「牧野邦夫展―写実の精髄―」 練馬区立美術館
中村橋
chariot

練馬区立美術館では、「牧野邦夫―写実の精髄―展」が開かれています。
会期は6月2日(日)までです。

牧001


牧野邦夫(1925~86)は東京出身で、1948年に東京美術学校油画家を卒業
していますが、その後は団体にも属せずに独自の道を歩んでいます。
北方ルネッサンス、フランドル絵画、特にレンブラントに深く傾倒していた
とのことで、作品にもその強い影響がみられます。

展覧会では初期から晩年まで、油彩画を中心に約120点が展示されています。

「武装する青年」 1972年
牧004

顔や手の厳密な写実と幻想的な装いとの結合です。
牧野邦夫には常に写実と想像の世界のせめぎ合いがあります。
この作品はモデルになった人の両親が購入したそうです。

「ビー玉の自画像」 1963年
牧008

牧野邦夫は初期の頃から自画像を数多く描いています。
どれも正面から描かれていて、眉根に皺を寄せた緊張した表情をしています。

「白い自画像」 1978年
牧007

白と黒を強調した画面で、腰に剣を吊り、牛の頭骨に寄りかかっています。
見事な写実ですが、あちこちに人の顔や子供の姿など幻想世界が現れています。

「花帽子」 1969年
小品で、自画像の帽子の上にいくつも花が咲いています。
初めは花の絵が描かれていたので、これは売れると画商が喜んでいたところ、
牧野が自画像を描き足したので、がっかりしたそうです。
売れる絵を描くという意識はまったく無かったことを示すお話です。

「海と戦さ」 1975年
牧003

横194cmの大作で、平家物語の壇ノ浦の戦いの場面です。
画面の上の方には平家物語の文章が書き込まれており、壮絶な戦いと滅亡の
悲劇を描き出しています。
波の上に群像が湧き上がり、押し寄せて、縄文時代の火炎土器を思わせる
エネルギーにあふれています。

「雑草と小鳥」 1986年
牧005

牧006

亡くなった年の作品で、右下に「牧野」のモノグラムと「1986」が書かれています。
手に持つリンゴはイヴの象徴でしょうか、デューラーの「アダムとイヴ」に似た、
濃密な裸婦像です。
ここでも足元の花は人の顔をしていて、牧野的世界になっています。

「未完成の塔」 
牧002

1975年から制作を始めた作品で、五層の塔の屋根は画面の上に突き出しています。
地平で燃え上がる町や人びとの描写はヒエロニムス・ボスやブリューゲルを
思い出します。
五層の塔を一層ごとに10年掛けて描く予定で、50代で一層目を描き終え、
60歳になってからの二層目は描きかけです。

牧野は、レンブラントが30歳頃に描いた絵を自分は60歳くらいで描けるように
なるだろうから、63歳で死んだレンブラントより長く、90歳過ぎまで生きねば
ならない、と述べています。

90歳過ぎで完成させる予定だったのですが、惜しくも61歳で亡くなっています。

塔の屋根が画面の枠を越えているのは、90歳で亡くなった葛飾北斎の絶筆とされる、
「富士越龍図」の天に昇ろうとする龍に倣ったのかもしれません。




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【2013/05/24 00:01】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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