「京都 洛中洛外図と障壁画の美」 東京国立博物館
上野
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上野の東京国立博物館では特別展、「京都 洛中洛外図と障壁画の美」が
開かれています。
会期は12月1日(日)までです。
11月4日までの前期と11月6日からの後期で一部展示替があります。

京001


第一部 都の姿―黄金の洛中洛外図

国宝、重要文化財に指定されている洛中洛外図7件すべてが展示されます。

「洛中洛外図屏風 舟木本」 岩佐又兵衛筆 6曲1双
 江戸時代・17世紀 東京国立博物館 重要文化財

右隻
京002

左隻
京005

滋賀県の舟木家に伝わったことから、この名があります。

上京と下京を別の視点から見る従来の方式と違って、東寺の五重塔の上からの
視点で、右隻の右端に豊臣家の象徴の方広寺大仏殿、左隻の左端に徳川家の象徴、
二条城を置いた形です。

戦国大名の荒木村重の子とされる岩佐又兵衛の作で、特徴は2728人もの人物が
活き活きとした姿で描かれているということです。

第一会場に入ると先ず、縦横4mの大画面4面に拡大された舟木本の細密画像が
投影されています。
洛中洛外図は人物が細かく描かれているので、来館者が多いと見辛いのですが、
これだと細部までよく観ることが出来ます。

右隻は方広寺大仏殿の大仏を見上げる人々、清水寺、音羽の滝の水垢離、
三十三間堂通し矢、五条大橋、遊里の賑わいなどが描かれています。

方広寺大仏殿
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豊国神社での花見の帰りに、五条大橋を渡る人々
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踊り狂う人、騎馬の人、桜の枝をかざす人、待ち構える乞食など、躍動的な
群像表現です。
鴨川では馬を洗い、薪を積んだ舟がを上り、右上には歌舞伎の舞台も見えます。

長道具を持ち出しての喧嘩
京012

長刀の男は膝から血を流し、右下の男は槍の鞘を払っています。
屏風が制作されたのは大坂の陣の起きた元和元年(1615)頃とされていて、
戦国の荒々しい気風を見せています。


左隻は祇園祭、五条通の賑わい、南蛮人、東寺の法会、御所、二条城を訪れる勅使、
城内でのお裁きなどで、徳川家の支配を強調しています。
方広寺大仏殿近くでの喧嘩に対して二条城でのお裁きと、対照的な場面が
配置されているのも示唆的です。

二条城
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祇園祭の風流
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鐘勧進の僧たち
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釣鐘の鋳造のため、鉦を叩き、勧進帳を読み上げ、銭を受ける柄杓を
差し出しています。
肩の荷を降ろして巾着から銭を出そうとしている人も見えます。

着物の描線は金色で、華やかさを増しています。
京013

たしかに舟木本洛中洛外図屏風は他の作例に比べ、人物表現に勢いがあります。


「洛中洛外図屏風 上杉本」 狩野永徳筆 6曲1双
  室町時代・16世紀 米沢市上杉博物館 国宝

前期の展示です。
左隻に足利将軍邸、右隻に御所を描く、室町時代の形式に拠っています。
13代将軍足利義輝が狩野永徳に描かせ、永禄8年(1565)に義輝が松永久秀らに
殺害されると、屏風は織田信長が手に入れ、越後の上杉謙信に贈られたものと
されています。

金閣、清水寺、三十三間堂、東寺、南禅寺、天竜寺などおもな神社仏閣が
描かれています。

金閣のあたりの北山は雪景色で、当時から雪景色なら金閣と思われていた
ことが分かります。
天竜寺のある嵯峨野では、紅葉狩りの人々が紅葉の枝を枝をかざして
歩いています。

2500人程が描き込まれているとのことで、町を行きかう人々、田舎の農作業、
祇園祭、鷹狩りの一行、川の漁、相撲、闘鶏、弓矢や刀を持ち出しての喧嘩、
子供たちの綱引き、猿回し、琵琶法師を追う犬などがていねいに、こまごまと
描かれています。

祇園祭の山鉾巡行と神輿の渡御
京014


御所や武家屋敷も大きく描かれ、「公方様」と書かれた屋敷に入ろうとする
行列が見えます。
行列の主で、輿に乗っている人物は上杉謙信ではないかと言われています。
前を行く馬には赤い毛氈が掛けてあり、これは管領の格式を表していると
いうことです。
足利義輝が上杉謙信の上洛を促すためにこの屏風を描かせたもので、
信長も謙信の機嫌を取るため、これを贈ったとするものです。
洛中洛外図が時の権力と深い関係があることを見せています。

「洛中洛外図屏風 勝興寺本(左隻)」 
 6曲1双 江戸時代・17世紀 高岡・勝興寺 重要文化財

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前期の展示です。
左隻中央には天守閣のある二条城、右隻には内裏や方広寺、右上隅に伏見城が
描かれています。
洛中洛外図の恒例として、右隻には祇園祭の山鉾巡行、左隻には神輿渡御の
様子も描き込まれています。
左隻に二条城、右隻に方広寺を配置する形式の最も古い作例とのことで、
金雲は金置き上げという、金を盛り上げた豪華な技法を使っています。

歌舞伎小屋や見世物の描写が無く、品良く並ぶ貴族の邸宅が強調されています。
この屏風が近衛家の娘が勝興寺の住職に嫁いだ時の嫁入り道具だったからでしょう。
勝興寺は浄土真宗の寺院で、戦国時代は越中一向一揆の中心勢力の一つでした。

「洛中洛外図屏風」 歴博乙本  6曲1双
 室町時代・16世紀 千葉・国立歴史民俗博物館 重要文化財


前期の展示です。

以下は後期の展示です。

「洛中洛外図屏風 歴博甲本」 6曲1双 
 室町時代・16世紀 千葉・国立歴史民俗博物館 重要文化財


「洛中洛外図屏風 福岡市博本」  6曲1双
 江戸時代・17世紀 福岡市博物館  重要文化財


「洛中洛外図屏風 池田本」 6曲1双 
 江戸時代・17世紀 岡山・林原美術館  重要文化財



第二部 都の空間装飾―障壁画の美

1.王権の象徴―京都御所

御所の紫宸殿の障子絵などの展示です。
慶長期に建てられた紫宸殿は寛永18年(1641)に仁和寺に下賜されています。

「賢聖障子絵部分)」 狩野孝信筆 20面
 江戸時代・慶長19年(1614) 京都・仁和寺 重要文化財

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前期と後期で10面ずつ展示替されます。
賢聖障子(けんじょうのそうじ)は紫宸殿の玉座の背後に立てられた障子で、
中国古代の賢人聖人が32人描かれています。
狩野孝信(1571ー1618)は狩野永徳の次男で、永徳の後、狩野派の総帥を
勤めています。


2.仏法の荘厳―龍安寺

第二会場に入ると、幅約16mのスクリーンに4K画像で、ほぼ実物大の
龍安寺石庭の四季が投影されています。
春の枝垂桜、夏の雨、蝉時雨、秋の紅葉、冬の雪と移り変わる様子を、
数分の間に縁側に座ったつもりで眺めることが出来ます。
竜安寺石庭の1年分を味わえるというのはかなりの贅沢です。

「列子図襖(部分)」 4面
  江戸時代・17世紀 アメリカ・メトロポリタン美術館

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旧龍安寺襖絵18面の展示です。
龍安寺方丈の襖絵は明治時代に散逸し、一部はメトロポリタン美術館が
所蔵しています。

列子は中国戦国時代の思想家で、風を操ることが出来たといいます。
狩野派の作で、金地の空に浮いている列子には少しとぼけた趣きがあります。


3.公儀の威光―二条城

二条城の黒書院一の間、二の間の襖絵、全69面と大広間四の間の襖絵の展示です。

「黒書院一の間、二の間襖絵」 狩野尚信筆 
 江戸時代・寛永3年(1626) 京都市(元離宮二条城事務所) 重要文化財

京008

黒書院は徳川一門や譜代大名との対面の場で、内輪の集まる場ということで、
襖絵は桜や雉、柴垣などをやわらかく描いています。
狩野尚信(1607-1650)は狩野孝信の次男で、探幽の弟です。

一の間、二の間の襖絵は実際と同じ配置に並べられていて、展示室のベンチに
座って見渡すとお大名になったような気分です。
 
「松鷹図」 二の丸御殿 大広間四の間 狩野探幽筆 西側6面北側9面 
 江戸時代・寛永3年(1626) 京都市(元離宮二条城事務所) 重要文化財

京006

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大広間四の間は武器庫として使われていた部屋です。
将軍の武威を見せつけるため、天井まで届く松の巨木と鋭い目をしたイヌワシが
豪快に描かれています。


慶応3年(1867)10月13日に15代将軍徳川慶喜は二条城に40藩の重臣を集めて
大政奉還を告げ、翌14日に朝廷に大政奉還上表を提出しています。

参考
「大政奉還(下図)」 邨田丹陵 20世紀 明治神宮
二017

日本史の教科書によく載っている、有名な場面です。
絵では黒書院が描かれていますが、実際に慶喜が大政奉還を告げた場所は大広間です。


舟木本洛中洛外図や龍安寺石庭を細密映像で再現し、二条城襖絵を実際と同じ
空間構成で見せるなど、仕掛けに工夫があって面白く、楽しめる展覧会です。

「洛中洛外図屏風 上杉本」の展示は11月14日までですので、早めに行かれる
ことをお奨めします。


展覧会のHPです。


東京国立博物館では特別展、「クリーブランド美術館展─名画でたどる日本の美」が
開かれます。
会期は2014年1月15日(水)~ 2月23日(日)です。

クリ001


また、特別展、「栄西と建仁寺展」が開かれます。
会期は2014年3月25日(火)~ 5月18日(日)です。
俵屋宗達の「風神雷神図屏風」も展示される予定です。

建001

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【2013/10/16 21:49】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(2) |
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  • こんばんは。
  • コメント有難うございます。
    屏風の雲は場面転換に使えるし、豪華だし、なかなか便利で横着な道具です。
    マンガにも通じる技法で、昔の人は面白いことを考えたものです。

    【2013/10/17 20:06】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 富士山の雲海は有料なり
  •  こんにちは。
     洛中洛外図屏風ですか。良いですなぁ。水墨画の渋いのも良いけどが、きんきらきんの華やかさも好きです。
     でも、このての絵を見て思うのが、曇ってその実手抜きじゃね?(笑・失礼)。まあ、それが良いんですがね。全部人や建物で埋めたら賑やかすぎて狭っ苦しい気がするし、ウォーリーを探せみたいな絵でもどうなのよって思いますからね。しかしそうとは言うものの、油断すると街が雲に溺れてる様に見えてしまったりして・・・(笑・スマソ)

    【2013/10/17 12:56】 url[miss.key #eRuZ.D2c] [ 編集]
    please comment















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     京都洛中洛外図と障壁画の美@東京国立博物館 平成館に行ってきました。金曜の夜ですが3連休の前ということもあり盛況でした。洛中洛外図ー町のにぎわい、天下人の夢。国宝、重文でつずる天下人の都 という副題のように雅な展示でした。龍安寺の四季のビデオもなかなかで、本物のいいところを集約しているのではと感じました。雨雪の演出もあり、本物を見たことないという人もいいねとの感想が出てい...
    【2013/10/22 19:46】

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