「生誕120年 木村荘八展」 東京ステーションギャラリー
東京
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東京駅丸の内駅舎の東京ステーションギャラリーでは「生誕120年 木村荘八展」が
開かれています。
会期は5月19日(日)までです。

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会場には、林忠彦の撮影した、毛糸の帽子を被り、煙管を咥えて4匹の猫と一緒に
居る、藤田嗣治にも似た木村荘八の写真も展示されています。

木村荘八(1893-1958)は、いろは牛肉店創業者の八男として、旧日本橋区吉川町
両国広小路の牛肉店、いろは第八支店に生まれています。
兄の木村荘五と交流のあった谷崎潤一郎は旧日本橋区蛎殻町の生まれです。

旧制京華中学校卒業後に画家を志し、岸田劉生と出会い、フュウザン会、草土社の
結成にも参加しています。

「壷を持つ女」 1915(大正4)年 愛知県美術館
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初期の作品は岸田劉生風です。
妻をモデルにしており、背景は自宅のあった大崎あたりらしいとのことです。

中川一政や河野通勢など他の草土社のメンバーの作品も展示されていますが、
どれも岸田劉生の影響を受けていることが分かります。

1922(大正11)年に岸田劉生は小杉放菴らと春陽会を結成し、木村荘八も
参加します。
その後岸田は脱退しますが、木村は春陽会に残り、画風も岸田の影響から
脱していきます。

「戯画ダンスホール」 1930(昭和5)年 三重県立美術館
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けばけばしいライトの下で、楽団の曲に合わせて男女が踊りに興じています。
中には着物の女性もいます。
享楽的でちょっと退廃的な雰囲気のただよう情景です。
木村荘八は東京の街と人々に惹かれ、題材としてさかんに描くようになります。

徳田秋声が金沢の小さなダンス場を題材にした短編、「町の踊り場」を書いたのは
昭和8年です。

「牛肉店帳場」 1932(昭和7)年 北野美術館
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木村荘八の生家、いろは第八支店の様子です。
描かれた人物にはすべてモデルがいて、奥の帳場に座っているのが18歳の
木村荘八だそうです。
奥行きのある構図で、仲居さんの着物姿、磨き込まれた床板、ポスターなどが
描かれています。
木村荘八が実際に帳場の仕事をしていたのは浅草の第十支店ということですが、
この作品は生家が繁盛していた頃を懐旧の思いで描いたのでしょう。

「新宿駅」 1935(昭和10)年 東京国立近代美術館寄託
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晴れた日の多い冬の東京らしい光景で、高い窓から低い日の光が差し込み、
行き交う人々を照らしています。
男性は帽子を被り、女性は和服と洋装が混じっています。
左の赤と緑の洋服が目を惹きます。
駅特有の屋根裏や梁の見える天井、スピーカー、案内板も見えます。
都会の人々の無名性も表れていて、新興の街、新宿の賑わいが巧みに
捉えられています。

「浅草寺の春」 1936(昭和11)年 北野美術館
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正月十日の十日戎でしょうか、鯛やサイコロを吊った福笹も見え、
大きな松飾も描かれています。
浅草らしく和服の人ばかりで、マスクをした日本髪の女性もいます。
本堂の柱や大提灯の赤が華やかで、いかにも新年らしい賑わいです。

川端康成が「浅草紅団」を書いたのは1930(昭和5)年です。

「大鷲神社祭礼」 1943(昭和18)年 福富太郎コレクション資料室
天幕の下でアシカのような動物に芸をさせる見世物の様子です。
調教師、太鼓叩き、拍子木打ち、取り囲む見物人などが描かれています。
ジンタの音も聞こえてきそうな、猥雑で哀歓のある情景です。
戦時中の作品ですから、ことさら強い懐旧の思いがあったのかもしれません。
藤田嗣治が戦争画を描いていた頃、このような絵を描いていた訳です。

「濹東綺譚 挿絵8」 1937(昭和12)年 東京国立近代美術館
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木村荘八は挿絵画家として知られていて、永井荷風の新聞小説、「濹東綺譚」の
挿絵を担当して大人気を得ています。
「オノレの運命はこれで極まる」という意気込みで取組んだそうです。
主人公とお雪の雨の中の出会いの場面で、しっとりとした情感にあふれています。

木村荘八は谷崎潤一郎、川端康成、永井荷風の作品の挿絵も描いています。

「東京繁盛記 隅田川両岸一覧」 1955(昭和30)年 小杉放菴記念日光美術館 
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「東京繁盛記」は自らの故郷である東京を深く愛した木村荘八による東京の
風物を描いた画文集です。
木村荘八の亡くなった翌年の1959年に日本芸術院恩賜賞を受賞しています。

木村荘八は挿絵画家として有名になりますが、ずっと自分の本分は油彩画家である
と意識しています。
会場には、多忙な中で窓からの景色を油彩で描いた作品も何点か展示されています。

木村荘八は多くの随筆を書いていて、随筆家としても知られています。
その中に、夜に街灯に照らされた近所の小さな空き地の光景を見たその時、
これが人生だと思ったという一節があります。
私もそれを読んだ時、まさしくその通りだと強い共感を覚え、それ以来、
木村荘八という画家に親しみを感じるようになりました。


追記
「生誕120年 木村荘八展」は7月7日まで豊橋市美術博物館で開かれています。
ポスターに使われている作品は、「鷲神社祭礼」1943(昭和18)年です。

木村001





東京ステーションギャラリーの次回の展覧会は「エミール・クラウスと
ベルギーの印象派」です。
会期は6月8日(日)から7月15日(月・祝)までです。


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【2013/04/12 00:00】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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