「DOMANI・明日展 2013」 国立新美術館
乃木坂
chariot

六本木の国立新美術館では「DOMANI・明日展 2013」が開かれています。
会期は2月3日(日)までです。

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文化庁が1967年度から実施している、若手芸術家を研修のため海外に派遣する、
「芸術家在外研修(新進芸術家海外留学制度)」の成果を発表する展覧会で、
毎年開かれています。

前回の展覧会に行った時の記事はこちらです。

今回は12人の作品が展示され、作家によるギャラリートークも3回に分かれて
行なわれてます。

1月12日(土) 青野千穂、平野薫、米正万也
1月13日(日) 糸井潤、神彌佐子、橋爪彩
1月20日(日) 11:00~ 小尾修、澤田知子、行武治美

他に曽根裕、塩田千春、池田学の作品が展示されています。

1月12日のギャラリートークに行ってきました。
その要旨です。

青野千穂(1974~) 現代陶芸・陶彫 2010年、オーストリア

明るい色調の柔らかそうなかたまりが垂れ気味になっている作品です。

「hang down」 2004年 
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「日本には陶磁器の抗いがたい伝統があり、日本で制作しているとそれへの挑戦
という形になる。
陶芸の伝統の薄いオーストリアで発表したらどんな反応があるか興味があった。
作品は布で出来ているように見えるので、こっそり触ってみる人も多い。
作品には釉薬は掛けず、顔料を混ぜた土を筆で塗って模様を描いている。
これによって布のような質感を出している。
陶芸は、金襴手もあったりで、さまざまな質感を表現できるフェイクな素材でもある。

初期の作品で、展示されている「Distillation」は水の蒸発による循環を表していて、
揺らめきながら上昇する造形にしている。
やがて、自分が年を取ってくると作品の形も丸くなり、下に垂れてくるようになった。
2011年の「Swing」はブランコに乗っている垂れた物体で、ブランコの持つ孤独感、
精神の揺れも表そうとした。
表面の水玉模様は液体のシンボルでもある。

自分は抽象画の平面作家として出発しているので、作品の構想もまず平面で
考えている。
まだ陶芸家とも彫刻家とも言いがたい気持ちでいる。
絵を描いている時はどこで作品が完成したのか決められず苦痛だったが、
陶芸は窯で焼けば終わりなので区切りがはっきりしている。」


平野薫(1975~) インスタレーション 2009年、ドイツ

服の繊維をほどいて、長く結びなおした作品を2点、ハンガーに架けて
天井近くから吊り下げています。

「untitled-brides-」 2012年
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参考図版で、この作品は展示されていません。

「はじめはパジャマを着て寝て痕跡を付け、それを作品にしようと思ったが、
パジャマを型紙の形に戻そうとして、出てきたミシン糸に気付き、繊維を
ほどいても着た人の痕跡は残るのではないかと考えた。
2点吊り下げているが、「untitled-jacket-」(2008)の素材はニューヨークで入手、
 「untitled-dress-」(2013)はベルリンで入手した。
誰の服と言ってしまうとイメージが固定されてしまうので、観る人それぞれが
自由にイメージしてほしい。

壁に貼ってある四角い枠のような「untitled-stockings-」(2013)は
ストッキングをほどいて伸ばしたもの。
額縁だと思って、その中に履いていた人をイメージしてほしい。

天井近くの隅にはクモの巣のように張った作品、「web#4」(2012)もある。
在るのか無いのか分からないようなひっそりとあるクモの巣の存在の重さを表した。
展示室の隅に転がっている数点もチノパンやTシャツの繊維をほどいて毛糸玉の
ように丸く巻きなおしたもの。

制作は細かい作業なので、1点作るのに1~3ヶ月かかる。
糸を1本ずつ引き抜いて、品物が出来上がる前の状態に戻していく過程は、
その品物の時間をさかのぼっている感じがする。」

平野薫さんのHPです。

米正万也(1965~) アニメーション・実験映像 2002年、エストニア

「believe in it」 1998年 3分20秒

「Uks Uks」 2003年 7分 (最初のUの上に点が2つ付く)
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「Wiener Wuast」 2006年 4分48秒

やさしく柔らかい色調の3つのアニメーション作品が3方の壁に上映されています。
それぞれ音声が付いていて、ヘッドホンで聴けます。

「どの作品も音声が付いているが、日本では映像が先にあってそれに音を付け、
欧米は逆で、音が先でそれに映像を合わせている。
パラパラマンガの方法で、紙にマーカーで描いたものを簡単なデジカメで
次々写して作品にしている。

どれも簡単な図形の連続だが、図形は自分自身であり、一応ストーリーを持っている。
「believe in it」は、空を飛べると信じることを描いている。
「Wiener Wuast」はウィーンらしい作品にしようと思って、ウィーンの街を背景にして
カードを入れ替えて撮った。
屋外制作というのは珍しく、食べながら、おしゃべりしながら楽しく撮った。
約5分の作品でカードを1000枚使っている。

「Uks Uks」は8人の製本作家との共同制作で、手作りのスケッチブックの表紙を
ドアに見立て、ドアから入るような感じにして作った。
Uksはエストニア語で、ドアという意味。
エストニアはアニメ作品の質の高国で、映画祭でよく入賞しているので、派遣国として
エストニアを選んだ。」

米正万也さんのHPです。


そのほかの作家の作品です。

糸井潤(1971~) 写真 2009年、フィンランド

「Cantos Familia」 2011年
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フィンランドの白夜と極夜の写真です。
ほとんどの写真に太陽や電灯などの光源が写っています。

神彌佐子(1962~) 日本画 2006年、フランス

「miel 2011」  2011年
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豊かな色彩で、大画面に抽象的な作品を描いています。
昔の蚊帳に紙を貼って描いた作品もあります。

橋爪彩(1980~) 油彩 2006年、ドイツ

「Girls start the Riot」 2010-11年
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細密な写実が女性の生々しさを感じさせます。
この作品はセザンヌに反抗しているのでしょうか。
ボッティチェリなどの古典を基にした作品もあります。

小尾修(1965~) 油彩 2010年、フランス

「窓」 2012年
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小尾さんはとても力強い写実画を描く作家です。
派遣先のパリの屋根裏部屋で描いたようです。

澤田知子(1977~) 写真 2008年、アメリカ

「Mirrors」 2010年
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さまざまなファッションに仕立てた自分自身を双子のように写しています。
各国語で書かれたトマトケチャップやイエローマスタードの容器56個ずつの
写真を並べた作品もあります。

行武治美(1966~) ガラス造形 2006年、アメリカ

「縁起」 2012年
朱色に塗った壁一面に、目出度い熊手や招き猫、干支の蛇などの形に切り取った
鏡を貼って装飾的に仕上げています。

「パラサイト」 2012年
床の一部にも鏡が貼ってあって、光が天井に反射しています。

曽根裕(1965~) 彫刻 2000年、アメリカ

「ハイウェイ ジャンクション 110-10」 2002年
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大きな大理石の表面にハイウェイと都市を彫り出しています。
活動する都市が白く固定されています。

塩田千春(1972~) 現代美術 2004年、ドイツ

「大陸を越えて」 2004年
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たくさんの古靴を赤い糸で一点につないでいます。
外国から帰ってきたときに、以前履いていた靴が今の自分の足と合わないと
思ったことから、人の故郷に寄せる想いを糸で結びたいと思ったとのことです。

池田学(1973~) ペン画 2010年、カナダ

「興亡史」 2006年
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(一部の拡大)
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ペンとカラーインクで描かれた大きな作品で、バベルの塔のような城郭が
大木と合体しています。
制作に1年半かかったという大変な労作で、隅々にまでびっしり描き込まれていて、
観ていて飽きません。


今年も作家のギャラリートークを聴いたおかげで、作品の観方が分かったり、
理解が深まったりして、展覧会を楽しむことが出来ました。

展覧会のHPです。

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【2013/01/15 00:02】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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