「巨匠たちの英国水彩画展」 Bunkamura、ザ・ミュージアム
渋谷
chariot

渋谷のBunkamura、ザ・ミュージアムではマンチェスター大学ウィットワース
美術館所蔵、「巨匠たちの英国水彩画展」が開かれています。
会期は12月9日(日)までです。

水001


英国マンチェスター大学ウィットワース美術館の所蔵する水彩画のコレクション、
約150点が展示されています。
特にターナー(1775-1851)は初期から晩年までの作品、30点が展示されています。

第1章 ピクチャレスクな英国

英国では18世紀初頭からの英仏戦争による愛国心の高揚や歴史への傾倒などから、
名所風景の水彩画が盛んになっています。

ジョン・コンスタブル 「デダム教会と渓谷、サフォーク」 
 1800年 ペンとインク、水彩・紙

水004

近景に牛と牛飼い、遠景に広々とした平野の、のどかな風景です。
ジョン・コンスタブル(1776-1837)は19世紀の代表的な風景画家で、
故郷のサフォークの風景を生涯描き続けています。

第2章 イタリアへのグランド・ツァー

18世紀には英国の上流階級の子弟は見聞を広めるため、道路が開かれて
交通の容易になったスイスを経由してイタリアに旅行することが流行します。
これに伴い、実際に見たイタリアの景色を描いた作品の注文が増えます。

ローマ、ヴェネツィア、ナポリ、ネミ湖などの風景の作品が展示されています。

第3章 グランド・ツァーを越えて、そして東方へ

グランド・ツァーはフランス革命とナポレオン戦争のため大陸への交通が
困難になったため廃れますが、戦争が終わると画家たちは大英帝国の
領土拡大と国際交易の発展に伴い、イタリアよりさらに東方に向かいます。

エジプト、エルサレム、インド、中国などを描いた作品の展示です。

ラファエル前派の画家、ウィリアム・ホルマン・ハント(1827-1910)が
エルサレム、ナザレ、カイロを描いた作品も展示されています。
どれもグワッシュを使っていて、水彩画にしては油彩画のようなツヤがあります。

第4章 ターナー

ターナーの作品が24点並んでいます。

J.M.W.ターナー 「旧ウェルシュ橋、シュロップシャー州シュルーズベリー」 
 1794年 鉛筆、水彩・紙

水003

古くて今にも崩れそうな橋の向こうに建設中の橋が見えます。
アーチの重なりが面白い景色をつくっています。
初期のターナーは写実的で、細かく描き込んでいるのが特徴です。

J.M.W.ターナー 「海辺の落日とホウボウ」 
 1838-40年 黒のチョーク、水彩、グワッシュ・淡黄灰色の紙

水008

晩年になると形態は簡略化され、幻想味も帯びてきます。
ホウボウが入り日を見ているような不思議な絵です。

J.M.W.ターナー 「ルツェルン湖の月明かり、彼方にリギ山を望む」 
 1841年 水彩、グワッシュ・紙

ポスターなどに使われている作品です。
スイスのルツェルン湖の風景で、湖面を月の光が照らしています。
画面全体に淡く藍色が広がり、過不足の無いおだやかな色遣いで、遠くに見える
教会の塔が幻想的です。

第5章 幻想

ウィリアム・ブレイクなど、幻想性の強い作品です。

サミュエル・パーマー 「カリュプソの島、オデュッセウスの船出」 
 1848-49年 水彩、グワッシュ・紙

水009

ホメロスの叙事詩、「オデュッセイア」の一場面です。
オデュッセウスがニンフのカリュプソに別れを告げて船出する場面です。
朝日の光が放射状に広がり、波もそれに合わせるように広がって寄せています。
遠くの岩の形も人の姿に似ています。
劇的な雰囲気があり、日の光は来迎図を思い出します。

第6章 ラファエル前派の画家とラファエル前派主義

ミレイ、ロセッティ、バーン=ジョーンズ、ラスキンなどの作品が並んでいます。
会場の中のベンチのカバーもラファエル前派と関係の深いウィリアム・モリスの
デザインを使っています。

ジョン・エヴァレット・ミレイ 「ブラック・ブランズウィッカー」 
 1867年 水彩、グワッシュ・紙

水005

ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-1896)の代表作で、対ナポレオン戦に
赴こうとするプロイセンの騎兵と恋人を押し留めようとする女性です。
元は全身像で、ドアを閉じようとする手も描かれていたのですが、
好評だったので水彩による部分画を制作したものです。
ロマンチックな画題で、黒と白、青と赤が対比されています。

第7章 ヴィクトリア時代の水彩画

ヴィクトリア女王(在位:1837-1901)の時代、多くの画家は中産階級の期待に応えて
地方の懐かしい風景などを正確な描写で描いています。
オランダの独立後の興隆期に多くの風俗画の受容があったのと同じような現象でしょう。
ミレイもラファエル前派から離れた後、分かりやすいテーマの作品を描いています。

マイルズ・バーケット・フォスター 「夏季-ふたりの少女、幼子、人形」 
 水彩、グワッシュ・紙

水010

姉二人は本を読んだり人形遊びをしていて、構ってもらえない一番下の妹は
不満そうです。
遠くで羊が群れているのどかな田園風景で、分かりやすくほほえましい作品です。

第8章 自然

18世紀には絵画の序列の最下位に置かれていた水彩画も19世紀初めに自然主義的な
風景画がロイヤル・アカデミーに認められるようになると、英国各地の風景が
盛んに描かれ、やがて水彩は英国のものという愛国的な主張も生まれます。

アンドリュー・ニコル 「北アイルランドの海岸に咲くヒナゲシとダンルース城」 
 鉛筆、ペンとインク、水彩・紙

水006

遠くに風景を描き、手前にするすると伸びるヒナゲシを静物画のように
置いた図柄はちょっとシュルレアリスム風です。

J.M.W.ターナー 「濡れた浜辺に沈む夕陽」 1845年 鉛筆、水彩・紙
会場の最後に展示されている作品で、ぎりぎりまで筆数を抑えてあります。
浜辺にぼんやりと人の影のようなものが浮かんでいて、晩年のターナーは
何を見ていたのだろうかと思います。

現在まで英国の風景画家はスケール感や色調の深みで油彩と張り合おうとせず、
水彩ならではの速さ、緩み、表情の豊かさを活かしているとのことです。

たしかに、水彩画は風景などをあっさりと描いていて、心地良く観ることが出来ます。
作品数も多く、良き時代の英国の雰囲気を味わえる展覧会です。

会場の中のベンチのカバーもラファエル前派と関係の深いウィリアム・モリスの
デザインを使っています。

展覧会のHPです。




関連記事

【2012/10/22 00:05】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(2) |
comment
 
コメントを書く
コメントは承認後に公開されます。ご了承ください。
  • あかーるさん、こんばんは。
  • 私も水彩が英国で人気が高いのは湿気の多い気候に合ってあっているのだと思います。
    ターナーの絵が時期が経つにつれ、だんだん霧や雨にまぎれていくのは見ものでした。

    【2012/10/22 19:33】 url[猫アリーナ(chariot) #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 水彩画は英国的
  • 私も初日BUNKAMURAに足を運びました。写真の無い時代に風景画は各地を伝える役割があったでしょうね。そして霧や湿気も多い英国の気候に水彩画が合うのが、ターナーの絵を今回見歩くと納得が行きます。

    【2012/10/22 13:00】 url[あかーる #X037UcDo] [ 編集]
    please comment















    管理者にだけ表示を許可する

    trackback
    trackback url ↓
    http://nekoarena.blog31.fc2.com/tb.php/1627-a5c90fdb

    blog_name=【弐代目・青い日記帳 】 ♥   「巨匠たちの英国水彩画展」
     
    Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵「巨匠たちの英国水彩画展」に行って来ました。 http://www.bunkamura.co.jp/museum/ 「水彩画展」と聞い
    【2012/10/30 21:40】

    プロフィール

    chariot

    Author:chariot
    東京のビルの多い街で暮らしています。

    最近の記事

    最近のコメント

    最近のトラックバック

    カテゴリー

    ブログ内検索

    月別アーカイブ

    リンク

    このブログをリンクに追加する

    RSSフィード


    | ホーム |