「福田美蘭展」 東京都美術館
上野
chariot

上野の東京都美術館では「福田美蘭展」が開かれています。
会期は9月29日(日)までです。

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8月6日の夜にブロガー特別内覧会があったので行ってきました。
学芸員の方のギャラリートークを交えての内覧会でした。

福田美蘭さん(1963~)は東京藝術大学出身で、1989年に史上最年少で
安井賞を受賞するなど、早くから注目され、独創的な活動を続けています。

作品はグループに分けて展示されていて、多くの作品に作者自身の解説が
添えられています。

写真は美術館の許可を得て撮影したものです。

I 日本への眼差し

「落書き」 紙本表装 1995年
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街で見かけるスプレーインクの落書きを渋谷駅南口、新宿駅東口、
渋谷駅西口の景色に組合わせてあります。
梵字が蓮台に乗っているように見えます。

左 『志村ふくみ「聖堂」を着る』 パネルにアクリル絵具 2004年 
   滋賀県立近代美術館
右 「道風になびけどけさは」 パネルにアクリル絵具 1995年

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人間国宝の染織家、志村ふくみの作品、「聖堂(みどう)」が美術館に展示され、
着物でありながら触ることが出来ないので、自分が着てみた姿を想像したものです。


II 現実への眼差し

左 「ブッシュ大統領に話しかけるキリスト」 パネルにアクリル絵具 2002年
右 「ニューヨークの星」 パネルにアクリル絵具、ミクストメディア 2002年 
   広島市現代美術館

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9.11事件以来、強硬な手段を取り続けるブッシュを説得できるのは
キリストしかいないだろうという作品です。


貿易センタービルの光の部分を丸く打ち抜き、それを空の部分に星のように
貼っています。
ブルックリン橋からのイルミネーションが一番ニューヨークらしい風景だと
思っていたので、悲しみを、その美しさの中に表現したとのことです。


III 西洋への眼差し

左 「最後の晩餐の修復」 2002年 紙にリトグラフ、鉛筆 2002年
右「ポーズの途中に休憩するモデル」 パネルにアクリル絵具 2000年

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モナリザのモデルが休憩しているときはこんなだろうかという絵です。
固定されているモナリザのイメージとは違うモナリザが表れていて、
人体デッサンの確かさも見せています。

左 「侍女ドーニャ・マリア・アウグスティーナから見た王女マルガリータ、
   ドーニャ・イサベル・ベラスコ、婦人マリア・バルボラ、矮人ニコラシート
   ・ベルトゥサートと犬」 パネルにアクリル絵具 1992年
右 「ゴッホをもっとゴッホらしくするには」 パネルにアクリル絵具、
   紙にカラーコピー、発泡スチロールボード 大原美術館 2002年

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ベラスケスの有名な「ラス・メニーナス(女官たち)」に描かれているうちの
一人の視点で見た情景です。
確かに、侍女ドーニャから見た場合、こうなります。
マルガリータがドーニャの差し出すお盆に載ったカップに手をかけている
様子がよく分かります。
奥の二人は矮人なので、遠近法が強調され、画面の奥行きが深く感じられます。
完璧な構成といわれた「ラス・メニーナス」を分析した結果、こんな発想が
生まれたのでしょう。

左 「開ける絵」 パネルにアクリル絵具、額縁、ゴムバンド
右 「Pieta」 板にアクリル絵具、蝶番

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自分で絵を開けたり閉めたりできます。
絵画は壁の平面に貼り付いているものという常識を覆しています。


この絵ではキリストの体が絵画の構図全体を支えていることを立体的に表すため、
パネルからくり抜いたその部分を使って、パネルを後ろから支えるようにしています。

左 「リンゴとオレンジ」 布にデジタグラフ、油性マジック、額 
   2000年 群馬県立近代美術館
右 「ミレー”種をまく人”」 特殊紙にピエゾグラフ印刷、アクリル絵具 
   2002年 山梨県立美術館

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セザンヌが画学生だったら古典主義の先生はこんな評価をするだろう
という作品です。
モチーフの組み方が不安定だの、リンゴかオレンジか分からないだの、
いろいろコメントを絵に書き入れています。
総評は、視点がバラバラということのようです。
まさしくセザンヌの本質を言い当てています。


IV 今日を生きる眼差し

左 「アカンサス」 パネルにアクリル絵具、プリント生地 2013年
右 「ロゴマークを描く」 パネルにアクリル絵具 2013年

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チラシの絵は11歳の時に上野の東京藝術大学の正門前で父親の福田繁雄に
撮ってもらった写真に、藝大の徽章であるアカンサスと、福田さんが藝大の
卒業の記念に持ち帰った教室の椅子を組合わせたものです。
写真は1974年に東京国立博物館で開かれたモナリザ展に行った時のものです。
写真を拡大した上にアカンサスを描いてあるように見えますが、その逆で、
ウィリアム・モリスのデザインの布地を使い、アカンサスの柄の隙間に
写真の画像を描き入れ、椅子を描くという、手の込んだことをしています。
父親と藝大への思いが表れています。


2012年にリニューアルオープンした東京都美術館のロゴマークです。

上 「バルコニーに立つ前川國男」 パネルにアクリル絵具 2013年
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東京都美術館の設計者、前川國男へのオマージュで、バルコニーに立って
ホールを見下ろしています。
モノクロの写真を基に等身大の姿を描いていて、極く短い時間で
出来上がったそうです。

手前 「眠れる森の美女・オーロラ姫」 プリント生地にアクリル絵具、
    クッション材、ソファー 2012年

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プリント生地の間に眠れる森の美女が見えます。

左 「春-翌日の朝刊一面」 パネルにアクリル絵具 2012年
右 「夏-震災後のアサリ」 パネルにアクリル絵具 2012年

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東日本大震災翌日の朝刊の黒々とした紙面を見たときの印象を描いています。


震災によってアサリも強いストレスを受け、震災の後に成長した部分の殻の模様は
震災の前と違っていたというニュースを基にしています。

左「秋-悲母観音」 パネルにアクリル絵具 2012年
右「冬-供花」 パネルにアクリル絵具 2012年

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東日本大震災をテーマにした作品の一つです。
狩野芳崖の「悲母観音」が、これから下界に下りて行く赤子を抱いています。
下界には津波に流される家や船が見えます。
福田さんは洋画出身ですが、線描を駆使した芳崖の日本画を見事に再現していて、
極めて高い画力を示しています。


2009年に亡くなった、父親の福田繁雄の葬儀に届けられた花の記憶です。
福田さんは届けられた花に水を遣って世話をすることで、そのときの辛さを
乗り越えられたそうです。
震災の起きた2011年に国立新美術館で開かれた「ワシントン・ナショナル・
ギャラリー展」の最後に展示されていた、ゴッホの「薔薇」の印象と
重ね合わせられています。

参考
フィンセント・ファン・ゴッホ 「薔薇」 1890年 油彩・カンヴァス
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左 「紅白芙蓉図」 パネルにアクリル絵具 2012年
右 「風神雷神図」 パネルにアクリル絵具 2013年

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福田さんが藝大に行く途中、6年間通った上野公園の時間の移ろいを、
噴水広場を背景にして酔芙蓉が白から紅に変わる様で表しています。


俵屋宗達の「風神雷神図」の持つ空間性や感情といった絵画的要素を
抽象的・感覚的に捉えようとしたそうです。

福田さんは何を描くかを考えるのに時間がかかり、構想が固まれば
描くのにあまり時間がかからないそうです。
しかも古典的西洋画、漢画、日本画、何でも軽々と描き上げていて、
その技量の高さには驚きます。

作品は観てもらうことを前提に描いており、観客とのコミュニケーションを
したいと考えて描いているそうです。
デザイナーだった父親の福田繁雄の仕事を見ていたからでしょうか。

福田美蘭さんは数々の独特の作品を制作していますが、事物の観方、
感受性は共感出来ます。
これからもどんな作品が生まれるか楽しみな作家です。


東京都美術館は夜景のことも考えてあります。
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【2013/08/13 00:03】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(1) |
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    【2013/08/13 23:37】 url[ #] [ 編集]
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    blog_name=【Art & Bell by Tora】 ♥   福田美蘭展 @東京都美術館
     
     福田美蘭は、安井賞の最年少受賞者、大原美術館の有隣荘特別公開展の初回展示者という華々しい経歴を有している画家である。  しかし、美蘭の作品を見たのはBunkamura で開かれた
    【2013/08/23 08:51】

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