「ミケランジェロ展 天才の軌跡」 国立西洋美術館
上野
chariot

上野の国立西洋美術館では、システィーナ礼拝堂500年祭記念、
「ミケランジェロ展 天才の軌跡」が開かれています。
会期は11月7日(日)までです。

ミ001


ルネサンスの芸術家、ミケランジェロ・ブオナローティ(1475-1564)について、
フィレンツェにあるカーサ・ブオナローティの所蔵する作品、資料約90点によって
紹介する展覧会です。

カーサ・ブオナローティはミケランジェロが購入した邸宅で、その後は甥の
レオナルドの家族とその子孫が住み、現在はフィレンツェ市の所有となっています。
ミケランジェロの彫刻、素描、書簡など豊富な資料を所蔵し、美術館として
開放されています。

第1章 伝説と真実: ミケランジェロとカーサ・ブオナローティ

甥のレオナルドへの手紙が何点か展示されています。

ミケランジェロは粗野で孤独を好む男だったといわれていますが、
手紙は甥の家族への細やかな愛情を感じさせるものです。

マルチェッロ・ヴェヌスティに帰属 「ミケランジェロの肖像」 
 油彩、カンヴァス 1535年以降

60歳前後の肖像で、頬はこけ、皺が寄り、偏屈そうな雰囲気が漂います。
美男で有名だったレオナルド・ダ・ヴィンチや優男だったラファエロとは
かなり違っています。
若いときに喧嘩で殴られて鼻が曲がってしまったこともあってか、
ミケランジェロは自分の肖像を描かれることを嫌ったそうです。
作品は、肖像の雰囲気とはかなり異なる、豪華な金色の額に入っています。
ミケランジェロを顕彰する気持ちの表れでしょう。

『「レダ」の頭部習作』 赤石墨、紙 1530年頃
ミ002
 
ギリシャ神話の、ゼウスが白鳥に姿を変えてレダと通じたという逸話を描いた、
「レダと白鳥」のための習作です。
モデルは男性の弟子とのことで、当時は女性像でも男性をモデルにすることが
多かったそうです。
肌の明暗も細密に描かれていて、まつ毛を長くして女性らしくした部分も
描き添えられています。
「レダと白鳥」の完成作はその後破棄されたということで、模作が展示
されています。

第2章 ミケランジェロとシスティーナ礼拝堂

システィーナ礼拝堂はバチカン宮殿の中の礼拝堂で、ミケランジェロの描いた
天井画や「最後の審判」で有名です。

天井画は教皇ユリウス2世の命で描かれたもので、縦40m、横13mの大空間に
フレスコ画で描かれ、完成までに4年かかっています。
天井画の完成したのは1512年なので、システィーナ礼拝堂500年祭とは
この天井画の完成の年を祝っているのでしょうか。

高さ18mの足場を組んだ上に仰向けになり、描き直しも出来ないフレスコ画を
漆喰が乾かないうちに描かねばならなかったのですから、大変な苦労だった
ことでしょう。

『システィーナ礼拝堂天井画「楽園追放」のアダムのための習作 1510年頃
手を挙げて神の怒りを避けようとするアダムの腕の部分の素描です。
天井画の素描は9点展示されています。

参考
システィーナ礼拝堂天井画、「アダムの創造」
ミ010

神がアダムを創り、生命を与える瞬間で、天井画の中で最も有名な場面です。
天使たちに担われて近づく神の動、手を差し伸ばしてそれを待つアダムの静が
見事に描き分けられています。

徳島県鳴門市の大塚国際美術館にはシスティーナ礼拝堂の実物大空間が再現され、
天井画も実物大の陶板画で再現されています。
そのうち、キリストの誕生を予言したとされる巫女を描いた、「デルフォイの
巫女」部分がこちらで展示されています。
高さ2m以上あり、その大きさと巫女の若々しい表情、力強く動きのある
描写には圧倒されます。

大塚国際美術館のHPの中の「デルフォイの巫女」の展示についての記事です。

映像コーナーでは4kカメラで撮影したシスティーナ礼拝堂天井画が
大画面で映されています。
高い天井にあって現実には近づいて観ることの出来ない作品の細部まで
くっきりと映し出され、細い平行線を並べる描法であるハッチングまで
観ることが出来ます。

『「最後の審判」のための習作』 黒石墨、紙 1533-34年頃
ミ007
 
ミケランジェロは習作の多くを破棄していて、このように壁画の全体像を
描いた習作は貴重な資料です。
手を振り上げるキリストを頂点に、天上に上る人々、地獄に堕ちる人々を
配しています。

「最後の審判」はクレメンス7世に制作を命じられ、パウルス3世の時に
5年かけて制作されています。

参考
システィーナ礼拝堂壁画、「最後の審判」と天井画の一部
ミ008

ミ009

会場には「最後の審判」の1/2ほどの縮尺のパネルが展示されています。
聖母を傍らにして手を振り上げた、ギリシャ神話のアポロンのように
たくましいキリスト、取り巻く聖人や殉教者、吹き鳴らされるラッパ、
墓から引き上げられる人々、地獄に落とされる人々が渦を巻くように描かれ、
轟々とした音まで聞こえてきそうです。
ペテロは天国の鍵を、鋸引きの刑に遭ったシモンは鋸を、車裂きに遭った
カタリナは壊れた車輪を持っています。
どの人物も逞しい肉体の持主で、地獄に堕ちた人たちも獄卒が勤まりそうです。

皮剥ぎの刑で殉教したバルトロマイの持つ皮の顔はミケランジェロ自身で、
制作に疲れ切った自分を描いているとのことです。

第3章 建築家ミケランジェロ

「サン・ジョヴァンニ・デイ・フィオレンティーニ聖堂のための平面図計画案」
 赤石墨、黒石墨、ペン、褐色の淡彩、紙 1559年頃

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ミケランジェロは建築家でもあるので、設計図も遺しています。
八角形の平面に4つの小礼拝堂を組合わせたプランになっています。
実際にはこのプランは使われませんでした。

第4章 ミケランジェロと人体

「階段の聖母」 大理石 1490年頃
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15歳前後の作とされる浮彫りで、階段のような物を彫り込むことで
奥行きを感じさせています。
聖母の憂いを含んだ繊細な表情が彫り出され、衣服の表現も立体的で、
ミケランジェロが早くからすぐれた彫刻の才能の持ち主だったことが
わかります。

「クレオパトラ」 黒石墨、紙 1535年頃 
ミ003

下描きではなく、完成品としての素描とみられています。
当時の流行でしょうか、凝った髪型の女性が静かに振り向いています。
長く伸ばして編んだ髪と蛇の姿が重なっていて、蛇の毒で自殺した
クレオパトラであることを示しています。

この紙の裏側には、別の表情のクレオパトラがうっすらと描かれています。
口を開け、虚ろな目で絶望の表情を浮かべていて、表側と対照的です。
その顔の横にはカギ鼻の老人の顔が、よく観ないと分からないほど
薄く小さく描かれています。

「キリストの磔刑」 木 1563年頃
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高さ20cmほどの小さな木像で、最晩年の作品です。
大理石彫刻を得意としていたミケランジェロなので、木彫はこれを含めて
2点しか現存しないそうです。
未完成なところも暗示的で、大作の「ピエタ」や「ダビデ像」を造った
ミケランジェロは最後はこんな小品も彫っていたのかと思います。


大作や壁画などを多く手がけ、作品を日本で展示することの難しい
ミケランジェロですが、この展覧会でその天才振りを改めて納得できました。

展覧会のHPです。

文京区関口の東京カテドラル聖マリア大聖堂にはケランジェロの
「ピエタ」のレプリカが置かれています。

恵比寿駅から山種美術館に向かう坂道の途中に「ダビデ像」の
青銅製レプリカが立っています。

パ0012


次回の展覧会は「モネ、風景をみる眼-19世紀フランス絵画の革新」展です。
会期は12月7日から2014年3月9日までです。

モネ001

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【2013/09/25 00:10】 美術館・博物館 | トラックバック(2) | コメント(2) |
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  • こんばんは。
  • 台風とは生憎でした。天上画の素晴らしさを大画面の4K画像と大塚国際美術館の陶板画で納得しました。出展数は少ないですが、ミケランジェロにより近づける展覧会です。

    【2013/09/25 23:58】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 先日東京に行った際に行く予定だったのですが、あの台風18号で泣く泣く断念!前売り券を持っているので、11月にまた上京できれば行こうと思ってますが、どうなるやら・・・。
    詳細が分かり、参考になりました。ありがとうございます。
    35年前に見たしシスティーナ礼拝堂の天井画、本当に素晴らしかったです。でも好きなのは、やっぱり彫刻ですね。

    【2013/09/25 23:04】 url[あっけまま #-] [ 編集]
    please comment















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    国立西洋美術館で開催中の 「システィーナ礼拝堂500年祭記念 ミケランジェロ展―天才の軌跡」に行って来ました。 ミケランジェロ展:公式サイト http://www.tbs.co.jp/michelangelo2013/ 歴史が如何に偶然の産物であるかが、ルネサンス三大芸術家に思い浮かべるとよく分かります。 レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロの三巨匠...
    【2013/09/30 22:00】

    blog_name=【Art & Bell by Tora】 ♥   ミケランジェロ展 天才の奇跡 @西洋美術館
     
     今年は、ラファエロ展、レオナルド展、そしてこのミケランジェロ展とルネサンス三大巨匠展のオンパレートである。 今回の展覧会には「システィーナ礼拝堂500年祭記念」という副題が付いているが、今年は「日本におけるイタリア年2013」であり、フランシスコ 教皇就任という慶事が重なっていることも、この展覧会の実現を後押ししたのだろう。  私の手元には、↓の3冊の書物がある。 左は、今回と同じカ...
    【2013/09/25 14:11】

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