「再興院展100年記念 速水御舟 ―日本美術院の精鋭たち―」 山種美術館
恵比寿
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恵比寿の山種美術館では所蔵作品による、「再興院展100年記念 速水御舟
―日本美術院の精鋭たち―」が開かれています。
会期は10月14日(月・祝)までです。

速001


来年、日本美術院(院展)が再興100年を迎えるのを記念して、
院展の重要な画家だった速水御舟(1894-1935)を中心にした、
院展の画家たちの作品の展示です。
日本美術院は東京美術学校を辞職した岡倉天心が中心となって
明治31年(1898)に設立され、一旦活動を停止した後、横山大観たちが
大正3年(1914)に再興しています。

横山大観 「喜撰山」 1919年
大観001

百人一首に載っている、喜撰法師の歌に拠っています。
喜撰法師は宇治に住んでいたとされます。

 わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり

金箋紙(裏に金箔を押した鳥の子紙の表面を薄く剥いだもの)に描いた
最初の作品で、明るく温かい地色が映えています。
京都の土の赤さを表現するために使ったと考えられるそうです。

横山大観 「木兎」 1926年
大2-14-2010_002

森の中のミミズクで、深々とした木立は墨の濃淡で表され、
目にだけ色が入っています。

速水御舟 「百舌巣」 1925年
御舟002

モズの雛を描いていて、宋画の雰囲気があります。
速水御舟の作品はどれも緊張感と一種の凄味をもっていますが、
それは雛の姿にも表れています。

速水御舟 「炎舞」 1925年 重要文化財
速10-9-2009_004

夜の焚き火に集まる蛾の群れの、やがて炎に焼かれてしまう、
一瞬の時を捉えています。
揺らぎながら燃える炎は仏画の不動の火炎に倣っていますが、
暗い背景との境はぼかされています。
御舟は、背景の色について、「もう一度描けといわれても二度とは
出せない色」と述べています。

速水御舟 「翠苔緑苔」 1928年
速10-6-2009_007

速10-9-2009_002

この作品については2009年の山種美術館での「速水御舟展」の記事
以下のように書きました。

『四曲一双の金箔地の屏風で、右隻に枇杷と青桐、つつじです。
枇杷の木には、まだ青い実から熟れた実まで付いていて、木の下では
黒猫が振り向いています。
隣に展示されている、24番の小下図では、つつじの場所には朝顔の鉢が
3つ置かれ、黒猫と白猫の2匹になっています。

左隻には紫陽花と2匹の白兎です。
紫陽花は咲き始めから満開まで様々に咲いています。
白兎は、向こうに黒猫がいるのも知らずに、呑気に草をかじったり、
寝ころがったりしています。

全体に、右奥から左手前に広がり、右上から左下に下がっていく構図です。
琳派風の装飾性を極め、きっちりとまとまった、近代的な作品です。
御舟の言葉、「もし無名の作家が残ったとして、この絵だけは面白い絵だと
後世言ってくれるだろう」。』

速水御舟 「あけぼの・春の宵のうち あけぼの」 1934年
速10-9-2009_005

淡青色または白群青色の朝鮮色紙に描かれているそうです。
小品で、薄紅の空を背景に、真横に伸びた柳の枝が上に立ち上がり、
更に滝のように垂れ下がっています。
烏が枝に止まって、その空を見上げています。
春も浅いのでしょう、柳はまだ葉を付けていません。

速水御舟 「あけぼの・春の宵のうち 春の宵」 1934年
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淡紅色の朝鮮色紙に描かれているそうです。
薄墨色の夜のなかで、斜めに伸びた満開の桜の枝から、はらはらと
花が散っています。
三日月に照らされた桜は、盛りの最後の時の妖しさを湛え、
白く浮かんでいます。

前田青邨 「腑分」  昭和45(1970)年
院005

江戸時代の腑分(解剖)の場面です。
腑分をする者を中心に、蘭書を手に見入る者、おそるおそる覗く者、
合掌する者など、さまざまな様子が描かれています。
抑えた色彩によって、静かな興奮を表しています。
杉田玄白や前野良沢が明和8年(1771)に見学した腑分の場面を
表しているのでしょうか。

前田青邨 「大物浦」 1968年
歴002

兄の源頼朝に追われた源義経一行が摂津の大物浦から船出したところ、
嵐に遭って散り散りになってしまったという場面です。
たらし込みの技法で塗られた深い藍色の波は観る人を引き込む力があり、
画面全体に緊張感がみなぎっています。
謡曲の「船弁慶」はこの出来事を基にしており、船中には弁慶の姿も見えます。

小倉遊亀 「舞う(舞妓)」 1971年
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小倉遊亀 「舞う(芸者)」 1972年
小倉004

この作品については2008年に山種美術館で開かれた、「百寿を超えて」展の記事
以下のように書きました。

『大きな画面の一対の連作で、金色の地に、舞っている舞妓と芸者が一人づつ
描かれています。
俵屋宗達の「風神雷神図屏風」と同じ趣向です。

「舞う(舞妓)」は振袖姿の若い舞妓が金の扇をかざして、誇らしげに振り返った
瞬間をとらえています。
画面左上の扇から右下に流れる構図ですが、扇を持つ手の袖が外に広がって、
全体に三角形で安定した形になっています。
頭の上に扇をかざした姿を画面に収めるためか、舞妓の身長を低く描いています。
赤紫色の振袖の柄は梅、牡丹、紅葉、菊、南天など四季の草花をあしらって
賑やかです。
赤い帯は菊の模様で、襦袢の赤、足袋の白も見えます。
髪飾りも多く、金、銀、赤をあしらっています。
顔は日本画独特の、すっきりと美しい線描で表しています。
色彩を多く使い、若々しく、華やかな姿を生き生きと描いた作品です。

「舞う(芸者)」では芸者が扇を帯に差し、右袖を抱え、左手を髪に添え、
首を少しかしげて振り返っています。
裾が広がって、やはり三角形の安定した構図です。
芸者の着物はあっさりした竹と流水の柄の黒留袖、白の帯も竹の柄です。
襟元の襦袢と帯の端に見える赤色がアクセントになっています。
眉のあたりの影、口許の形で舞妓との年齢の違いや、心意気を表し、
全体として色数を少なく、すっきりと描くことで芸者の粋な姿を描き出しています。
二点それぞれに見応えのある作品ですが、並べることで、舞妓と芸者を描き分ける、
作者の工夫を観ることができます。』


他に下村観山、菱田春草、小茂田青樹、安田靫彦など、院展の中心となった
作家の作品も展示されていて、見応えのある展覧会です。

山種美術館のHPです。





山種美術館の次回の展覧会は特別展、小林古径生誕130年記念、
「古径と土牛」です。
会期は10月22日(火)から12月23日(月・祝)までです。

古径005

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【2013/09/12 00:00】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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