「ターナー展」 東京都美術館
上野
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上野の東京都美術館では、「ターナー展」が開かれています。
会期は12月18日(水)までです。

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世界最大のターナーの作品のコレクションを保有するロンドンのテート美術館の
所蔵する油彩画30点以上や水彩画、スケッチ約110点が展示されています。

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)はロンドンで
理髪師の家に生まれています。
子供の頃から絵が好きで、こぼれたミルクで上手に絵を描いたという、
雪舟のような逸話も残っています。

「ターナーの自画像」(W.ホウル[子]による版画)
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なかなかの美男ですが、これはかなり美化されて描かれているそうです。

ターナーは水彩で名所の絵を描く風景画家として画業を始め、その作品は
「崇高」なイメージを描き出すように努めていたそうです。


「バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨」 
 油彩、カンヴァス 1798年 ロイヤル・アカデミー展出品
 
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1797年にイングランド北西部を旅行した時のスケッチを元に描いています。
カンバーランド(現在のカンブリアの一部)はイングランド北西端の地方です。
雨、湖面を照らす日光、虹を共に描いた、荘重で劇的な光景です。
同時代のドイツのロマン主義の画家、フリードリヒと共通するものがあります。


「スピットヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された二隻のデンマーク船」 
 油彩、カンヴァス 1808年ターナーの画廊に展示
 
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ポーツマスはイギリス南部の軍港で、スピットヘッドはその沖合いにある停泊地です。
ターナーはナポレオン戦争(1803-1815)をきっかけにして、海戦など海を
テーマにした作品を手掛けます。
ナポレオンのフランスと友好関係にあったデンマークのコペンハーゲンを
イギリス海軍が攻撃し、軍艦を拿捕して寄港した時の光景で、ターナー自身が
目撃しています。
デンマークの旗の上にイギリスの旗がひるがえっていて、拿捕された船である
ことを示しています。
船の帆は日の光を受けていますが、風に膨らみ、雲は流れ、海は波立っています。


「ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って
回廊装飾のための絵を準備するラファエロ」
 油彩、カンヴァス 1820年ロイヤル・アカデミー展出品
 
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ターナーは1819年、44歳の時に初めてイタリアに旅行します。
ラファエロがヴァティカン宮殿の回廊の装飾を依頼され、自分の作品を
並べて回廊を見上げながら構想を練っている様子を描いています。
「小椅子の聖母」や「追放されるアダムとイヴ」などが見えます。
ラ・フォルナリーナはラファエロの恋人とされる女性です。

作品はラファエロ没後300年を記念して、尊敬するラファエロを称揚すると共に、
自らも技を極めた巨匠であることを示そうとしているとのことです。
サン・ピエトロ広場の列柱が見えますが、これは17世紀中頃にベルニーニが
建てており、ラファエロの時代にはまだありませんでした。
ターナーの心の中に描いた、理想のローマと云えます。

ターナーは1828年には2度目のイタリア旅行を行ない、ローマにアトリエを
構えるほどイタリアに心酔し、特にヴェネツィアの風景をよく描いています。


「チャイルド・ハロルドの巡礼―イタリア」 
 油彩、カンヴァス 1832年ロイヤル・アカデミー展出品

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1812年にバイロンの発表した長編詩、「チャイルド・ハロルドの巡礼」に詠われた
バイロンのイタリア観を基礎にした作品とのことです。
青春の浪費を悔い、イタリアの痛切な美に心を満たされるというものです。
おだやかで広々とした自然の中に、丘の上の建物、壊れた石橋、踊る人物などを
配した、クロード・ロランに倣ったロマンチックな風景です。

傘のように伸びた一本松が印象的で、夏目漱石の「坊っちゃん」の中で、
赤シャツが幹が真直で上が傘のように開いた松を見てターナーのようだと
言ったのは、漱石がターナーの絵を観た記憶があったものと思われます。
これとよく似た絵柄の作品が、今年2013年に東京藝術大学大学美術館で
開かれていた、「夏目漱石の美術世界展」に出展されていました。

「夏目漱石の美術世界展」の記事です。

ターナーはクロード・ロランを尊敬していて、自分の作品をクロード・ロランと
並べて欲しいと遺言までしており、現在ナショナルギャラリーではそのように
展示されています。


『スイスの湖(「ルツェルン湖、ブルンネンよりウーリ湾を望む」とされる)』 
 鉛筆・水彩・ペントインク、紙 1841-43年?
 
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ターナーはヨーロッパ各地を旅して、自然を写生しています。
ルツェルン湖はスイス中部にある湖で、ブルンネンから南を見た光景のようです。
青い湖、山岳に当たる日の光、夕焼けに染まる空が水彩画でざっと描かれています。

晩年になるとターナーは嵐などの自然を描くのに、写実を超えてその力、
感動そのものを表そうとするようになります。
そして光や空気を画面に表そうとするので、物体の形がはっきり見えなくなり、
抽象画に近くなってきます。

ターナーは27歳でロイヤル・アカデミーの会員になるほどの人気画家
でしたから、晩年には絵が売れるかどうか気にせずに自分の描きたい絵を
描いたのでしょう。
まだ印象派さえ登場していなかった時代ですから、作品について当時の人の
受けは良くなかったというのはよく分かります。

ターナーは印象派に影響を与えたと云われていますが、モネが晩年に光そのものを
描こうとしたのと似ていて、画家というのは行き着くところ、同じものを追求する
のだなと思います。

展示室の一部にはウィリアム・モリス調の壁紙もありました。


ターナーの初期から晩年まで、その画業をたどることの出来る、
とても興味深い展覧会です。





東京都美術館では特別展、「日本美術院再興100年 世紀の日本画」展が開かれます。
会期は2014年1月25日(土)~4月1日(火)です。

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【2013/10/26 22:42】 美術館・博物館 | トラックバック(4) | コメント(0) |
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