「手の痕跡」展 国立西洋美術館
上野
chariot

上野の国立西洋美術館では、「手の痕跡」展が開かれています。
会期は2013年1月27日(日)までです。

手001


国立西洋美術館の所蔵品を中心にした、オーギュスト・ロダンと
エミール=アントワーヌ・ブールデルの彫刻、素描、版画約90点の展示です。
国立西洋美術館はロダン彫刻58点、ブールデル彫刻11点を所蔵しており、
ほとんどが松方幸次郎の松方コレクションです。

オーギュスト・ロダン(1840-1917)は近代彫刻の祖とされる彫刻家で、
「考える人」で有名です。

ロダン 「ビュヴィ・シャヴァンヌの胸像」 1890-91年
手003

親しかった画家のシャヴァンヌの像で、最初の石膏像はおだやかな雰囲気の
頭部像だったのを記念像にふさわしいようにと体を反らせた堂々とした
胸像に変えています。
その時、シャヴァンヌはフロックコートとネクタイ、レジオン・ドヌール
勲章を加えてほしいと要望しています。

ロダン 「バルザック(最終習作)」 1897年
手005

記念像として文芸家協会の注文で制作した3m近い石膏像をサロンに
出展しますが、塩の塊りだとか、溶けて垂れ下がった蝋燭のようだと
酷評されます。
文芸家協会も受け取りを拒否しています。
たしかに古典的な写実ではありませんが、宵っ張りだったという
バルザックのガウンに身を包んでふんぞり返った姿は量感にあふれ、
その人物を見事に表しています。

ロダン 「地獄の門」 1880-90年頃、1917年、1930-33年(鋳造)
手0123

手0131

ロダンは建設予定の装飾美術館の門の注文を受け、ダンテの「神曲」の中の
「地獄篇」を主題に選びます。
200人以上の人物像で構成され、扉の上には「考える人」が置かれています。
結局、装飾美術館の計画は中止され、石膏像を残してロダンは亡くなります。
ロダンの生前は鋳造されることの無かった「地獄の門」を最初に発注したのは
松方幸次郎とのことです。

ロダン 「考える人」 1881-82年
手006

よく観ると右腕を左膝に乗せていて、すこしゆがんだ緊張感のある姿勢を
しています。

ロダン 「アダム」 1881年
手0127

前庭の「地獄の門」の向かって左側に置かれています。

ロダン 「エヴァ」 1907年、1917年、1945年(鋳造
手0120

「地獄の門」の向かって右側に置かれています。
紅葉の中の彫刻は一層際立ちます。

ロダン 「カレーの市民」 1884-88年、1953年(鋳造)
手0133

英仏間の百年戦争でイギリス軍に11ヶ月間包囲されたカレーの町は
降伏を決意し、6人の代表者が首に縄をかけ、城門の鍵を持ち、
処刑を覚悟でイギリス王エドワード3世の許に赴きます。
苦悩に満ちた人間群像が円形に配置され、右手前の人物は大きな鍵を
持っています。
カレー市の注文を受け、この出来事に基き制作した彫刻で、世界に12点
あるうちの一つです。

ロダン 「蛇を巻く男」 
手004

ブールデルはロダンの素描を絶賛して、「精神が完全に理解したときにしか
手は動き始めることはない。」と評しています。
また、「彫刻とは一度にあらゆる側面から描いた素描である。」とも述べています。


エミール=アントワーヌ・ブールデル(1861-1927)はロダンの助手を
勤めたこともあり、記念碑彫刻にすぐれた作品を残しています。
棒のような人物彫刻のアルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)の師でもあります。

「アナトール・フランスの胸像」 1919年
手002

ブールデルと親しかった小説家、アナトール・フランスの胸像です。
服を着せずに、生の人間の姿として造形しています。
ブールデルはモデルの体をコンパスで測って作る一方で、モデルと知的、
感覚的な一致が必要と考え、胸像を形作るのは外側ではなく、内面だと
述べています。

ブールデル 「弓をひくヘラクレス」 1909年
手0118

弓矢で怪鳥を倒したヘラクレスの姿で、西洋美術館の入口横にあって
馴染み深い彫刻です。
サロンでも好評で、後に岩の部分にヘラクレスの他の功業を浮彫した
ヴァージョンも作られたそうです。

ブールデル 「果実」 1906年
ブ0049

こちらは恵比寿ガーデンプレイスに置かれた作品です。
展覧会には小さなサイズの作品が展示されています。
手に果物を持って立つ裸婦像で、すらりとして伸びやかな姿です。

ブールデル 「ヴェールの踊り」 1910年
オペラ、「サロメ」の中の「7つのヴェールの踊り」の場面で、
肩にかけたヴェールを両手で広げて踊るイサドラ・ダンカンです。
ブールデルは彼女のダンスを見て感銘を受け、彫刻を制作しています。
ドレープの付いた衣装を着ていて、エジプト彫刻が動いているようです。
イサドラ・ダンカン(1878-1927)はモダンダンスの祖として有名です。

ブールデル 「わが子を捧げる聖母」 1920年
修道女のような姿のマリアが手を左右に伸ばし、十字架のような形になった
幼子イエスを高く掲げています。
完成作は6mの大作で、第1次世界大戦の戦没者記念碑としてアルザスの丘に
建てられ、「アルザスの聖母子」とも呼ばれているとのことです。

ロダンとブールデルは近代彫刻を代表する彫刻家ですが、2人の作品を比べると
はっきりした違いがあることがあります。

解説には、ロダンは部分から全体を作り出す彫刻家、ブールデルは全体の構造から
細部を考えていく建築家とあります。

たしかにロダンは人間の内面を劇的に表現するという、中から外へ向かう
彫刻家だと思います。
それに対してブールデルは「弓をひくヘラクレス」にしろ、「わが子を捧げる聖母」
にしろ、まず全体的なデザインがあって、その枠組みの中で作っています。

国立西洋美術館にはこれだけの作品が揃っており、この展覧会はそれをまとめて
観ることの出来る良い機会です。

展覧会のHPです。




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【2012/12/08 00:37】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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