「はじまりは国芳-江戸スピリットのゆくえ」展 横浜美術館
みなとみらい
chariot

横浜美術館では「はじまりは国芳-江戸スピリットのゆくえ」展が
開かれています。
会期は2013年1月14日(月・祝)までで、休館日は木曜日です。

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幕末の浮世絵師、歌川国芳《寛政9年(1798)~文久元年(1861)》より始めて、
その一門や系統に連なる絵画の流れを昭和までたどる展覧会です。
約250点の展示で、12月5日までの前期と12月7日からの後期でかなり展示替えが
あります。

歌川国芳は奇抜な発想やすぐれた描写力で有名な幕末の浮世絵師です。

歌川国芳 「近江の国の勇婦於兼」 1831-32年頃 前期展示
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近江国海津宿の怪力の遊女お兼が暴れ馬の引き綱を下駄で踏み付けて
取り押さえている場面です。
国芳は輸入された銅版画などを通じて西洋画を研究していて、
馬の陰影の付け方などに西洋画の影響が見られます。

歌川国芳 「相馬の古内裏」 1845-46年頃 前期展示
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大判3枚続きで、山東京伝の「善知(うとう)安方忠義伝」より、大宅太郎光圀が
妖術を使う滝夜叉姫(たきやしゃひめ)と戦う場面です。
これも西洋の骨格図を参考にしていて、描写は正確とのことです。

歌川国芳 「猫の当字 ふぐ」 1842年頃  前期展示
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猫好きの国芳はよく猫を題材にしています。
体の柔らかい猫の姿を上手く使っていて、「ふ」の字の猫は本物の
ふぐのようです。

歌川国芳 「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」 1847年頃 前期展示
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裸の男が寄ってたかって人の顔を作っています。
特に鼻の部分に上手く使われています。

歌川国芳 「浴衣を抱える美人」 1845-46年頃
肉筆画の掛軸で、下駄履きで裾をたくし上げ、浴衣を抱えている女性の姿です。
さらりとした筆遣いと色彩で描かれ、国芳はこういうあっさりした絵も
巧みだったことを知らされます。

月岡芳年 「風俗三十二相 いたさう 寛政年間 女郎の風俗」 
 明治21年(1888) 昭和初期の復刻版

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男の名を腕に彫らせている遊女の姿で、色恋の駆け引きの一つです。
歌川国芳の多くの弟子の中でもっともその作風を受け継いだのが、
幕末から明治にかけての絵師、月岡芳年(1839-92)とされています。

鏑木清方 「遊女」 大正7年(1918) 前期展示
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火鉢に凭れかかって物憂げな風情の遊女です。
着物には満開の桜が描かれていて、花冷えという言葉を思い出します。
鏑木清方(1878-1972)は月岡芳年の弟子の水野年方に師事しています。

鏑木清方 「暮雲低迷」 大正9年(1920)
六曲一双の屏風に、箱根塔ノ沢の春の夕暮れ時の風景が描かれています。
淡く霞んだ夕景色の中に小さく、旅人や駕籠かき、宿屋の欄干から谷の
景色を眺める女性などが見えます。
風俗画、美人画で有名な清方ですが、風景画にもすぐれた技量を
持っていたことが分かります。

川瀬巴水 「東京十二題 こま形河岸」 大正8年(1919)
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大川端の竹屋の景色で、立て並べた竹の隙間から隅田川や夏の雲が
のぞいています。
馬は動かず、荷車の男も眠っていて、時が止まっているようです。
川瀬巴水(1883~1957)は鏑木清方に師事し、大正から昭和にかけて
活躍した風景版画家で、
日本各地の風景を叙情的に描いています。

明治以降、一時廃れた浮世絵版画は渡辺庄三郎らが版元になり、
江戸の浮世絵の技法を受け継ぎながら新しい芸術を目指して、新版画として
大正から昭和にかけて制作されます。
鏑木清方の弟子の川瀬巴水や伊藤深水らは新版画の作品を数多く描いています。

川瀬巴水 「東京十二題 雪に暮るる寺島村」 大正9年(1920)
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寺島村は現在の墨田区にあった村です。
巴水は夜の情景を好んで描いています。
家の灯りが水路に映っていて、人懐かしさを感じさせます。
傘を差した人物にしたがって、観る人の視線は画面奥に引き込まれていきます。
近代の版画なので、浮世絵版画に比べ奥行きを強調しています。

ポール・ジャクレー 「黒い蓮華、中国」 昭和34年(1959)
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ポール・ジャクレー(1896-1960)はパリ生まれで、お雇い外国人の子として
4歳の時に来日し、生涯を日本で過ごしています。
日本文化に深く傾倒し、鏑木清方の兄弟弟子の池田輝方、蕉園夫妻に
日本画を習っています。
日本、中国、南洋諸島の女性を題材にした木版画を数多く制作し、
水彩画も描いています。
ジャクレーの木版画はのびやかで明快なのが特徴です。

渡辺幽香 「幼児図」 明治26年(1893)
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油彩画で、石臼に結わえ付けられた男の子がトンボを掴まえています。
渡辺幽香(1856-1942)は浮世絵師で洋画家の五姓田芳柳(1827-1892)の長女です。
五姓田芳柳は歌川国芳の弟子だったこともあるらしいとされており、
その後も芳柳の系統と国芳の系統は交流があったようです。

他に、五姓田芳柳、兄の五姓田義松たちによる明治初期の洋画もあります。
明治の和洋折衷建築のように、和洋折衷の趣きのある作品です。


幕末から明治以降の絵画の流れを歌川国芳を軸に観ていくという面白い視点の
展覧会です。
いろいろな作家の作品が展示されていて、特に鏑木清方の作品が多いのも魅力です。
時の経過に連れ、国芳の持つアクの強さは徐々に薄れ、川瀬巴水に至って、
国芳と同年生れの歌川広重に結び付く作風になっているのも興味深いところです。

鑑賞に便利な、歌川国芳を中心にした子弟相関図も置いてあります。

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展覧会のHPです。




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【2012/11/05 00:05】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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