「ルーヴル美術館展~地中海 四千年のものがたり~」 東京都美術館
上野
chariot

上野の東京都美術館では「ルーヴル美術館展~地中海 四千年のものがたり~」が
開かれています。
会期は9月23日(月・祝)までです。

ル001


地中海世界の歴史と広がりを約270点の展示品で紹介する展覧会です。

序章 海、大地、港、交易の島々

交易による交流の盛んだった地中海地域の島々の出土品を中心にした展示です。

「打ち出し装飾付き杯:エジプト様式による神話の戦闘場面」 
イダリオン、キプロス 前750年頃

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直径15cmほどの杯で、敵を打ち倒す王やライオン、スフィンクスなどが
エジプト様式で刻まれています。
フェニキア人の制作によるものです。

この時代はアッシリアの盛んな頃で、北イスラエル王国が前722年に
滅ぼされています。
また、「イリアス」「オデュッセイア」の成立の頃とされ、伝承によれば
ロムルスによるローマ建国の頃でもあります。


第一章 初期の交流―紀元前の東地中海

紀元前2000年頃から物品、技術、文化の交流が進み、文字、宗教が広まります。

『柄と注ぎ口の付いた容器、通称「ソース入れ」』 
ギリシャ 前2200-前2000年頃

ル003

出展物の中では一番古く、金製の小さな容器ですが、用途は不明です。
ギリシャは金を産出しないので他国との交易品と考えられます。
この頃のギリシャは青銅器時代です。

「杯と碗」 エジプト、
トードの神殿で発見された宝物(シリア北部で制作?) 前1900年頃

ル004

ルクソール近くのトード神殿で青銅の箱に他の宝物とともに
納められていた小さな銀杯です。
おそらくシリア北部の品で、エジプトにもたらされたと考えられます。
エジプト第12王朝の頃です。

「赤像式クラテル:牡牛に変身した主神ゼウスによる
王女エウロペの略奪」 アプリア地方、イタリア 前360年頃

ル013

クラテルはワインと水を混ぜるための甕です。
ギリシャ神話が描かれています。
アプリアはギリシャ人の植民の盛んだった地域です。

「牡牛を屠るオリエントの神ミトラスの浮彫」 イタリア 100-200年
ミトラス教はインド・イランを起源とする密儀宗教ですが、
実体はまだ良く分かっていません。
古代ローマには紀元前1世紀頃に伝わり、その後興隆しますが、
ローマのキリスト教化とともに衰退し、5世紀には滅びています。

地中海世界では牛の役割は大きく、現在のスペインの闘牛にもつながっています。


第二章 我らが海―ギリシャ、カルタゴ、そしてローマ―

マケドニアのアレキサンダー大王の征服によりオリエントのギリシャ化が進み、
やがてカルタゴを滅ぼしたローマが地中海世界の覇者となります。
マーレ・ノストラム(我らが海)の時代です。

カルタゴの遺物は石碑や小さなペンダントなどです。
バアル・ハモンへの言葉が碑文に刻まれています。

クレオパトラの小像が3点展示されています。
アレキサンダー大王の後継者たちの建てた王朝の一つがエジプトの
プトレマイオス朝で、クレオパトラはその最後の王です。
したがってギリシャ人なのですが、エジプト統治のため、
肖像も多くはエジプト風の装いをしています。

3人のローマ皇帝、アウグストゥス、ハドリアヌス、セプティミウス・セウェルスの
石像もあります。

アウグストゥスはクレオパトラのプトレマイオス朝を滅ぼし、地中海地域を
統一して、パクス・ロマーナ(ローマによる平和)の時代を築いています。

「ローマの石棺:人間の創造とその運命を表すティタン族プロメテウスの伝説」 
 アレラテ(現アルル近郊)、フランス 240年頃

ル005

石棺の側面にギリシャの神々が浮彫されています。
左端のギリシャの兜を被っているのがアテネ、帽子を被っているのがヘルメス、
三叉鉾を持っているのがポセイドンでしょうか。
アレラテはローマの植民都市として栄えています。

「水槽の床モザイク(?):魚のいる海の中でイルカと遊ぶキューピッドたち」 
 ウティカ、チュニジア 250年頃

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直径2mほどの半円形の中にキューピッド、イルカ、ウナギ、カニ、貝などが
描かれています。
モザイクは青く輝き、キューピッドやイルカは活き活きとして、これこそ
地中海世界といった作品です。

ウティカはフェニキア人の植民都市とされ、カルタゴ、後にローマの都市と
なりますが、河港が土砂で埋まっため、中世には放棄されています。


第三章 東へ―十字軍の時代(11~13世紀)―

西ローマ帝国は5世紀に滅んでヨーロッパは中世に入り、やがてイスラム帝国の
勢力がオリエント、北アフリカに伸びてきます。
ヨーロッパの封建諸侯は1096年にエルサレム奪還を目指して第1回十字軍を
起こします。

「恋する男女が描かれた杯:剣を振りかざす騎士とその恋人」 
 キプロス 1300-1400年頃

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唐三彩の影響を受けたキプロスの三彩です。
直径15cmほどの杯で、なんとも素朴で可愛い絵柄です。
キプロスは1191年に十字軍途上のリチャード1世(リチャード獅子心王)に征服され、
キプロス王国が建国されています。


第四章 オスマン帝国と西洋―16~18世紀の地中海―

東ローマ帝国(ビザンツ帝国)はオスマン帝国によって1453年に
コンスタンティノープルが陥落して滅び、西欧はオスマン帝国の圧力を
受けることになります。
オスマン帝国は1529年と1683年の2度にわたりウィーンを包囲しています。

その後、オスマン帝国が衰退を始めると西欧人にとって地中海の旅も容易になり、
東方への興味が増し、トルコ趣味が盛んになります。

「トルコ風衣装のイギリス商人ルヴェット氏と、クリミアの元フランス領事の娘
グラヴァーニ嬢」 ジャン・エティエンヌ・リオタール 1740年頃

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ジャン・エティエンヌ・リオタール(1702-1789)はジュネーブ出身の画家で、
イギリスの外交使節団に同行して、1738年にコンスタンティノープルに旅し、
その国際性を好んで1742年まで滞在して、多くの肖像画を描いたということです。


第五章 芸術家の地中海旅行(18~19世紀)

西欧では1738年からのポンペイ発掘、1798年のナポレオンのエジプト遠征などにより
地中海世界への関心が高まります。
若い知識人は教育課程の総仕上げとして、ヨーロッパ各地を廻るグランドツァーを
行ない、イタリア、ギリシャ、さらにはオリエントにまで赴くこともありました。
これは西欧の興隆とオスマン帝国の衰退に伴う流れでもあります。

『アルテミス:信奉者たちから贈られたマントを留める狩の女神、
通称「ギャビーのディアナ」』 
 ギャビー(現オステリア・デル・オーザ)、イタリア 100年頃

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18世紀にローマ近郊で発見された像で、ギリシャ彫刻のローマでの模刻と思われます。
アルテミスはギリシャ神話の狩と月の女神、ローマではディアナとして
信仰されています。
ほぼ等身大に近い像で、チュニックを着てマントを羽織っている姿はとても清楚で、
サンダルの飾り紐まで彫り出されています。

『ハイディ:ギリシアの若い女性、イギリスの詩人バイロン卿
(1788-1824年)による、「ドン・ジュアン」の登場人物』 
 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 1870~1872年頃

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ハイディはバイロンの叙事詩、「ドン・ジュアン」に登場する、ギリシャの
海賊の娘です。
主人公のドン・ジュアンは乗った船が難破して、流れ着いた小島でハイディに
介抱され、二人は恋に落ちます。
それを知って怒った父親の海賊の首領に連れ去られたドン・ジュアンを思って
憂いに沈んでいる姿でしょうか。
コロー特有の銀灰色の色彩で、彼女の心を表しています。

テオドール・シャセリオー 「モロッコの踊り子たち:薄布の踊り」 1849年
ル012

小品で、アルジェリア・モロッコ旅行の経験を元に描かれた、オリエンタリズム
(東方趣味)の作品です。
テオドール・シャセリオー(1819~1856)は新古典主義のアングルに弟子入りし、
才能を認められますが、やがてロマン主義のドラクロワの影響を受けます。

テオドール・シャセリオー 「アルジェリア、バルコニーの
ユダヤの女性たち」 1849年

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こちらも小品で、赤と青を対比させた、色彩の華やかな絵ですが、日常の情景を
描いた風俗画です。


地中海世界の交流の始まりから、パクス・ロマーナの時代、西欧とイスラムの対峙、
そしてオリエンタリズムの時代までを網羅した、とても興味深い展覧会です。
カルタゴやミトラス教の遺品も観ることが出来ました。

現在の地中海世界は、基本的にはパクス・ロマーナの終焉とその後の十字軍時代の
枠組みがそのまま続いているようです。

展覧会のHPです。


東京都美術館では7月23日(日)から9月29日(日)まで、「福田美蘭展」が
開かれます。

福013

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【2013/07/22 00:09】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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