「生誕250周年 谷文晁展」 サントリー美術館
六本木・乃木坂
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六本木のサントリー美術館では、「生誕250周年 谷文晁展」が開かれています。
会期は8月25日(日)までで、休館日は火曜日です。
7月29日までと7月31日からでかなり展示替があります。

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谷文晁(1763~1840)は江戸時代後期の絵師で、狩野派、円山四条派、土佐派、
中国画、さらには西洋画も学んでいます。
画題も山水画、花鳥画、人物画、仏画と幅広く、「八宗兼学」とも呼ばれています。
八宗兼学とは元々、天台、真言、禅、念仏など日本仏教各派を学ぶことを云い、
文晁の画風・領域の多彩さを表しています。

また、渡辺崋山、椿椿山、田能村竹田など多くの弟子を育てています。

文晁は田安徳川家の家臣の子で、自身も田安家に出仕し、その縁で田安家出身の
松平定信にも仕えています。
松平定信は8代将軍徳川吉宗の孫で、寛政の改革を実施しています。

「ファン・ロイエン筆花鳥図模写」 
 18世紀末期~19世紀初期 神戸市立博物館

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7月29日までの展示です。
高さ2m以上の大きな絵で、オランダから輸入された油彩画を石川大浪・
孟高兄弟が模写し、さらにそれを模写したものと思われます。
日本画の画材を使いながら西洋画の雰囲気を出しています。
花器の根元に書かれた、 W Van Royen 1725 の文字もそのまま
写されています。

石川大浪(1762~1818)は洋風画を得意とする絵師で、「杉田玄白像」で有名です。

「慈母観音図」 1800年頃 山形美術館
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7月29日までの展示です。
東福寺にあった唐の呉道玄の作とされる図を松平定信の命により写したものです。
中国画を精緻に再現していて、技量の高さを見せています。
文晁は仏画もよく描いています。

文晁と交友関係のあった酒井抱一も同じ図を模写しています。

「楼閣山水図」 二幅のうち右幅 文政5年(1822) 個人蔵
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還暦を迎えた文晁が主家の田安家のために制作した作品です。
中国画の画風で謹厳な筆遣いで描かれています。
理想郷の情景で、寿ぎの意味を込めているのでしょう。

「集古十種」 松平定信編集 大和文華館  
松平定信が中心となって編纂された全85巻の古文化財の木版図録集です。
文晁たち画家は全国を廻って描き写し、寛政12年(1800)に刊行しています。
私の行った時は、鎧を筆写した頁が展示されていました。

「熊野舟行図巻」 二巻のうち巻下(部分) 文化2年(1805) 山形美術館
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広々とした鳥瞰図になっていて、地名を書いた札が付いています。
紀州徳川家の命により描いたもので、土地の記録として描かれています。
徳川吉宗は紀州徳川家の生まれで、田安家は吉宗の次男に始まる家なので、
その縁で命じられたのでしょう。

「石山寺縁起絵巻」 七巻のうち巻七(部分) 
 文化2年(1805) 石山寺 重要文化財

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石山寺縁起絵巻全七巻は鎌倉時代に一部完成していますが、六巻と七巻は
詞書のみでした。
石山寺座主の尊賢の願いを受けた松平定信が文晁に命じて、六巻と七巻の絵を
完成させています。
画像は巻七第三十一段で、母を助けるため自らを身売りした娘を乗せた
人買いの舟が大津の浦を出ると大嵐となり、娘が石山観音に祈ると白馬が現れ、
娘を岸に引き揚げます。
その後、娘は結婚し、母を養って幸福に暮らしたという霊験譚です。
逆巻く波や嵐の表現は動的で迫力があり、湖面を駆ける白馬はいかにも頼もしげです。
文晁は平治物語絵巻や春日権現絵巻などを参考にして、古様の絵柄を忠実に
再現していて、その技量の高さを示しています。

展覧会ではサントリー美術館の所蔵となった、文晁の模写した石山寺縁起絵巻も
展示されています。

「松平定信自画像」 松平定信筆 天明7年(1787) 鎮國守國神社
7月29日までの展示です。
陸奥白河藩主だった松平定信が老中就任のため領国を留守にするに当たり、
自身の身替りとして描いた自画像です。
30歳の松平定信は烏帽子狩衣姿で端座し、への字に結んだ口は意志の強さを
表しています。
所蔵する鎮國守國神社は松平定綱と松平定信を祀る神社で、松平家の白河から
桑名への転封に伴い、現在は桑名市にあります。

「木村蒹葭堂像」 享和2年(1802) 大阪府教育委員会 重要文化財
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7月29日までの展示です。
木村蒹葭堂(1736~1802)は大坂の文人で、博識と膨大なコレクションで知られ、
広い交友関係を持っていました。
訪れた文化人は、青木木米、伊藤若冲、上田秋成、浦上玉堂、大田南畝、
田能村竹田、円山応挙、最上徳内、本居宣長、与謝蕪村、頼山陽など
極めて多彩です。
交流のあった谷文晁が遺族の依頼によって描いた肖像画で、造作の大きな
笑い顔からはその人格の大きさが窺えます。

「富士図屏風」 六曲一隻 天保6年(1835) 静岡県立美術館
7月29日までの展示です。
会場の最後に置かれています。
晩年の作で、水墨で富士を描き、稜線に群青で影を入れて、凛とした姿を
際立たせています。
一方で、麓には南画風の藁屋根や小舟が描かれ、のどかなたたずまいです。

文晁はとりわけ富士山を好み、下谷の画塾の写山楼からは富士の眺めが
楽しめたそうです。
写山楼の名も富士山に由来しています。


八宗兼学と呼ばれるとおり、さまざまな流派を巧みにこなし、画域も幅広い
谷文晁の魅力を十分に楽しめる展覧会です。

展覧会のHPです。





サントリー美術館の次回の展覧会は「Drinking Glass―酒器のある情景」展です。
会期は9月11日から11月10日です。

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【2013/07/20 00:01】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(0) |
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【2013/08/05 12:18】

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