「プーシキン美術館展 フランス絵画300年」夜間特別観覧会 横浜美術館  
みなとみらい
chariot

横浜美術館では、「プーシキン美術館展 フランス絵画300年」が
開かれています。
会期は9月16日(月・祝)までで、休館日は木曜日(ただし8月1日、
15日は開館)です。
その後、神戸市立博物館に巡回します。

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この展覧会は2011年に開かれる予定でしたが、直前に起きた東日本大震災のため
一旦は中止になり、ようやく今年復活したものです。

7月6日に夜間特別観覧会が開かれたので行ってきました。

まず、松永真太郎主任学芸員のミニレクチャーがあり、展覧会の見どころを
伺いました。

プーシキン美術館は1912年に「モスクワ大学附属アレクサンドル3世美術館」
として開館し、ロシア革命を機に、「モスクワ美術館」となり、さらに1937年に
アレクサンドル・プーシキンの没後100年を記念して今の名前になりました。
特に近代フランス絵画のコレクションで知られています。

会場内の写真は夜間特別内覧会のため、特別に許可を得て撮影したものです。

第1章 17-18世紀 古典主義、ロココ

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ニコラ・プッサン 「アモリびとを打ち破るヨシュア」 1624-25年頃
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旧約聖書のヨシュア記の一場面で、モーセの後継者ヨシュアの軍勢が
カナンのアモリ人を打ち破っています。
ヨシュアが太陽と月に命じて一日留まらせたという記述を表すため、
太陽と月が描かれています。
ニコラ・プッサン(1594-1665)は静かな古典主義の画家として有名ですが、
この作品はローマで修業を始めた頃のもので、動的な歴史画になっています。
画面も古代ユダヤというより、ギリシャ・ローマ風です。

エカテリーナ2世(1729~1796)の収集品です。

フランソワ・ブーシェ 「ユピテルとカリスト」 1744年
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ローマ神話のユピテルは月の女神ディアナに従っていたカリストに恋をして、
ディアナの姿に変身してカリストに近づいています。
三日月を額にいただき、ディアナは狩の神でもあるので、足元には獲物の
兎や鳥、矢筒があります。
背後の鷲はディアナが実はユピテルであることを表しています。
ユピテルはレダに恋して白鳥になったり、ダナエに近づくため黄金の雨に
なったりと、マメな神様です。
いかにもロココといった、甘く、この上なく優美な作品です。、

フランソワ・ブーシェ(1703~1770)はロココを代表する画家で、
フラゴナールもブーシェに師事したことがあります。

マルグリット・ジェラール 「猫の勝利」 1785年
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女性が猫を抱き上げ、足元では犬がやきもちを焼いて吠えているという、
今でもありそうな情景です。
マルグリット・ジェラールはフラゴナールの妻の妹で、17世紀オランダ
風俗画を学んでいるそうです。

ユベール・ロベール 「ピラミッドと神殿」 1780年代
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廃墟趣味の画家、ユベール・ロベールの作品です。
ピラミッドはかなり誇張して急角度になっています。

2012年に国立西洋美術館で開かれた、「ユベール・ロベール
-時間の庭-」展の記事
です。

他にクロード・ロラン、ジャック=ルイ・ダヴィッド、ジャン=バティスト・グルーズ
などの作品があります。

第2章 19世紀前半 新古典主義、ロマン主義、自然主義

ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 「聖杯の前の聖母」 1841年
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アレクサンドル2世(1818-1881)が皇太子の時に、新古典派の巨匠、
アングルに注文して描かせた作品です。
背後の右側の人物はアレクサンドルの守護聖人、アレクサンドル・ネフスキー、
左側は父ニコライ1世の守護聖人、聖ニコライ(ミラのニコラオス)で、
アレクサンドルの注文によるものです。
聖母マリアは観音像にも通じる理想的な顔で描かれ、指も長くなっています。
振り向く姿勢で聖杯の上の聖餅を見ており、静的な画面に動きを与えています。
よく観ると、袖口にはギリシャ風のパルメット模様が付いています。

アレクサンドル2世自身は1881年にテロリストの爆弾によって暗殺されています。

ウジェーヌ・フロマンタン 「ナイルの渡し船を待ちながら」 1872年
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オリエンタリズム(東方趣味)に拠っていますが、悠久の時を思わせる、
叙情的な雰囲気を持った作品です。
フランス人のレセップスによりスエズ運河が開通したのは1869年です。
ウジェーヌ・フロマンタン(1820 - 1876)は画家、小説家で
長く北アフリカに滞在しています。

他にウジェーヌ・ドラクロワ、カミーユ・コロー、ジャン=フランソワ・ミレー
などがあります。

第3章 19世紀後半 印象主義、ポスト印象主義

クロード・モネ 「陽だまりのライラック」 1872-73年
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パリ郊外のアルジャントゥイユに居た時の作品で、第1回印象派展の開かれた
1874年の直前にあたります。
妻のカミーユと長男の乳母が木陰で憩っているところですが、木漏れ日も
ぽつぽつとした筆遣いで花が散っているように描かれ、印象派の手法が
始まっています。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「ジャンヌ・サマリーの肖像」 1877年
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ジャンヌ・サマリーはコメディー=フランセーズの花形女優で、
このとき20歳、金髪を輝かせ、やや下がり目で、うっとりとした
表情を見せています。
ピンク色を大胆に使った華やかな雰囲気の作品で、ドレスの青色が
効いています。

当時のルノワールは青色系統の肖像画が多かったので、暖色系の色調は
珍しいそうです。
たしかに、三菱一号館美術館で開かれていた、「奇跡のクラークコレクション
―ルノワールとフランス絵画の傑作―」展に出品されていたルノワールの作品は
どれも青色系統でした。

「奇跡のクラークコレクション展」の記事です。

繊維工業による大富豪のイワン・モロゾフ(1871~1921)の収集品です。
モロゾフのコレクションはロシア革命により接収されています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「医師レーの肖像」 1889年
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レーはゴッホが心を病んで入院した時に治療に当たった見習い医師です。
ゴッホはそれを感謝してこの絵を描いて贈っています。
表情は優しく、背景の壁紙も装飾的で、ゴッホが気持ちを込めて描いたことが
分かりますが、レーは作品が気に入らなかったようで、鶏小屋の穴ふさぎに
使った後、すぐに売り払っています。
なぜか服が左前に描かれています。

繊維貿易による大富豪のセルゲイ・シチューキン(1854~1936)収集品です。
シチューキンのコレクションもロシア革命により接収されています。

シャルル・ゲラン 「テラスの二人の少女」 1903年
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上品な色彩で、優雅な雰囲気の作品です。
シャルル・ゲラン(1875~1939)はギュスターブ・モローに学び、
またセザンヌにも傾倒していたそうです。
モローに学んだということはマティスやルオーの同門でしょうか。

モーリス・ドニ 「緑の浜辺、ペロス=ギレック」 1909年
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1908年に購入したブルターニュの高台の別荘からの眺めに、
古代の情景を重ねています。
羊飼いがニンフに笛を聴かせていて、3人は幼少、若年、老年を
表しているそうです。
左側ではそんなことには関係なく、山羊が角突き合せています。
壁画のような横長な画面を使った、のどかで装飾的な作品です。

他に、マネ、ドガ、ロートレック、セザンヌ、ゴーギャン、ヴュイヤール
などがあります。

第4章 20世紀 フォーヴィズム、キュビズム、エコール・ド・パリ

パブロ・ピカソ 「マジョルカ島の女」 グワッシュ・水彩 1905年頃
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青色の地に人物が浮かび上がるように描かれ、左側の光が立体感を出しています。
ピカソの青の時代は1901年から1904年と云われており、この作品は
その直後のものです。

シチューキンのコレクションで、シチューキンはまだ評価の定まっていない
ピカソやマティスの作品を積極的に購入したそうで、かなりの目利きだった
ことが分かります。
マティスの「ダンス」を注文したのもシチューキンです。

ピカソは3点、マティスは2点、展示されています。

アンリ・ルソー 「詩人に霊感を与えるミューズ」 1909年 
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詩人のアポリネールと恋人のマリー・ローランサンを描いています。
ミューズの姿をしたマリー・ローランサンは堂々とし過ぎるほどで、
柱のようです。
手前の花はニオイアラセイトウとのことで、これをカーネーションに
変えたヴァージョンがバーゼル市立美術館にあります。

他に、マリー・ローランサン、キース・ヴァン・ドンゲン、モイーズ・キスリング、
マルク・シャガール、fルナン・レジェがあります。


古典主義の時代からエコール・ド・パリまで、フランス絵画がきっちりと
揃った充実した内容の展覧会です。
ロシアは常に西欧に憧れ、西欧の文化の吸収に努めてきましたが、
その熱意が伝わります。


グッズのショップには、ロシアの美術館ということで、
いろいろなマトリョーシカも並んでいました。

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横浜美術館では、秋に「横山大観展 良き師、良き友」が開かれます。
会期は10月5日(土)から11月24日(日)までです。

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【2013/07/10 00:01】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(2) |
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  • コメント有難うございます。
    そうだったのですね。
    洋服の右前、左前の確定が比較的最近のこととは知りませんでした。
    今まで、自画像で左前なのは鏡を見て描いたのだろうと思っていたのですが、そうとは限らないのですね。

    【2013/07/13 20:31】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 左前の医師レー
  • TB有難うございました。ゴッホの自画像を画集を眺めてみたところ、右前と左前の両方がありました。サンレミ時代では、右前が多いのですが、アルル時代では、耳に包帯をした自画像など左前が多く、パリ時代でも右前は少数で、坊主頭の自画像を含め大多数が左前でした。参考⇒http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/rxr_detail/?id=20100121-00001123-r25

    【2013/07/13 10:30】 url[とら #8WYMted2] [ 編集]
    please comment















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     モスクワのプーシキン美術館は、サンクトベルグのエルミタージュ美術館に次いで所蔵作品数が多いロシアの美術館。2012年で創立100年を迎えている。  その所蔵作品は、①1917年のロ...
    【2013/07/13 08:52】

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