「ミュシャ展 パリの夢 モラヴィアの祈り」 森アーツセンターギャラリー
六本木
chariot

六本木の森アーツセンターギャラリーでは、「ミュシャ展 パリの夢
モラヴィアの祈り」が開かれています。
会期は5月19日(日)までです。
その後、新潟、松山、仙台、札幌を巡回します。

ミュ001

アール・ヌーヴォーのグラフィック・デザイナーで画家のアルフォンス・ミュシャ
(1860-1939)の作品約240点が展示されています。

ミュシャは現在のチェコのモラヴィア地方の生まれで、美術を志し、
パリに出て働いています。
1895年に女優サラ・ベルナールの舞台、「ジスモンダ」のポスターが
大評判になります。

「椿姫」 1896年 カラーリトグラフ
ミュ002

同じくサラ・ベルナールの舞台ポスターです。

一躍人気画家となったミュシャはさまざまなアール・ヌーヴォー調の
ポスターを制作します。
自転車、石鹸、ビール、ビスケット、チョコレートなどのポスターは
どれも華やかな女性と商品の組合わせです。

「ムーズ川のビール」 1897年 カラーリトグラフ
ミュ008


装飾パネルも多く手掛けます。
セット形式の寓意画が多いです。

「四季」 1896年 カラーリトグラフ(屏風型フレーム・エディション)
ミュ007


「四芸術:ダンス、絵画、詩、音楽」 1899年 
カラーリトグラフ(サテン・エディション)

ミュ005

ミュ006

左上の「ダンス」は朝の風に髪をなびかせて立つ女性です。
「絵画」は広がる昼の光の中で、手に持った花を見つめています。
虹の輪の重なりが光を表しています。
「詩」は宵の明星の輝く頃に物思いにふけっています。
右下の「音楽」は夜に枝に並ぶ鳥の鳴き声に耳を傾けています。

「演劇芸術のアレゴリー」 20世紀初め テンペラ・カンヴァス
ミュ003

ミュ004
ニューヨークのドイツ劇場の緞帳の習作と考えられています。
左から、鳥の声を聴いている「詩」、堂々として正面を向く「演劇」、
仮面を被った「悲劇」、道化の姿は「喜劇」の寓意です。


パリ万博でオーストリア政府からボスニア=ヘルツェゴビナ館の内装を依頼された
ミュシャは準備のためバルカン諸国を訪れ、そこでスラヴ民族の置かれた状況を
目の当たりにします。

モラヴィア人であるミュシャは、自らもスラブ民族であることの自覚を強め、
民族主義的な絵画作品も描くようになります。

「百合の聖母」 1905年 テンペラ、油彩・カンヴァス
ミュ009

教会の依頼で制作された作品で、マリアは聖母の純潔を象徴する白百合に
囲まれて立っています。
めんどりが羽根の下に雛を集めるように延ばされた布に包まれた少女は
チェコの民族衣装を着ています。
少女の持っているのはキヅタで、常緑樹であることから希望や永遠の生命の
象徴とされるとのことです。
聖母と百合が淡く夢幻的に描かれているのに対し、少女はくっきりとした
線描で表されています。

「ヤロスラヴァの肖像」 1927-35年頃 油彩・カンヴァス
ミュ010

娘のヤロスラヴァを描いた作品です。
民族衣装を着け、カーネーションを持ったヤロスラヴァはまっすぐに
こちらを見つめていて、精神的、宗教的雰囲気を持っています。

経済的に豊かになったミュシャは1910年にチェコに戻り、「スラヴ叙事詩」の
制作に取り掛かります。
「スラヴ叙事詩」は縦6m、横8mの大画面にスラヴ民族の歴史を描いた20点の連作です。

会場にはその習作や下絵が展示されています。

また、実物大の大画面を使って、「スラヴ叙事詩」の全作品が上映され、
スメタナの交響詩、「モルダウ」が流されています。
スメタナはチェコの作曲家で、ムシャは「モルダウ」を聴いて作品の構想を
得たということです。

作品を通してムシャは、トルコやドイツの圧迫を受け続けながらも、
ヨーロッパの文化の発展に貢献してきたスラヴ民族は近代西欧の一員で
あると伝えています。

その中の「ロシアの農奴解放の日」では、聖ワシリイ大聖堂を背景にして、
赤の広場に集まるロシアの農民を描いて、レーピンの作品を観るようです。

「スラヴ叙事詩 第8番(ベツレヘム教会で説教するヤン・フス:
真理は勝利する)の習作」 1915-16年頃 油彩・カンヴァス

ミュ011

ヤン・フス(1369-1415)はボヘミア出身の宗教改革者で、プロテスタント運動の
先駆者とされる人ですが、カトリック教会と対立し、火刑に処せられています。
教会の説教壇の上から身を乗り出して、会衆に語りかけているところです。
「真理は勝利する」は、フスが処刑される前の最後の言葉とされています。
完成作ではこれと構図が変わっています。

20近くをかけて完成させた「スラヴ叙事詩」の発表された頃はハプスブルグ家の
オーストリアから独立してチェコスロバキア共和国が成立していました。
ムシャの願いは達せられていた訳ですが、かえって民族意識の熱は冷めていて、
「スラヴ叙事詩」はチェコの人々にあまり評価されませんでした。
たしかにフランスではすでにエコール・ド・パリの時代になっており、
ミュシャの壮大な歴史画は時代遅れと見られたのでしょう。
時代の先端のアール・ヌーヴォーを代表していたミュシャが晩年は古典に
回帰していたというのも面白いところです。

歴史とは皮肉なもので、チェコは台頭したナチスドイツの圧迫を受け、
1939年にドイツに併合されてしまいます。
ミュシャ自身もその民族主義を警戒されてナチスの厳しい尋問を受け、
その年に亡くなっています。
第2次世界大戦後にチェコスロバキアは再び独立を果たしますが、共産党政権に
とってもミュシャの民族主義は不都合な存在だったようです。

ミュシャの「モラヴィアの祈り」が本当に叶うのは1989年の共産党政権の
崩壊によってでした。

展覧会のHPです。




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【2013/03/22 00:03】 美術館・博物館 | トラックバック(2) | コメント(4) |
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  • dezireさん、こんにちは。
  • 「ジスモンダ」はミュシャのデビュー作といってよいですから、とても印象的です。
    「ヤロスラヴァの肖像」は白い布が眼を惹き、デザイナーとしてのミュシャも感じます。

    【2013/04/25 07:13】 url[猫アリーナ(chariot) #/8nqih4Y] [ 編集]
  • こんにちは。
    私も六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリーでミシャ展を見てきました。
    ミシャ展に出品されていたたくさんの作品を思い出しながら、
    ブログを読ませていただきました。
    『ジスモンダ』、は非常に繊細な表現の斬新な作品だと思いました。
    ほかにもたくさん魅力的な作品がありましたが、油彩画では、
    『ヤロスラヴァ』にミシャのチェコ人としての誇りを感じて心に残りました。

    私も今回展示されていたミシャ展の作品を見て、ミシャの作品の魅力を私なりにまとめてみました。
    ぜひ読んでいただき、ご感想、ご意見などどんなことでも結構ですから、ブログにコメントなどをいただけるとうれしいです。

    【2013/04/24 11:05】 url[dezire #tLX0El8c] [ 編集]
  • あっけままさん、こんばんは。
  • ミュシャの全貌を知ることの出来る展覧会で、華やかな作品も数多く並んでいて、とても楽しめます。

    人気があって休日は混雑すると思いますので、早い時間に行かれると良いかもしれません。

    【2013/03/22 22:23】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 4月半ばからしばらく東京に滞在し、5月12日にミュシャ展を見に行く予定です。
    とても参考になりました。ありがとうございます。
    行くのが、ますます楽しみになりました。

    【2013/03/22 20:47】 url[あっけまま #-] [ 編集]
    please comment















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