「アントニオ・ロペス展」 Bunkamuraザ・ミュージアム
渋谷
chariot

渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでは、「アントニオ・ロペス展」が
開かれています。
会期は6月16日(日)までで、期間中は無休です。

ロ001


現在のスペインを代表する写実主義の作家、アントニオ・ロペス(1936~)の
展覧会です。

作品を完成させるのに何年もかかることもある寡作の人のため、個展もなかなか
開かれないとのことで、今度の展覧会は貴重な機会です。

会場には油彩、素描、彫刻など約60点が7つのカテゴリーに分かれて
展示されています。

故郷

アントニオ・ロペスはラ・マンチャ地方のトメリョソに生まれ、絵画の才能を
叔父の画家、アントニオ・ロペス・トーレスに見出され、13歳でマドリードに出て、
美術アカデミーに入学しています。
同級生の中の最年少ですが、その後数々のコンクールで受賞しています。

「花嫁と花婿」 
 1955年 油彩・キャンヴァス 国立ソフィア王妃芸術センター

ロ003

アカデミー時代の作品で、同級生の女性2人をモデルに描いているうちに、
片方が男性の姿に変わって行ったそうです。
念入りに描き込まれていて、女性は初期ルネサンス風、左側の静物は
セザンヌやピカソに似たところがあります。

初期の作品にはキュビズムやシュルレアリスム、15世紀イタリア絵画、
古代ギリシャ美術などが混在しているそうです。

「立ち話をするフランシスコ・カレテロとアントニオ・ロペス・トーレス」 
 1959年 油彩・板 レアンドロ・ナバーロ画廊

ロ007

長くトメリョソの町長を務め、画家でもあったフランシスコ・カレテロ(左)と
アントニオ・ロペス・トーレス(右)が道で立ち話をしています。
自分に大きな影響を与えた二人へのオマージュとして描いたそうです。
街角の風景といった感じで、二人の間に荷物を持った女性が見え、
右側にはお腹の大きな女性が立っています。
遠近法も強調されていて、観る人の視線は右側の二人、立ち話の二人、
右奥の三人、荷物の女性へとジグザグにたどって奥に向かいます。
色彩も落着いていて、女性の赤い服がその中で眼を惹きます。
夕暮れの情景で光も淡く、西の空は少し輝きを見せています。

トメリョソにはフランシスコ・カレテロの名を冠した通りがあるそうで、
グーグルのストリートビューで調べると、確かにピントール・フランシスコ・
カレテロ通りがあり、画面左側の家は現在も残っていることが分かります。

家族

1961年に美術学校の後輩だったマリア・テレーヌと結婚しています。
後輩といってもアントニオ・ロペスの入学が早かったためで、マリアの方が年上です。
その後、長女のマリアと次女のカルメンが生まれています。

家族もアントニオ・ロペスの絵画や彫刻の主要な題材です。

「マリアの肖像」 1972年 鉛筆・板に貼られた紙 マリア・ロペス蔵
(部分)
ロ002

ポスターにも使われている作品で、9歳頃のマリアがモデルです。
黒の鉛筆だけでコートの質感や肌の張り、瞳の光まで描き出しています。
マリアも筆の遅いパパのモデルを勤めるのも大変だったことでしょう。
今では大事に自分の所蔵品にしているようです。

鉛筆を使って家族の肖像を描くということでは山本雄三さんの作品を
思い出します。

「夕食」 1971-80年 油彩・コラージュ・板 カルメン・ロペス蔵
ロ005

右は妻のマリア、向かい側が次女のカルメンです。
テーブルの肉やリンゴはコラージュによっているということで、
輪郭がくっきりしています。
マリアの顔が二重になっているのは、顔の位置を変えようとして
直しかけのままになっているためです。

ロペスの作品には未完成作も多いようです。

植物

「マルメロの木」 1990年 油彩・キャンヴァス フォクス・アベンゴア財団
ロ004

庭のマルメロの木を描いています。
ビクトル・エリセ監督のドキュメンタリー映画、「マルメロの陽光」は
この作品を制作中のロペスの日常を撮ったものです。
朝日の当たる時間だけを使って描いているのでなかなか進まず、
この作品も未完成になっています。

他にもテーブルの上の花を描いた小品が何点か展示されています。
草花は時間をかけて描く訳にはいかないためか、どれもあっさりとした
筆遣いです。

マドリード

ロペスは自分の住むマドリードに愛着を持ち、その風景をよく描いています。

「グラン・ビア」 1974-81年 油彩・板 個人蔵
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(部分)
ロ010

マドリード随一の目抜き通り、グラン・ビア通りの始まる場所から
西の方を見た構図です。
朝早い時間で、建物の上の方や奥の高い建物に朝日が当たり、
左の建物のデジタル時計は6:30を表示しています。
色彩は灰色がかっていて、音もしない静けさがあり、画面の下半分を占める
道路がとても印象的で、臨場感があります。
ロペスは毎年、夏の早朝に地下鉄に乗ってやってきて、中央分離帯の端に
イーゼルを立て、2-30分掛けて描き、それを7年間続けたということです。

「グラン・ビア」を製作中のロペス 1978年
ロ011

ストリートビューで見ると、この景色はほとんど変わっていませんが、
デジタル時計は無くなっていて、広告も変わっています。

「トーレス・ブランカスからのマドリード」 
 1974-82年 油彩・板 マルボロ・インターナショナル・ファイン・アート

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西に延びて行くアメリカ通りを高いビルの窓から見ています。
画面真中に地平線を置く構図で、夕暮れ方の街は赤く染まり、
空には煙もたなびいています。
地平線の部分には、透視図法で描くために張った糸をピンで
消失点に留めた穴が幾つも残っています。
ありふれた大都会の景色ですが、そのほんの短い時間の情景を
長い時間をかけて綿密に再現しています。

ストリートビューで見ると、場所は地下鉄のカルタヘナ駅辺りのようです。

静物

「カボチャ」 1994-95年 鉛筆・紙 ICOコレクション
カボチャの素描ですが、物差しで計った目盛りの数字まで描き込んであり、
写実に対する意気込みと実験的精神を感じます。

室内

「眠る女(夢)」 1963年 木彫・彩色 国立ソフィア王妃芸術センター
ロ009

アントニオ・ロペスは彫刻も多く制作しており、素描・油彩・彫刻を
広い意味での絵画と考え、同列に置いているそうです。
この作品は大きく、浮彫なので立体感があります。
モデルは妻で、ロペスは何気ない日常の情景をよく題材に選んでいます。

「トイレと窓」 1968-71年 油彩・板に貼られた紙 マサベウ・コレクション
少し古びたトイレと窓を間近から見て克明に描き出しています。
横から窓を見た視点と、上から便器を見た視点を同じ画面に表すことは
出来ないので、画面の真中をグレーの帯で仕切って上下を分割しています。
普通は絵画にはならない題材と技法で、アントニオ・ロペスの絵画への
姿勢を示しています。

人体

「男と女」 1968-94年 木彫・彩色 国立ソフィア王妃芸術センター
裸体の男女の等身大立像で、とても長い時間をかけて制作しています。
典型的なスペイン風の顔立ちをしていて、ポーズも取らず、
ただそこに立っています。

「女の像(イヴ)」 2013年 木彫・彩色 作家像
アントニオ・ロペスは近年は公共空間のための巨大なモニュメント彫刻も
手がけています。
高さ5mのブロンズ像制作のための雛形彫刻です。
若いスペインの女性の裸体の胸像で、大地から姿を現したときの姿ということで、
毅然とした表情をして顔を上げ、空を見上げています。


日本ではほとんど観ることの無いアントニオ・ロペスの作品を体系立って
観ることが出来ました。
やはり、マドリードを描いた作品が心に残ります。





Bunkamuraザ・ミュージアムの次回の展覧会は「レオ・レオニ 絵本の仕事」展です。
会期は6月22日(土)から8月4日(日)までです。

レオ001


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