにはどこか微笑ましいところがあり、観ていて楽しくなってしまう
絵巻です。


どのお伽草子も、今の感覚で観ても面白く、室町時代以来の人たちの息遣いまで
聞こえてきそうです。
稚拙な絵の草子も多いですが、かえって当時の人たちの活き活きとした感性が
伝わります。

会期中、かなりの展示替えがありますので、展覧会のHPの中の展示替リストで
ご確認下さい。

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【2012/09/25 00:04】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(3) |
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  • ありがとうございました
  • お早いご返事ありがとうございます。

    了解しました。やはり美術館に問い合わせてみます。

    お手数おかけしまして申し訳ありませんでした。


    【2012/10/03 09:05】 url[通りすがりの者です #-] [ 編集]
  • こんばんは。
  • お問い合わせの件ですが、酒伝童子が酔っ払って寝ている場面までは確かにありましたが、お問い合わせの場面が展示されていたかは、今では記憶がはっきりしません。巻物でもあり、かなり展示替えのある美術館なので、事前に電話などで確認されると良いと思います。
    お役に立てず、申し訳ありません。


    【2012/10/02 23:40】 url[chariot(猫アリーナ) #HDnOpnTU] [ 編集]
  • お尋ねしたいことがあります
  • はじめまして。

    サントリー美術館について調べていたところ、こちらのブログにたどり着きました通りすがりの者です。

    文章から展覧会の素晴らしさが生き生きと伝わってきて、読んでいるだけでこちらもわくわくし、是非、私も今回の展覧会に行こうと思い至ったのですが、展示替えがあるということでその点に関して伺いたいことがあります。

    狩野元信筆の「酒呑童子絵巻」なのですが、こちらはブログ主様が訪れた時点で下巻(酒呑童子の首が暴れ回る場面)の展示があったのでしょうか?個人的にハイライトであるこの場面を是非見たいと思っておりますので、教えていただけるとありがたいです。

    突然の質問で大変失礼極まりないと存じておりますが、何卒、ご回答の程よろしくお願います。

    【2012/10/02 19:55】 url[通りすがりの者です #-] [ 編集]
    please comment















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