「川合玉堂展」―日本のふるさと・日本のこころ― 山種美術館
恵比寿
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恵比寿の山種美術館では特別展、生誕140年記念、「川合玉堂―日本のふるさと
・日本のこころ―」展が開かれています。
会期は8月4日(日)までです。
7月7日までの前期と7月9日からの後期で展示替えがあります。

玉001


川合玉堂(1873~1957)は日本の自然とそこに暮らす人びとを詩情をもって
描いた画家です。
展覧会では山種美術館の所蔵する作品約70点すべてを展示しています。

川合玉堂は愛知県出身で、岐阜県で育ち、1887年に14歳で京都の四条派の
望月玉泉に学び、さらに幸野楳嶺に師事しています。
幸野楳嶺は竹内栖鳳や菊池芳文の師でもあります。

「鵜飼」 1895(明治28)年
玉012

部分
玉011

若い玉堂の力作で、京都で開かれた第4回内国勧業博覧会に出品されています。
大きな画面の作品で、そそり立つ岸壁の下、篝火の煙をなびかせて漁をする
鵜飼舟を描いています。

川合玉堂は同じ会場で橋本雅邦の出品した「龍虎図屏風」(現在、重要文化財)
や「釈迦十六羅漢図」に衝撃を受け、翌年上京して雅邦に入門します。
なお、この第4回内国勧業博覧会では黒田清輝が「朝妝」を出展して、
裸体画ということで騒動になっています。

「二日月」 1907(明治40)年 東京国立近代美術館
玉007

前期展示です。
小諸の風景が元になっていて、円山四条派と狩野派を併せ、さらに近代的写実も
取り入れて、玉堂のその後の方向を決めた作品とのことです。
川を渡る人馬の姿は霞み、暮れかかる空には三日月より細い二日月が出ています。
水気を含んだ景色とそこに暮らす人物を抒情的に描くという、川合玉堂の特徴が
表れています。

「紅白梅」 1919(大正8)年 六曲一双 玉堂美術館
玉002

左隻
玉003

右隻
玉004

金箔地に、右隻の下から立ち上がって左隻にも枝を延ばす白梅と、
左隻の上から枝を下ろす紅梅の組合わせです。
右隻二羽、左隻に一羽の四十雀が止まっています。

大正期は琳派の画風が流行した時代とのことで、この屏風も尾形光琳の
「紅白梅図屏風に倣っています。
はじめ学んだ丸山四条派、橋本雅邦からの狩野派、さらには琳派と、
さまざまな画法をこなせるというのは、その技量の高さを示しています。

「雪亭買魚」 1938(昭和13)年頃
縦長の掛軸で、雪景色の湖に張り出した庵の主が小舟に乗った漁師から
魚を買っています。
小橋を渡る釣り人も見える、文人画の趣きのある味わい深い作品です。
1930年代になると、自然と人を情趣豊かに描く、玉堂特有の世界が広がります。

「鵜飼」 1939(昭和14)年頃
玉005

川合玉堂は岐阜県育ちなので、長良川の鵜飼は馴染み深い題材であり、
生涯に500点あまり描いているそうです。
流れを下る鵜飼舟の篝火の明と岩場の暗が対照され、煙に霞む船頭も見える、
躍動感のある作品です。

  水を空を焼きて狩来る鵜舟かな

川合玉堂は俳句も好んで詠んでいます。

「春風春水」 1940(昭和15)年
玉006

川の急流に張ったワイヤーを使った渡し舟と、岩場に咲く山桜です。
満々とした蒼い水の描写が印象的な作品です。

  しげり立つ青葉にそそぐ雨の音にまじりて多摩の川音たしかも

梶田半古から、俳句は俗だから和歌を詠むように勧められて和歌も始め、
歌集「多摩の草屋」を編むまでになっています。
梶田半古は小林古径、前田青邨、奥村土牛の師でもあります。

河合玉堂は多摩地方の風景を愛してよく描いています。
戦時中は奥多摩に疎開し、東京の自宅が空襲で焼失した後は現在の
青梅市御岳に移り住んでいます。

「雪志末久湖畔」 1942(昭和17)年
玉008

志末久(しまく)とは風の激しく吹き寄せることを言います。
吹雪の寄せる湖畔の景色で、冷たく張りつめた空間が広がっています。
古典的な山水画の雰囲気を残していますが、雪をいただいた山塊の重なりは
写実的です。

「山雨一過」 1943(昭和18)年 絹本・彩色
原風景005

雨上がりの山道の情景です。
谷から吹き上がる風に木々も草も馬子の蓑も揺れ、雲も千切れて飛んで行きます。

「早乙女」(部分) 1945(昭和20)年 絹本・彩色
原風景002

終戦の年に描かれていますが、常と変わらぬ農村の営みです。
畦道は一気に引いたような太い線で、たらし込みも使われています。
田植は早乙女が中心になる農作業ですが、戦時中で男手の足りない
時でもあります。

「朝晴」 1946(昭和21)
玉009

部分
玉010

大きな作品で、崖から伸びる松、尾根道、遠山の重なった雄大な景色です。
遠くの尾根道を行く人と馬は朝霧の中から現れています。

「渓雨紅樹」  1946(昭和21)年 絹本・彩色
原風景006

谷あいの村は雨に煙り、紅葉した木々の葉はうなだれています。
白抜きで表された道を傘を差した人が二人歩いています。
川合玉堂はよく風景の中に何人かの人を描いて、人のつながりを表しています。

  家毎に水車まはるや柿紅葉

川合玉堂は写生の折に見かけた水車小屋の風景を気に入り、自宅の庭に
水車を作ってその音を楽しんだということです。


松竹梅を横山大観、竹内栖鳳とともに描いた三幅対、横山大観、川端龍子と
ともに描いた三幅対も展示されています。

また、第2展示室には動物を描いた作品が展示されています。
玉堂は元々、動物画を得意とする円山四条派で修業していたので、
虎、兎、猿、鶴などの姿を巧みに捉えています。


川合玉堂は、「自分は自然が好きでそれを描いており、(雅邦先生のような)
理想主義にはなり得ない。」と述べています。
たしかに、作品を観ていると自然とその中の人の営みが好きでたまらず、
それを描き続けていたことがよく分かります。

鏑木清方は玉堂の訃報に接して、「日本の自然が、日本の山河がなくなって
しまったように思う」と言って嘆いたということですが、玉堂が描くことに
よって日本の自然が懐かしい姿として記録されたとも云えます。

山種美術館のHPです。

青梅市の多摩川沿いにある玉堂美術館のHPです。





山種美術館の次回の展覧会は「速水御舟―日本美術院の精鋭たち―」です。
会期は8月10日(土)から10月14日(月・祝)までです。

速001

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【2013/06/17 00:01】 美術館・博物館 | トラックバック(2) | コメント(0) |
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