「トスカーナと近代絵画」展 損保ジャパン東郷青児美術館
新宿
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新宿の損保ジャパン東郷青児美術館では、フィレンツェ ピッティ宮近代美術館
コレクション、「トスカーナと近代絵画」展が開かれています。
会期は11月10日(日)までです。

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フィレンツェのピッティ宮近代美術館はトスカーナ大公の宮殿だった
建築にある美術館です。

1861年のイタリア王国建設や2度の世界大戦を含む19~20世紀における
トスカーナ州と州都のフィレンツェの芸術活動を紹介する展覧会で、
約70点の作品が展示されています。

ジョヴァンニ・シニョリーニ 「フィレンツェの謝肉祭」 1846年
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サンタ・クローチェ広場の謝肉祭の賑わいです。
サンタ・クローチェ聖堂の前面にはまだ現在のような大理石の造作が
施されていません。
ジョヴァンニ・シニョリーニはトスカーナ大公に仕えた宮廷画家です。
フィレンツェは当時、トスカーナ大公国の首都でした。

アントニオ・フォンタネージ 「サンタ・トリニタ橋付近のアルノ川」 
 1840年代~1867年

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サンタ・トリニタ橋はフィレンツェのアルノ川に架かる石造のアーチ橋で、
初代トスカーナ大公である、メディチ家のコジモ1世の命で架けられ、
1569年に完成しています。
北岸から西の方を見た光景で、空は夕陽に輝き、橋も小舟も建物も
半ばシルエットになっています。
遠くに見えるドームはサン・フレディアーノ・イン・チェステッロ教会です。
第2次大戦では連合軍の北上を食い止めるためドイツ軍に爆破されますが、
同じ産地の石材を使って復元されています。

アントニオ・フォンタネージ( 1818-1882)は北部のレッジョ・エミリア生まれで、
叙情的な風景画を描いています。
1848年の第1次イタリア独立戦争に従軍し、敗北後は各地を放浪した経験もあります。
工部大学校のお雇い外国人として明治9年(1876)に来日し、明治11年までの
短い期間、日本人に洋画を教えています。
指導を受けた画家には浅井忠、五姓田義松、小山正太郎、山本芳翠などがいます。

イタリアは当時、小国に分かれ、オーストリアなどの諸外国の影響を
強く受けていました。
これに対し、イタリア統一運動(リソルジメント)が起こり、1861年の
イタリア王国建国によって統一はほぼ成し遂げられます。

ジョヴァンニ・ファットーリ 「従姉妹アルジアの肖像」 1858~1860年頃
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色数を抑え、安定した構図で、顔を写実的に描いていますが、
お洒落なグレーの服もシャツも筆を省いています。
シャツの白が清潔感を出し、装身具やボタンの金と花の紅が
アクセントになっています。

ジョヴァンニ・ファットーリ(1825-1908)はマッキアイオーリを代表する画家で、
トスカーナ州のリヴォルノに生まれ、フィレンツェで制作を行なっています。
第1次タリア独立戦争の頃に運動員として参加した経験もあります。

マッキアイオーリ(マッキア派)とはマッキア(斑点)で描く連中という意味で、
イタリア統一運動が盛んになった1850年代に、時代に触発されてフィレンツェで
始まった芸術運動とのことです。
ルネサンス時代に下図に使われていたマッキアの技法を、表に出したままで
作品を完成させたのが大きな特徴ということで、印象派の粗い筆致で描く
技法と似ています。
外光を積極的に描き出すという意味ではフランスの印象派よりやや早く、
当時のアカデミズムに対抗した新しい絵画を目指したとのことです。

近代のフィレンツェの芸術活動を最も特徴付けるのはこのマッキアイオーリとも
言えます。

2010年に東京都庭園美術館では「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」が
開かれていました。

「マッキアイオーリ展」の記事です。

テレマコ・シニョリーニ 「少年の頭部」 制作年不明
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小品で、勢いのある筆遣いと光を強く意識した色彩で、少年の横顔を描き出しています。
テレマコ・シニョリーニ(1855-1901)はジョヴァンニ・シニョリーニの子で、
フィレンツェ周辺の自然と人の暮らしを多く描いた、マッキアイオーリの画家です。

クリスティアーノ・バンティ 「夕焼け」 1870~80年
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夕暮れの黄金色の光の中に佇む女性たちは彫像のようです。

ラファエッロ・セルネージ 「麦打ち場」 1865年
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襲いかかる犬、追われて逃げ惑う鶏、悠然とした牛、動かない洗濯物、
湧き上がる雲を強い日差しの中で描いた、マッキアイオーリらしい作品です。
ラファエッロ・セルネージ(1838-1866)はフィレンツェ生まれの
マッキアイオーリの画家で、1866年の第3次イタリア独立戦争に従軍し、
戦死しています。

フランチェスコ・ジョーリ 「ディエーゴ・マルテッリの肖像」 1885年
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ディエーゴ・マルテッリは批評家で、マッキアイオーリの画家たちを援助し、
またフランス印象派をイタリアに紹介しています。
所蔵する絵画を死後にフィレンツェ市に寄贈し、ピッティ宮近代美術館の発足する
きっかけとしています。
セルネージの「麦打ち場」もマルテッリの所有する土地の庭先での光景です。

ジョヴァンニ・コステッティ 「物思いに耽る女性」 1921年
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女性はフラ・アンジェリコの「受胎告知」の聖母マリアと似たポーズをしていて、
後ろには女性を囲むように中世建築の交差ヴォールトが描かれています。
抑制された描き方で、安定感と静けさを感じます。
ジョヴァンニ・コステッティはファットーリに学んだ後、フィレンツェで
ルネサンス絵画を研究史し、パリでセザンヌの影響も受けたそうです。

フィレンツェのサン・マルコ美術館はフラ・アンジェリコの「受胎告知」を
何点か所蔵しています。

ジョルジョ・デ・キリコ 「南イタリアの歌」 1930年頃
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ギターを弾く、顔の無い人物の胸元に家があって、赤い太陽が昇っています。
シュルレアリスムに大きな影響を与えたジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)は
ギリシャ生まれのイタリア人で、何度もフィレンツェに住み、第1次世界大戦に
応召した経験もあります。

オットーネ・ロザイ 「山と農家」 1944年
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単純で量感のある風景です。
オットーネ・ロザイ(1895-1957)は第1次世界大戦に志願兵として
参加していますが、その後はストラパエーゼ(郷土派)の画家として
フィレンツェ周辺を描いています。
イタリアでは1920年代半ばに、世界と結び付こうとする「都会派」と
日々を大切にする「郷土派」の対立が起こり、郷土派はトスカーナの
田園風景をよく描いたそうです。


小品が多いですが、ルネサンス以降のトスカーナの絵画運動を知ることの
出来る興味深い展覧会です。

展覧会のHPです。


次回の展覧会は、「クインテット-五つ星の作家たち」展です。
会期は2014年1月11日(土)~2月16日(日)です。

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【2013/09/18 00:15】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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