「小林古径生誕130年記念 古径と土牛」展 その1 山種美術館
恵比寿
chariot

広尾の山種美術館では、特別展、「小林古径生誕130年記念 古径と土牛」展が
開かれています。
会期は12月23日(月・祝)までです。
11月24日までの前期と26日からの後期で一部展示替えがあります。

古径005

山種美術館の所蔵品を中心に、小林古径の作品50点近くと、梶田半古の塾で
古径の弟弟子だった奥村土牛の作品を併せて展示する展覧会です。

11月2日には「弐代目・青い日記帳」のTakさんと山種美術館の企画による
ブロガー内覧会がありましたので、行ってきました。

先ず、山﨑妙子館長のギャラリートークをお伺いしました。

撮影は美術館の許可を得てあります。

第1章 小林古径の芸術

小林古径(1883-1957)は新潟県出身で、梶田半古(1870-1917)の画塾に
入門しています。

小林古径 「小督」 1901年頃
古0121

古0122

展示されている中で、一番早い時期の作品です。

高倉天皇の寵を受けた小督(こごう)は、娘の建礼門院徳子にとって
邪魔な存在であるとして清盛に追放されますが、帝の命で行方を捜していた
源仲国は琴の音をたよりに小督の居所を捜しあてます。
平家物語の一節の「峯の嵐か松風か 尋ぬる人の琴の音か」と語られた場面で、
黒田節にも唄われています。
琴を弾く小督と訪ね来る源仲国を二幅に分けて描いています。

小林古径 「闘草(くさあわせ)」 1907年
古0114

古0116

初期の作品で、五月五日の頃に草を持ち寄ってその優劣を競った、
「草合わせ」という遊びを題材にしています。
右の童の汗衫(かざみ)から透けて見える腕や、左の童の肩の骨の
ふくらんだところまで写実的に描き出しています。
汗衫の宝相華文までていねいに描き入れてありますが、古径は肌の色に
苦心したそうです。

梶田半古は、従来の日本画家が粉本(作品の模写)を参考にしていたのに対し、
写生を重視した画家で、弟子たちにも写生の大切さを教えています。

小林古径 「河風」 1915年
古0130

黒の絣の浴衣姿の女が河原に置いた縁台に掛け、金地に桔梗の団扇を
持って足を水に浸しています。
菱川師宣の見返り美人などの浮世絵を参考にしていて、流れの描き方には
紅児会で共に活動した今村紫紅の影響が見られるそうです。

奥村土牛はこの絵を気に入って購入し、床の間に飾っていたのを、
訪ねてきた古径が見て驚いています。

小林古径 「静物」 1922年
古0128

小林古径の描いた唯一の油絵です。
背景を描かないところは日本画風で、制作年が縦書きで入っていて、
落款もあります。
岸田劉生風の重い描き方ですが、鉢の硬い質感も表され、古径らしく
きっちりとして気品があります。

この時期は西洋画と日本画の間で心が揺れていた頃とのことで、
前田青邨も一時は洋画に転向しようかと悩んだ時期もあったそうです。
小林古径はこの絵を描いた年に前田青邨とともに欧州に留学して、
逆に東洋画の線描に目覚めています。

小林古径 「清姫」 8枚連作 1930年
紀州の安珍清姫伝説を絵巻物風に8枚続きの絵に仕立てたものです。
小林古径はこの作品を気に入っていて、一生手元に置いておくつもり
だったのを、山種美術館の設立のお祝いに寄贈したとのことです。

「清姫のうち 旅立」
古0075

画像ではよく見えませんが、旅姿の二人の僧が墨だけを使った白描で描かれています。
これから熊野詣に行くところです。

「清姫のうち 寝所」
古0078

紀伊国の屋敷に泊めてもらった安珍の部屋に、安珍に恋した清姫が
忍んでくる場面です。
安珍は、熊野参詣の帰りには立ち寄るからといってその場を逃れます。

「清姫のうち 熊野」
古0082

蒼い森の中の熊野本宮を俯瞰しています。

「清姫のうち 清姫」
古0084

熊野詣を終えた安珍は清姫を避けるため、別の道を通って帰ります。
騙されたと知った清姫が安珍を追って裸足で山坂を駆け下る場面です。

「清姫のうち 川岸」
古0087

山道を逃げる安珍は日高川にたどり着きます。
小舟も一艘あります。
古径はこの場面の制作に一番苦労したそうです。

「清姫のうち 日高川」
古0089

古0135

安珍を追う清姫が日高川に阻まれています。
灰色の満々とした水に向って伸ばした手が清姫の絶望を表しています。
なびく髪の下にかすかに金色が塗られています。

この後、清姫はついに蛇体となって日高川を泳ぎ渡ります。

「清姫のうち 鐘巻」
古0092

道成寺に逃げ込んだ安珍は釣鐘を降ろしてもらってその中に身を隠しますが、
蛇となった清姫は鐘に巻付き、焔を吹いて安珍を焼き殺してしまいます。
この絵では蛇ではなく、龍の姿に描かれています。
白い体や前脚を伸ばして鐘に掛けた姿は、「日高川」での手を伸ばした
清姫の姿に照応しています。
すさまじい場面ですが、古画のようで気品があります。

「清姫のうち 入相桜」
古0095

安珍と、日高川に身を投げた清姫の亡骸は共に比翼塚に葬られます。
その比翼塚には桜が植えられ、入相桜と呼ばれます。
悲恋の物語は最後に満開の桜によって優しく慰められています。

小林古径 「鴨」 1932年
古0182

古0183

第2章に展示されている作品です。
鴨の羽根の艶も表されています。

小林古径 「しゅう采」 1934年
古0118

古0212

「しゅう」は「秋」の偏と旁を逆にした字です。
古径は柿の葉を描くのに色の違う金泥を使う工夫をしています。

小林古径 「白華小禽」 1935年
古0206

泰山木に止まっているのは瑠璃でしょうか。
葉の艶や厚みも表されています。
古径はよく対象の質感まで描き出しています。

小林古径 「果子」 1936年
古0140

端正な線描の果物がセザンヌの絵のように無造作に置かれています。
古径はセザンヌを好み、土牛にも教えたので、土牛もセザンヌの影響を
受けるようになったそうです。

小林古径 「紫苑紅蜀葵」 1936年 霊友会妙一記念館
古0111

右隻に秋の花の紫苑、左隻に夏の花の紅蜀葵を配しています。
金箔地の上に金砂子を撒いてあるという、煌びやかな作品です。
霊友会所蔵で観る機会のあまり無い作品なので、この展覧会は貴重な機会です。

小林古径 「西行法師」 1939年
古0136

吾妻鏡に書かれている逸話で、兵火に遭った東大寺再建のための勧進を重源に
頼まれた西行が鎌倉の鶴岡八幡宮で源頼朝に出会い、元武士だった西行は
問われるままに弓馬の術について終夜語ります。
翌朝、お礼に銀の猫をもらいますが、門を出たところで、子供にあげてしまった
というお話です。

昔からあった画題で、主人公以外を小さく描くのも従来の画法に拠っていますが、
喜んで駆け去る子供をことさら小さく描くことで、聖と俗の差を際立たせています。

小林古径 「鶴」 1948年
古0193

会場の最初に置かれている作品です。
白と黒でまとめられ、丹頂に合わせて紅梅が添えられています。
小林古径の特質の線描、色彩、質感、気品の揃った作品です。

「第2章 古径と土牛」については、回を改めて書きます。

山種美術館のHPです。

関連記事

【2013/11/05 22:37】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
comment
 
コメントを書く
コメントは承認後に公開されます。ご了承ください。
please comment















管理者にだけ表示を許可する

trackback
trackback url ↓
http://nekoarena.blog31.fc2.com/tb.php/2042-1bce57b6

プロフィール

chariot

Author:chariot
東京のビルの多い街で暮らしています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

カテゴリー

ブログ内検索

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード


| ホーム |