「夏目漱石の美術世界展」ブロガー特別内覧会 東京藝術大学大学美術館
上野
chariot

上野の東京藝術大学大学美術館で開かれている、「夏目漱石の美術世界展」の
ブロガー特別内覧会が5月31日の夜にありましたので、行ってきました。
展覧会の会期は7月7日(日)までです。
その後、7月13日(土)から8月25日(日)まで静岡県立美術館でも開かれます。

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ブロガー特別内覧会の前に観に行った時の「夏目漱石の美術世界展」の記事です。

写真は美術館より特別な許可を得て撮影したものです。

古田亮東京藝術大学准教授による解説の後、会場を廻りました。
 
右:岡本一平 「漱石先生」 東北大学附属図書館
左:朝倉文夫 「つるされた猫」 1909年 東京藝術大学

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「漱石先生」は会場の最初に展示されていて、苦沙弥先生としての
夏目漱石のイメージです。

「つるされた猫」は朝倉文夫26歳の作で、「吾輩ハ猫デアル」は
1905年に発表されています。

橋口五葉[装幀] 「吾輩ハ猫デアル」 上編 1905年
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橋口五葉[装幀] 「吾輩ハ猫デアル」 中編 1906年
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橋口五葉[装幀] 「吾輩ハ猫デアル」 下編 1907年
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橋口五葉は兄が熊本の第五高等学校で漱石の教え子だったことが縁で、
「吾輩ハ猫デアル」の装幀を行ない、
以後、漱石の多くの作品の装幀を手がけてます。
アール・ヌーヴォー風のデザインは新鮮で、小説の評判を高めるのに
役立っています。
上編の挿画は中村不折、中・下編は浅井忠が描いています。

右:ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 「金枝」 
 1834年 テイト、ロンドン

左:ブリトン・リヴィエアー 「ガダラの豚の奇跡」 1883年 テイト、ロンドン
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ターナーの名は「坊っちゃん」の中で、松の木を眺めていた赤シャツと
野だいこの会話に出てきます。

「ガダラの豚の奇跡」は「夢十夜」にある、庄太郎に襲い掛かる豚の大群を
杖で叩いて崖に落す話の元になったと思われる絵です。
福音書にある、イエスがガダラという所で男に取り憑いた悪霊に向かって
出て行くように命じると、悪霊は黒い豚の群れに乗り移り、豚の群れは
そのまま崖からガリラヤ湖に飛び込んで行ったというお話です。
猪突猛進ならぬ、すさまじい豚突猛進ぶりで、なだれ落ちる豚の群れと
吹き上がる雲が対比されています。

右:伊藤若冲 「鶴図」 1793年
左:伊藤若冲 「鶴図」 18世紀
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「草枕」で、温泉宿に着いた画工が部屋の床の間に若冲の絵が掛かって
いるのを目にします。
一本足ですらりと立っている上に卵形の胴体がふわっと乗っていると
評して褒めています。
漱石は現在ほど宗達や若冲が評判では無い時期に2人に注目しています。

右:伊年 「四季花卉図屏風」 17世紀 東京国立博物館
左:渡辺崋山 「黄梁一炊図」 1841年 重要美術品
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「伊年」の印は俵屋宗達の工房の作であることを示しています。
漱石はこの屏風の批評を津田青楓と手紙で遣り取りしています。

小説の「こころ」では、死のうと思った「先生」は自叙伝を書くため日延べ
していることを、渡辺崋山が自刃の直前に描いたという「黄梁一炊図」を
例にして説明しています。
黄梁が炊き上がらないうちに一生の栄華の夢を見たという、邯鄲の夢枕とも
呼ばれる話を描いたものです。
幕府の政争に巻き込まれた挙句に自刃した渡辺崋山が最後に選ぶ題材として
ふさわしいともいえますが、自刃の直前に描いたは思えないような、
端然として、しかも興の乗った作品です。

右:津田青楓 「自画像」 1911年 青楓美術館
左:津田青楓 「少女(夏目愛子像)」 1931年 青楓美術館
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津田青楓は漱石と親しく、漱石は青楓の絵について、色彩の感じは豊富だが、
自分の好かない色を平気でごてごて塗るので辟易する、と言っています。
この絵は漱石の四女、愛子26歳を描いた、漱石没後の作品ですが、
色彩が鮮やかで、活き活きとしています。
津田青楓は初め日本画家でしたが、浅井忠から洋画を学んで洋画家となり、
後に日本画に戻って南画風の作品を描いています。
この絵にも古典的な洋画とは違った、南画の趣きがあります。

今村紫紅 「近江八景」 1912年 東京国立博物館 重要文化財
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左から「唐崎」、「粟津」、「三井」です。
「近江八景」は期間中、展示替えがあります。
漱石は第6回文展の批評を書いていて、この今村紫紅の意欲作については、
努力と苦労は評価するがこの絵が後世に伝わるかは疑問で、色彩は自分の
性に合わないと、辛口の批評をしています。

右:佐藤央育(さとうえいすけ) 『原口画伯作 「森の女」』 2013年
左:黒田清輝 「婦人図(厨房)」 1892年 東京藝術大学
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右は「三四郎」の中に出てくる、黒田清輝がモデルとされる原口画伯が
美禰子を描いた絵を今回、推定試作した作品です。
佐藤さんは文中によく出てくる「光線」という言葉をキーワードに
したそうです。
黒田清輝らしい、外光派風の絵になっています。

左はその黒田清輝がフランス留学中に描いた作品です。

荒井経 『酒井抱一作 「虞美人草図屏風」』 2013年
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「虞美人草」では、亡くなったヒロイン、藤尾の枕元に酒井抱一の屏風が
葬送の儀礼として逆さに立てられています。
作品では虞美人草(ヒナゲシ)を描いた二枚折の銀屏風となっていて、
東京藝術大学准教授の荒井経さんがこれを再現しています。
荒井さんは藤尾を傲慢だが未成熟な女と想定して、わずかな花が儚く咲く
図柄にしたそうです。
銀箔がまだ新しいので、紅いヒナゲシの色が屏風の反対側に映っています。

漱石自筆の作品も何点か展示されています。

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右:夏目漱石 「煙波縹渺図」 1914年 岩波書店
左:夏目漱石 「山上有山図」 1912年 岩波書店
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いろいろ描いてはあるのですが、いま一つ上手くありません。
他人の絵をあれこれ言う割には下手だと迷亭君に笑われそうです。


夏目漱石の作品世界と美術品を往復することになって興味は尽きず、
いろいろな楽しみ方の出来る展覧会です。

巡回展の開かれる静岡県立美術館のHPです。




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【2013/06/05 00:15】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(0) |
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blog_name=【モネの部屋】 ♥   漱石展のブロガー内覧会に行ってきた
 
芸大美術館で開催中の「夏目漱石の美術世界展」のブロガー内覧会に行ってきました。 http://www.tokyo-np.co.jp/event/soseki/ ※会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。 漱石と
【2013/06/08 17:25】

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