「維新の洋画家 川村清雄」展 江戸東京博物館
両国
chariot

両国の江戸東京博物館では、「維新の洋画家 川村清雄」展が開かれています。
会期は12月2日(日)までで、会期中、一部展示替えがあります。

川001


川村清雄(1852-1934)は幕臣の子で、祖父修就(ながたか)は新潟奉行や
長崎奉行を勤めています。

少年時代は徳川宗家の当主、家達(いえさと)の遊び相手役の近習として仕え、
幕府崩壊後の明治4年(1871)に徳川家派遣留学生として、法律や政治を学ぶため
アメリカに留学しますが、幼い頃から好きだった絵の才能を認められて洋画を
学ぶことを決心します。
そして、パリやヴェネツィアで本格的に勉強した後、明治14年(1881)に帰国します。
その後、同じく幕臣だった勝海舟の保護を受けます。
勝海舟は赤坂氷川町の自宅に清雄のために画室を建て、絵の注文まで取って
来ています。

「聖ガエタヌスに現れる聖家族」 ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ 
 1735- 1736 ヴェネツィア・アッカデミア美術館蔵

川011

ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ(1696- 1770)はヴェネツィア派の画家で、
清雄が最も感銘を受けた画家の一人です。
ヨセフが幼子イエスを支えている、珍しい図柄です。

「徳川家茂像」 明治17年(1884) 徳川記念財団蔵
川014

若くに亡くなった14代将軍家茂(1846-66)の束帯姿です。
背景は金地で日本画のようですが、床板の描き方は洋画風で奥行きを
感じさせ、袍(ほう)も立体的に描かれ、模様まで描き込まれています。
参考になる写真も無く、制作に1年かかったそうですが、色彩も重厚で
将軍像にふさわしい気品のある作品です。
清雄の談によれば、これを見た勝海舟は悦んで、すぐ徳川家(とくせんけ)に
持っていくように言うので持って行くと、母さん(実成院でしょうか)が
大層悦んだということです。

「江戸城明渡の帰途(勝海舟江戸開城図)」 
 明治18年(1885) 江戸東京博物館蔵

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イギリスの外交官、アーネスト・サトウの撮った勝海舟の写真を元に、
江戸開城を果たした時の姿として描いています。
向こうには洋装に陣笠を被った旧幕臣が抜き身を持って斬りかかろうと
しているのが見えます。

「天璋院像」 明治17年(1884) 徳川記念財団蔵
川002

11月13日からの展示です。
島津家の一門から徳川13代将軍家定に嫁いだ篤姫(あつひめ)
(1836-1883)の肖像です。
天璋院の一周忌を前に遺影として制作されています。

「形見の直垂(虫干)」 明治32年(1899)以降 東京国立博物館蔵
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10月28日までの展示です。
明治32年に亡くなった、恩人の勝海舟の葬儀に清雄は白い直垂(ひたたれ)を
着て随行しています。
虫干にその直垂を着た少女と、海舟の胸像などを取り合わせた作品で、
終生清雄の手許に置かれていました。

「貴賎図(御所車)」 明治31年(1898)頃 唐津市蔵
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水辺の女性と子供、向こう岸を行く牛車と従者、遠くに寺院の塔が見えます。
解説ではフランスのコローの影響について触れてありましたが、確かに
水気のある銀灰色などはコローに似ています。
絵巻物のような世界を遠近感のある洋画に置き換え、広い空間と風情を
感じさせる見事な作品です。

制作中のこの絵を橋本雅邦が観てとても感心し、日本美術院での清雄の
個展を開くきっかけになったということです。
橋本雅邦は日本画に洋画の要素を取り入れようとしていたので、
洋画でありながら日本画的な清雄の絵に惹かれたのでしょう。

「ヴェニス図」 明治後期-大正 個人蔵
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留学していたヴェネツィアの追憶図です。
追憶の光景なので、とてもロマンチックに描かれています。

「波」 大正~昭和2年(1927) 静岡県立美術館蔵
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勢いの良い筆遣いで、清雄の技量の高さを示しています。
清雄は水の質感を表すのには油彩が優れていることを説いています。

「建国」 昭和4年(1929) オルセー美術館蔵
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鏡、勾玉、剣の三種の神器に桜、須恵器や白い雄鶏が描かれています。
天の岩戸の神話に拠った場面で、雄鶏は天照大神を岩戸から誘い出す
ために鳴いています。
フランスの東洋学者、シルヴァン・レヴィの依頼により制作された作品で、
外国からの注文ということで日本的な題材を選んだとのことです。
初めての日本への里帰りです。

「お供え」 大正~昭和初期 福富太郎コレクション資料室蔵
川007

板に描かれたお正月飾りです。
清雄はカンバスばかりでなく絹地や短冊、板、盆などにも描き、題材も日本的です。
洋画をそのまま輸入する態度は取っていません。
清雄はある時、「世間の人は自分のことを洋画界の柴田是真と言う。
せめて柴田是真を漆絵界の川村清雄と言ってくれれば良いのに。」と嘆いています。
実は私も板などに描かれた作品を観て、その艶のある質感や日本的な画題から、
柴田是真の漆絵に似ていると思いました。

川村清雄はその技量の割には知られていない画家になっていますが、
その理由として画壇の主流は黒田清輝などを中心とするフランス系で、
イタリア系の清雄はやがて画壇から離れていったことにもあるようです。

川村清雄の子孫の家では祖父修就など江戸時代以来の史料類を大切に保存し、
空襲の時には穴を掘って埋めて守っています。
そして、江戸時代の史料は修就が新潟奉行を勤めた縁で新潟市歴史博物館に、
明治以降の史料や清雄の作品は江戸東京博物館に寄贈されています。

そのためこの展覧会は史料も豊富で、川村清雄という画家の軌跡とその作品を
知ることの出来る、とても面白い展覧会になっています。

展覧会のHPです。


また、目黒区美術館でも10月20日(土)から12月16日(日)まで、
「もうひとつの川村清雄展」が開かれ、約90点の作品が展示されます。

川012

「もうひとつの川村清雄展」のHPです。

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【2012/10/14 00:22】 美術館・博物館 | トラックバック(2) | コメント(0) |
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