「ラファエロ展」 国立西洋美術館
上野
chariot

上野の国立西洋美術館では、「ラファエロ展」が開かれています。
会期は6月2日(日)までです。

ラ001


ルネサンスを代表する画家、ラファエロ・サンツィオ(1483-1520)の
日本で初めての展覧会で、ラファエロの作品、約20点を中心にした展示です。

ラファエロはウルビーノ公国の宮廷画家の子として生まれ、宮廷に出入り
していたことで、上流社会の社交術を身に付けています。
初期の作品はペルジーノ(1450頃-1523)の影響を受けています。
ペルジーノは名前の通り、ウルビーノの近くのペルージャ出身の画家で、
優美で繊細な作風で知られています。
ただ、ラファエロがペルジーノに弟子入りしたかどうかは分からないそうです。

ピントリッキオ 「幼児洗礼者ヨハネと聖母子」 
 1490年代 シエナ国立絵画館

ラ002

とても優しい雰囲気の作品で、イエスはクッションの上に座って、
受難の象徴であるザクロを持っています。
ピントリッキオ(1454-1513)もペルージャ出身で、やはり繊細優美な
作風が特徴です。
初期のラファエロはピントリッキオの工房とも協力していたと考えられています。

ピントリッキオの作品は2012年に同じ国立西洋美術館で開かれていた、
「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」でも展示
されていました。

「ベルリン国立美術館展」の記事です。

以下はラファエロの作品です。

「聖セバスティアヌス」 1502-1503年 
 ベルガモ、アカデミア・カッラーラ絵画館

ラ007

聖セバスティアヌスは矢で射られて殉教した聖人で、その象徴として矢を
持っています。
ピントリッキオと同じく、金の刺繍や装飾品も描かれ、矢の持ち方も優しげで、
繊細な感覚の作品になっています。
正面から描かれた顔は後の「大公の聖母」につながるものがあります。

やがて、ラファエロは1504年頃からはフィレンツェに滞在し、ここで
レオナルド・ダ・ヴィンチに会ってその作風を学ぶなど、新しい芸術の
潮流に触れ、それを吸収しています。

「聖ゲオルギウスと竜」 1503-1505年 パリ、ルーヴル美術館
ラ008

聖ゲオルギウスは町に災いを為す悪竜を退治したことで有名な古代の聖人で、
多くの作品に描かれています。
小品で、のどかな田園風景の中で、槍を折られたゲオルギウスが馬上で
剣を振るって竜と闘っています。
赤い服の女性は竜に食べられるところをゲオルギウスに助けられた王女です。
ゲオルギウスと馬の勇壮な姿はレオナルド、田園風景はペルージャ以来の
伝統に従って描いているとのことです。

「大公の聖母」 1505-1506年頃 フィレンツェ、パラティーナ美術館
ラ006

ラファエロといえば聖母子像ですが、その中の一点です。
トスカーナ大公、フェルディナンド3世(1769-1824)の愛蔵品であった
ことからこの名が付いています。
フェルディナンド3世はイタリアに侵攻したナポレオン軍から逃れる時も
この絵を携えて行ったそうです。
最近の調査で背景の黒は後に塗られたもので、当初は風景や建物が
描かれていたことが分かっています。
背景の部分の傷みが激しくなってきたために黒く塗ったようです。
しかし、背景を黒くすることで色調もまとまり、聖母子の姿がくっきりと
浮かび上がって、魅力のある作品になっています。

「自画像」 1506年頃 フィレンツェ、ウフィツィ美術館
ラ003

フィレンツェに滞在していたラファエロは何度かウルビーノに帰っています。
この作品は、その折に親しい親戚かウルビーノ公の宮廷の要人のために
製作したものと考えられています。
優しい顔立ちの美男で、画面の右側には影も映っています。

「無口な女(ラ・ムータ)」 1507年 ウルビーノ、マルケ州国立美術館
ラ009

2010年に東京都美術館で開かれていた「ボルゲーゼ美術館展」に展示されていた、
「一角獣を抱く貴婦人」(1506年頃)とよく似た構図です。
こちらの方は静けさがあって、レオナルドの「モナ・リザ」ともよく似ています。
当時のフィレンツェやウルビーノの女性に好まれた服を着ていて、最初は
飾り紐も多く、襟ぐりも大きく開けて描かれていたそうです。
落着いた色調と雰囲気の、描き方に過不足の無い、品の良い作品です。

「ボルゲーゼ美術館展」の記事です。

「聖家族と仔羊」 1507年 マドリード、プラド美術館
ラ004

小品で、ヨセフ、マリア、幼子イエス、仔羊を描いています。
聖母子と仔羊をともに描くことはレオナルドが始めたそうです。
たしかに、左右反転させると、レオナルドの「聖アンナと聖母子」に
よく似た構図になります。
ラファエロはいろいろとレオナルドから吸収したようです。

ラファエロは教皇ユリウス2世の招きで1508年にローマに移り、1520年に
亡くなるまでそこで過ごしています。
バチカン宮殿の「アテネの学堂」はユリウス2世の命で描かれたものです。
ユリウス2世の死後もレオ10世の庇護を受けており、ラファエロはウルビーノでの
育ちも役立って上流階級との社交に長けていたようです。

「エゼキエルの幻視」 1518年頃 フィレンツェ、パラティーナ美術館
ラ005

1520年に37歳で亡くなったというラファエロの若い晩年の作品です。
旧約聖書のエゼキエル書にある、預言者エゼキエルの視たという神の姿を
描いています。
神は人、獅子、牛、鷲の顔をした4つの生き物ともに現れています。
左下にはエゼキエルかと思われる人物を雲間から照らす光も見えます。
小品ですが、構想が大きく、画面も緊密で、「アテネの学堂」などの
大画面を描いたラファエロの力量を示しています。

ラファエロの作品がこれだけ集まることは滅多に無い貴重な機会です。
私はオープン翌日の3月3日(日)の開館とほぼ同時に入りましたが、
すでに入場券売場の前は長い行列になっていました。
今後はかなりの混雑が予想されますので、早めに行かれることをお奨めします。





国立西洋美術館の次回の展覧会は、システィーナ礼拝堂500年祭記念、
「ミケランジェロ展―天才の軌跡」です。
会期は9月6日(金)~11月17日(日)です。
ラファエロの次はミケランジェロとは何と豪華な。

ミ001

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【2013/03/04 00:04】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(4) |
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  • dezireさん、こんにちは。
  • ラファエロの作品をこれだけまとまって観られるとは思いませんでした。

    dezireさんのブログも拝見しました。
    ラファエロの画風の発展についての丁寧な解説を興味深く読ませていただき、
    ラファエロの魅力を改めて認識しました。

    【2013/04/03 06:34】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • こんにちは。
    いろいろ勉強させてもらいながら楽しく読ませていただきました。
    私もラファエロ展に行ってきました。
    日本で初めてラファエロ展ということで期待していきましたが、
    初期から中期の作品までこれぞラファエロという美しい作品が来ていましたね
    「大公の聖母」は初めて見ましたが、その瀬疎な美しさに心を奪われました。

    私はラファエロの美術の変遷を整理しながら
    ラファエロ展の名品について書いてみました。
    よろしかったら、ぜひ一読してみてください。
    ご感想、ご意見などどんなことでも結構ですから、
    ブログにコメントなどをいただけると感謝致します。

    【2013/04/02 16:40】 url[dezire #tLX0El8c] [ 編集]
  • あかーるさん、こんばんは。
  • ラファエロを日本でこれだけまとめて観ることが出来るとは思いませんでした。
    品の良さ、優美さが際立つ一方で、「エゼキエルの幻視」のような力強い作品も描くのですから、ルネサンスを代表する画家と呼ばれる訳が分かります。

    桜の開花が急に早くなったのには驚きました。
    まだ花見らしい花見をしていないので、すこし焦っています。
    この週末にはともかくどこかで写真を撮れれば良いのですが。

    【2013/03/21 20:11】 url[猫アリーナ(chariot) #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 花よりラファエロ
  • ラファエロの作品が上野に集まる貴重な機会を、桜咲く季節にやっと実現しました。フィレンツェなどで見た絵の再会も嬉しいですが、エルグレコ同様に上野で纏めて見れるのが嬉しいですね。
    ラファエロはやはり品格や調和などで群を抜く力量ですが、聖母子にはいつでもうっとりします。
    外に出て花見までできて、去年のボストン展に続き、お彼岸の収穫となりました。

    【2013/03/21 14:17】 url[あかーる #X037UcDo] [ 編集]
    please comment















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