「エル・グレコ展」 東京都美術館
上野
chariot

上野の東京都美術館では特別展、「エル・グレコ展」が開かれています。
会期は4月7日(日)までです。

グ001


東京都美術館のリニューアルを記念して、没後400年になるエル・グレコ
(1541~1614)の油彩画50点以上を展示する展覧会です。

エル・グレコは本名をドメニコス・テオトコプロースと言い、ギリシャの
クレタ島生まれで、「グレコ」はイタリア語でギリシャ人を意味します。
エル・グレコは当時ヴェネツィアの支配していたクレタ島に生まれ、
ビザンティン様式の画家となっています。
やがてヴェネツィアに渡り、ティツィアーノなどの影響を受け、
西欧流の絵画技法を習得します。
その後、おそらく1577年以前にスペインに渡り、トレドに定住し、
多くの宗教画を描いた後に生涯を終えています。

I-1 肖像画家エル・グレコ

「燃え木で蝋燭を灯す少年」 1571-72年頃 コロメールコレクション
初期の作品です。
これとまったく同じ図柄の作品が2010年に観た、「カポディモンテ美術館展」に
展示されていました。

参考 「燃え木でロウソクを灯す少年」 エル・グレコ 1570~72年
カポ6-26-2010_008

「カポディモンテ美術館展」の記事です。

「白貂の毛皮をまとう貴婦人」 1577-90年頃 グラスゴー美術館
グ002

モデルが誰かは不明とのことですが、ティツィアーノに学んだのか
とても細密で写実的です。
エル・グレコの技量の高さと、エル・グレコの個性的な画風が計算された
意識的なものだったことが分かります。

I-2 肖像画としての聖人像

エル・グレコは宗教画のほかに聖人などの肖像画も多く描いています。

I-3 見えるものと見えないもの

エル・グレコの特徴の一つは目に見える現実の世界と、天上の世界のように
目に見えないものを一つの画面に融合していることにあるそうです。
本来は見えないものを描くのですから、画面は劇的に、非現実的になります。

「改悛するマグダラのマリア」 1576年頃 ブダペスト国立西洋美術館 
グ007

ヴェネツィア時代の作品と思われ、「カポディモンテ美術館展」で観た、
ティツィアーノの同じ主題の作品と絵柄が似ています。
マグダラのマリアであることを示す長い髪、本、頭骸骨、香油壷などと
一緒に描かれ、天を仰いでいます。
静かな青の色調が、深い精神性を表しています。
湧き上がる雲や自己主張するかのように角張った衣の表現はやはりエル・グレコです。

II クレタからイタリア、そしてスペインへ

イタリア時代とスペイン時代でかなり画風が変わります。
「受胎告知」が2点並んでいて、その違いがよく分かります。

「受胎告知」 1576年頃 ティッセン=ボルネミッサ美術館、マドリード
グ006

ルネサンス風の安定した画面で、大天使ガブリエルの翼も後の作品のように
上に立っていません。

「受胎告知」 1600年頃 ティッセン=ボルネミッサ美術館、マドリード
グ004

縦長の画面で、天上では天使たちが楽を奏で、列をつくったケルビムの間を
精霊を表す鳩が輝きながらマリアに向かって降下しています。
雲の上に立つ大天使ガブリエルの翼は立ち、マリアも書見台から立って
迎えています。
二人の間にあるのは旧約聖書の出エジプト記に書かれた、モーセが見たという
燃える柴で、マリアの純潔の象徴とされています。

精霊の下るさまは仏画の早来迎を観るようで、勢いのある作品です。
プロテスタントの宗教改革に対するカトリック側の対抗宗教界改革の気分を
よく表しています。

III トレドでの宗教画:説話と祈り

「聖衣剥奪」 1605年頃 サント・トメ教区聖堂、オルガス
グ005

磔刑を前に衣を剥ぎ取られるイエスです。
マリアたちや十字架の準備をする男も描かれています。
依頼主の聖堂とは、聖書には書かれていない3人のマリアや、イエスより
人びとの頭が高い位置にあることで揉めたそうです。
林立する槍は、後のベラスケスの「ブレダの開城」を思わせます。

IV 近代芸術家 エル・グレコの祭壇画:画家、建築家として

エル・グレコの近代性は、「同一原理から生まれた建築、彫刻、絵画という
諸芸術を教会堂や礼拝堂の神の光に照らされた空間において融合させた点」に
あるそうです。
舞台芸術家や演劇監督に相当する訳です。
ただ、エル・グレコの手がけた祭壇画のセットで、当初と同じ形で残っている
ものは無いそうです。

「無原罪のお宿り」 1607-1613年 サン・ニコラス教区聖堂 トレド
グ008

高さ347cmの見上げるばかりの大作で、亡くなる前年に完成しています。
下から上にうねるようにして上がっていく構図、見上げることを考慮して
極端に引き伸ばされた人体、輝く色彩と、観ていて目まいのするような迫力です。

精霊の光を浴び、音楽に充ちた空間の中にあるマリアの顔は慶びに満ち、
迷いはありません。

グ010


右下には象徴的な泉、建物、蛇、マリアの純潔を示す百合とバラ、左下には
トレドの街が描かれています。
雲を照らす太陽、雲間の月も見えます。

グ009

この作品1点観るだけでも展覧会に来た価値はあると言えます。

これだけまとまったエル・グレコの作品を観られるというのは
滅多に無い機会で、とても見応えのある展覧会でした。
今後は混雑が予想されるので、早めに行かれると良いでしょう。

展覧会のHPです。




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【2013/01/20 00:10】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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  • あかーるさん、こんばんは。
  • 私も初日の朝に行ってきて、まだ人の少ない間にゆっくり鑑賞しました。
    会場全部がグレコでしたから、観終わる頃には自分の視覚まで揺れているような感じがしました。
    年の初めから素晴らしい展覧会を観られて満足です。

    【2013/01/21 20:14】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 初日すぐ見に行きました
  • 私も先程ブログ載せましたが、待ちきれないかのように初日さっそく見に行きました。あの揺れる炎の独特の絵の数々を1か所で見れるのはスペインでもできない贅沢だと満足して帰ることができました。

    【2013/01/21 14:19】 url[あかーる #-] [ 編集]
    please comment















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