「和様の書」展 東京国立博物館
上野
chariot

上野の東京国立博物館では特別展、「和様の書」が開かれています。
会期は9月8日(日)までです。
会期中、かなりの展示替があります。

和001


和様の書とは中国の書を元に日本で独自の発展を遂げた書のことです。
平安時代中期以降になると、仮名が生まれ、漢字と仮名が一体となった、
和様の書画発展します。

展覧会では三跡と呼ばれる小野道風・藤原佐理(ふじわらのさり)・
藤原行成(ふじわらのこうぜい)に始まる和様の書の名筆、約150件が展示され、
その内約80件が国宝、重要文化財です。

第1章 書の鑑賞

筆跡のアルバムである手鑑、書をあしらった工芸品、茶室の掛物、
信長、秀吉、家康の直筆などの展示です。

国宝の手鑑が4点、出展されます。

手鑑 「見努世友」 出光美術館 国宝
古004

8月13日から25日までの展示です。
全部で229葉、聖武天皇に始まり、光明皇后、後鳥羽天皇、後醍醐天皇、
藤原俊成・定家、平清盛・忠度、源頼朝・実朝、新田義貞など歴史上の
著名人の筆跡が揃っています。
当時の古筆鑑定は、書風から書かれた時代を推測し、その時代の代表的人物の筆と
特定するという方法なので、このような華麗な構成になるようです。

「見努世友」は兼好法師の徒然草の一文、「ひとり燈のもとに文をひろげて
見ぬ世の人を友とするぞこよなう慰むわざなる。」に拠っています。

手鑑 「藻塩草」 京都国立博物館 国宝
8月12日までの展示です。
こちらは全部で242葉、やはり聖武天皇から始まっていて、「見努世友」と
同じような構成となっています。
紀貫之、小野道風、藤原佐理・行成・公任・定頼・俊頼・定家、鴨長明、西行、
文覚、源頼朝・義経・実朝、女性では大弐三位、八条女院などとなっています。

昔は海藻を掻き集めて焼き、塩を採ったことから、「掻き」が「書き」に通じる
ということで、
手鑑の名前には「藻」の字を使うことが多かったそうです。

手鑑 「翰墨城(かんぼくじょう)」 静岡・MOA美術館 国宝
和004

8月12日までの展示です。

「大手鑑」 京都・陽明文庫 国宝
8月13日から9月8日までの展示です。

「書状(与一郎宛)」 織田信長筆 天正5年(1577) 永青文庫 重要文化財
和006

8月12日までの展示です。
織田信長が長岡与一郎(細川忠興)の武功に対し与えた、自筆の感状
(賞賛の文書)です。
謀反を起こした松永久秀との戦いに15歳で出陣した忠興と弟の興元に宛てています。
「良く出来ました。これからも頑張りましょう。」と書いてあります。


第2章 仮名の成立と三跡

小野道風・藤原佐理・藤原行成の三跡を中心にした展示です。

小野道風(894-967)は公文書の清書などを担当する役人で、その書は王羲之
(おうぎし、303-361)の再来と讃えられ、和様の書の基礎を築いたとされています。

王羲之は東晋時代の政治家、書家で、後の時代の書に多くの影響を与え、
書聖と讃えられています。

今年、東京国立博物館で開かれていた、「書聖 王羲之」展の記事です。

「円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書」 
 小野道風筆 延長5年(927) 東京国立博物館 国宝

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延暦寺第五世座主円珍の没後36年目に、法印大和尚位への昇任と智証大師の諡
(おくり名)を醍醐天皇が下賜したときの勅書です。
勅書なので整然としていますが、うるおいのある、のびやかな書きぶりです。

藤原佐理(944-998)は、はじめ王羲之や小野道風の書風を学びますが、
やがて自由闊達な書に変わります。

「詩懐紙」 藤原佐理筆 安和2年(969) 香川県立ミュージアム 国宝
和002

7月30日からの展示です。
詩懐紙とは詩歌の会で懐に入れた紙に詩を書いたものです。
祖父の藤原実頼の主催した詩歌会の折のもので、詩懐紙としては現存最古です。

藤原行成(972-1028)は小野道風の書風を慕い、夢の中で道風に会い、
書風を授けられたとまで日記に書いています。
優美、典雅な和様の書を完成させ、世尊寺流の書の祖とされています。
藤原道長に重用され、行成が道長から源信の「往生要集」を借りて書写したときは、
道長に「原本はあげるから、あなたの書いた写本の方がほしい」と言われています。

「書状」 藤原行成筆 寛仁4年(1020) 個人蔵 重要文化財
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8月13日からの展示です。
柔らかく字を崩してあります。

「御堂関白記」 寛弘元年上巻、寛弘四年下巻 藤原道長筆 
寛弘元年(1004)/寛弘4年(1007) 京都・陽明文庫 国宝

寛弘四年下巻 は8月12日まで、寛弘元年上巻は8月13日からの展示です。

「御堂関白記」は藤原道長の日記で、日本では現存最古の自筆日記です。
今年、「慶長遣欧使節関係資料」とともに世界記憶遺産に登録されました。
備忘録的な日記なので、誤字脱字も多いそうです。
細かいことにこだわらない性格だったことが分かります。
寛弘四年下巻8月の日記は吉野の金峯山寺にお経を埋納したとあります。

その時、埋納されたと思われるお経も展示されています。


第3章 信仰と書

経典類の展示です。

「竹生島経」 平安時代・10世紀後半~11世紀初 東京国立博物館 国宝
和008

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琵琶湖竹生島の宝厳寺に伝来する法華経で、画像は方便品第二です。
下絵に金銀泥で草花、鳥、蝶、霊芝雲などを描いた上に端正な書風で書かれています。

「平家納経」 法師品第十、見宝塔品第十一、安楽行品第十四、
 如来寿量品第十六 長寛2年(1164) 嚴島神社 国宝

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画像の如来寿量品第十六は8月27日からの展示です。


第4章 高野切と古筆

「高野切(こうやぎり)」や「石山切」などさまざまな古筆の展示です。
「高野切」は現存する古今和歌集最古の歌集で、一部が高野山に伝来したので
この名が付いています。


第5章 世尊寺流と和様の展開

藤原行成の子孫の書や絵画と書の一体となった作品の展示です。

「古今和歌集(元永本)」 藤原定実筆 平安時代・12世紀 東京国立博物館 国宝
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期間中、頁替があります。
古今和歌集が完全に残る冊子本として現存最古の写本です。
雲母摺の料紙に藤原定実が仮名書きしています。
藤原定実は藤原行成の曾孫です。

「本願寺本三十六人家集(貫之集上、順集)」 
 貫之集上:藤原定実筆、順集:藤原定信筆平安時代・12世紀 西本願寺 国宝


唐紙、染紙などを切り継ぎ、破り継ぎして金銀箔を散らした料紙に
歌仙36人の家集を20人の能書家が分担して書いています。

貫之集上は8月12日までの展示、順集は8月13日からの展示です。
画像の頁は順集(したごうしゅう)で、8月13日から8月18日までの展示です。
源順(911-983)は三十六歌仙の一人です。
藤原定信は藤原定実の子で、世尊寺流5代目に当たります。

「古今和歌集序 藤原定実筆 平安時代・12世紀 大倉集古館 国宝
古004

8月12日までの展示です。

古今和歌集の仮名序は、撰者の一人の紀貫之の作とされ、
「花に鳴く鶯、水に住む蛙の声を聞けば、生きとし生きるもの、
いづれか歌をよまざりける。」の言葉が有名です。
白、朱、藍、緑などの色や地模様を変えた32枚の料紙に書かれていて、
色の濃い料紙の部分では字も太めになっています。
巻子本古今和歌集と呼ばれる20巻のうち、巻子の形で現存しているのは
この巻だけで、他は断簡が散在しています。

「舟橋蒔絵硯箱」 本阿弥光悦 江戸時代・17世紀 東京国立博物館 国宝
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海苔を巻いたおむすびのような奇抜な形が目を惹きます。 
海苔の部分は鉛の板で、橋板を表しています。
表面に散らされている和歌の文字は後撰和歌集の源等の歌で、
「東路の佐野の舟橋かけてのみ思い渡るを知る人ぞなき」を元に、
「東路乃 さ乃ゝ かけて濃三 思 わたる を知人そ なき」と書かれ、
「舟橋」の字を抜いています。


平安中期以来の和様の書の代表作が勢揃いした、なんとも豪華な展覧会です。
書は日本の文芸や絵画と深く結び付いているので、観ていてとても豊かな
気持ちになります。




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【2013/07/17 00:01】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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