「Drinking Glass―酒器のある情景」展 サントリー美術館
六本木・乃木坂
chariot

六本木のサントリー美術館では、「Drinking Glass―酒器のある情景」展が
開かれています。
会期は11月10日(日)まで、休館日は火曜日です。

酒008


不透明な素材だったガラスは、紀元前8世紀頃から透明な素材に移行すると共に、
器の中が見えることからビールやワインを容れる器として発展するようになります。

展覧会ではガラスの酒器をその置かれた情景に着目して紹介するもので、
約180件が展示されています。
今回は展示替えはありません。

1.捧ぐ

酒は古代から、神や王・権力者に捧げるものとして儀式の場などで
用いられてきました。

「コアガラス脚付杯」 エジプト 前14世紀 MIHO MUSEUM 
酒001

高さ5cmほどの小さな杯です。
エジプト第18王朝の頃で、ルクソール神殿を造営したアメンホテプ3世や
美女と謳われたネフェルティティ、ツタンカーメン王の時代です。

コアガラスとは棒の先に耐火粘土などで形をつくり、溶けたガラスを
かぶせてから徐々に冷まし、粘土を掻き出す技法です。
色違いのガラスを使って巧みに縞模様を出しています。
コアガラスは紀元前1世紀頃の吹きガラスの技法の発明によって衰退しました。

「カットグラス碗」 ササン朝ペルシャ 3-7世紀 サントリー美術
酒002
 
長く土中にあったため変色していますが、正倉院所蔵や伝安閑天皇陵出土で
東京国立博物館所蔵のカットグラス碗と同じデザインです。
他にも同じ形の碗が展示されており、黒海沿岸や中国の陝西省などでも
出土されているとのことなので、当時のヒット商品だったのでしょう。

2.語らう

互いに語り合う饗宴の場でも酒器は使われます。

「カット装飾碗」 東地中海地域もしくは西アジア 
 前4世紀 MIHO MUSEUM
 
酒003

碗というより皿に近い形です。
ギリシャ陶器に由来する形とのことで、16枚の花弁が彫られています。

3.誓う

誓いの儀式の場にも酒器は使われます。

「ダイヤモンドポイント彫り蓋付ゴブレット」 
 ヴェネチアあるいはカタルーニャ 16世紀後半 サントリー美術館

ベネ010
聖餐式などで使われた物と思われます。
ダイヤモンドで精巧な植物模様の彫りを入れてあります。
スペインのカタルーニャはガラスの産地で、ガラス工芸の先進地域だった
ヴェネチアの技術をよく取り入れています。

「鳥動物文ティアードゴブレット」 ボヘミア 18世紀 サントリー美術館 
チラシに使われている作品です。
50cmほどの高さで、ティアードとは「段になった」という意味で、
このゴブレットも2段重ねです。
婚礼の儀式で使われたもので、下は新郎用です。
彫られている狐は偽善を、鹿は闇を駆逐する光を、鳩は平和を表すそうです。
上は新婦用で、2羽の鳩は愛と平和を表すそうです。

「ダウメングラス」 ドイツ 17世紀末 サントリー美術館 
酒004

高さ50cm程あり、ダウメンとはドイツ語で親指という意味です。
回し飲みのためのグラスで、ワインやビールを入れると3~4kgにもなるので、
親指をかけて支えるためのリングが付いています。

「フリーメーソン文ゴブレット」 イギリス 1868年 高畑美術工芸館
酒005

フリーメーソンはイギリス発祥と思われる結社です。
イギリスの国章と、シンボルマークの定規とコンパス、プロビデンスの目が
彫られています。

4.促す

ガラスの装飾技術が発達すると、絵柄には忠誠を促したり、自らのステイタスを
誇示するものが増えてきます。

「神聖ローマ帝国選帝侯文フンペン」 ドイツ 1606年 石川県立美術館
酒006

大きなビールジョッキで、神聖ローマ帝国の紋章である双頭の鷲と
7人の選帝侯が描かれています。
双頭の鷲は東ローマ帝国、神聖ローマ帝国、ギリシャ正教、
ロシア連邦などの紋章として使われています。
選帝侯とは神聖ローマ皇帝を選定する権利を有した諸侯のことで、
絵にはそれぞれ1から7までの数字も書かれています。

「ゴールドサンドイッチ聖人文ゴブレット」 ボヘミア 
 1730年頃 サントリー美術館

酒007

ボヘミアはガラスの産地で、相似形のガラスの間に金箔や銀箔を挟む
ゴールドサンドイッチの技法も使われていました。
ボヘミアでは現在、この技法は絶えているそうです。

「船形水差」 ヴェネチア 16-17世紀 サントリー美術館
ベネ003

優美で繊細な細工の、ヴェネチアらしい造形です。
船体にふくらみを持たせ、マストもしんこ細工のように組み上げています。

5.祝い、集い、もてなし、愉しむ

祝い事や宴の場で用いられた酒器と、現代作家の作品が展示されています。

「徳利・二段重・小皿入り提重」 日本
 18世紀 瓶泥舎びいどろ・ぎやまん・ガラス美術館蔵

酒008
 
提重は花見や紅葉狩などの行楽のお供に使われたピクニックセットです。
この提重はガラス器を納め、格子を嵌めてあるので、夏用でしょうか。

「藍色ちろり」 日本 18世紀 サントリー美術館
ベネ008

冷酒を入れる酒器で、ひねりの付いた取っ手がとてもお洒落です。
幕末の薩摩切子のくっきりした形とは違った、丸い柔らかさがあります。
南蛮貿易で栄えた長崎にガラスの技術が伝わって生まれた、
長崎ビードロの作品です。
この形を作るにはとても高度な技が必要で、現在では再現が難しいそうです。

「薩摩切子 藍色被船形鉢」 江戸時代 19世紀中頃 サントリー美術館
サ006

蝙蝠をあしらった斬新なデザインのカットグラスです。
澄んだ深みのある藍色も魅力です。
菓子器として使われていたようです。


6人現代作家の作品も展示されています。

関野亮 1978~
ヴェネツィアン・グラスの技法による無色透明のゴブレットや
赤と白の和風の酒器です。

由良園 1977~
ガラスで金箔を挟むゴールドサンドイッチの技法による、
草花などをあしらった酒器です。

中野幹子 1970~
エナメルで可愛い草花などを描いています。

小川郁子 1973~
モダンなカットの江戸切子です。

高橋禎彦 1958~
吹きガラスによる無色透明のリキュールセットとさまざまなコップです。

「酒器等一式」 高橋禎彦 2013年 個人蔵
酒011

松島厳 1946~
古代のコアガラスの技法を再現した作品です。

『綾紡ぎコーン「瑞穂」』 松島厳 2011年 個人蔵 
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古代から現代まで、さまざまな技法、地域のガラス器の揃った、
観て楽しい展覧会です。

展覧会のHPです。


サントリー美術館の次回の展覧会は平等院鳳凰堂平成修理完成記念、
「天上の舞 飛天の美」展です。
会期は 11月23日(土・祝)から2014年1月13日(月・祝)までです。

天012

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【2013/09/16 00:05】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(0) |
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blog_name=【弐代目・青い日記帳 】 ♥   「Drinking Glass―酒器のある情景」
 
サントリー美術館で開催中の 「Drinking Glass ― 酒器のある情景」展に行って来ました。 毎日愛用しているお気に入りのグラスはありますか。 朝食で飲むフレッシュ・オレンジジュース用のグラスから、夜中にビールや焼酎を飲むグラスまで、一日の生活の中だけでも、様々なグラスが生活に華を添えます。 友人たちと美味しい料理に舌鼓を打ちつつ、傾けるワイングラスはまた...
【2013/09/29 21:08】

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