「ラファエル前派展 英国ヴィクトリア朝の夢」 森アーツセンターギャラリー
六本木
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六本木の森アーツセンターギャラリーでは「ラファエル前派展 
英国ヴィクトリア朝の夢」が開かれています。
会期は4月6日(日)まで、会期中は無休です。

ラ001


ロンドンのテート美術館の所蔵する、ラファエル前派の作品72点を展示する
展覧会です。

ラファエル前派はロンドンのロイヤルアカデミー付属美術学校の生徒だった、
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828-1882)、ウィリアム・ホルマン
・ハント(1827-1910)、ジョン・エヴァレット・ミレー(1829-1896)の
3人が1848年に結成した芸術結社、ラファエル前派兄弟団に由来します。
これに4人が加わったものがラファエル前派とされています。

当時のヴィクトリア朝時代の硬直化したアカデミーの教育を批判し、
古典主義の完成者とされるラファエロより前の初期ルネサンスや中世の
素朴で自然に忠実な絵画に戻ろうとする運動です。

聖書、古代の神話、中世の物語を題材にしていて、自然に忠実な絵画という
目標は美術評論家のジョン・ラスキンの思想に影響を受けたものとのことです。
ラファエル前派は短い活動期間の後、女性問題や理念の違いなどから解散
していますが、象徴派の先駆的な活動として位置付けられています。

作品は7つのグループに分けて展示されています。

1.歴史

ジョン・エヴァレット・ミレー 「オフィーリア」 1851-52年
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ラファエル前派時代の代表作です。
川辺で数ヶ月掛けて写生して描いたという植物は鮮やかな色彩で、
悲劇的な場面でありながら甘美な情景になっています。
モデルは後にロセッティの妻となるエリザベス・シダルで、お湯を張った
バスタブの中でポーズをとっていて、風邪を引いてしまったそうです。

ラファエル前派は自然の忠実な描写を重視しています。

アーサー・ヒューズ 「4月の恋」 1855-56年
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女性が何か物思わしげな表情で木陰に立ち、後ろには男性の顔が見えます。
明暗の対照が強く、鮮やかな緑色と青色の際立つ作品です。

アーサー・ヒューズ(1831-1915)はジョン・エヴァレット・ミレーの
影響を強く受けた画家とのことで、2011年に目黒区美術館で開かれた、
「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展にも作品が展示されて
いました。

2.宗教

ジョン・エヴァレット・ミレー 
 「両親の家のキリスト(大工の仕事場)」 1849-50年

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大工のヨセフの家のキリストを描いていますが、まったくの俗世界の出来事の
ように描かれているとして、強い非難を受けています。
子供のイエスは手から血を流し、足にも血が垂れていて、磔を暗示しています。
マリアは嘆き、毛皮を着けたヨハネは洗礼を象徴する水を持ってきています。

ラファエル前派は宗教を主題にしても理想化せず、人間の物語として
描こうとしています。

3.風景

ウィリアム・ダイス 「ペグウェル・ベイ、ケント州
 -1858年10月5日の思い出」(部分

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ペグウェル・ベイはドーバー海峡に面した湾で、手前の4人はダイスの家族です。
朝の光景で、画面上の方に、この頃現れたドナティ彗星が描き込まれています。

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右端にダイス自身が描かれています。

風景画は12点展示されていて、どの作品も近景と遠景が同じような密度で
細かく描かれています。

ウィリアム・ダイス(1806–1864)はラファエル前派に影響を与えた画家で、
自身もラファエル前派を称賛しています。

4.近代生活

ウィリアム・ホルマン・ハント 「良心の目覚め」 1853-54年
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金持ちの男性の愛人になっている女性が本来の生き方に目覚める瞬間を
描いています。
左下の、小鳥を捕まえている猫がこの場を象徴していて、鏡には外の世界が
映っています。

ラファエル前派は当時の社会に対して批判的な風俗画を描いています。

5.詩的な絵画

1850年代になるとロセッティは写実的なラファエル前派から離れ、
ダンテの詩やアーサー王伝説などを題材にした作品を描くようになります。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「ダンテの愛」 1860年
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ダンテの詩、「新生」を題材にしていています。
右下にシダルをモデルにしたベアトリーチェ、左上にキリストの顔をした
太陽を配し、真中は愛の寓意で、日時計と弓矢を持っています。
画面を太陽と月星で2分割した、装飾的な作品です。

この頃にアーツ・アンド・クラフツ運動の創始者となるウィリアム・モリス
(1834-1896)やエドワード・バーン=ジョーンズ(1833-1898)がロセッティの
元に集まり、中世にあこがれた作品を描くようになります。

2011年に目黒区美術館で開かれた、「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展の
記事
です。

6.美

1860年代にはロセッティは装飾性の強い、唯美主義的な作品を描くようになります。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「最愛の人(花嫁)」 1865-66年
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旧約聖書の「雅歌」に触発された作品で、未来の夫の前でヴェールを脱ぐ
花嫁を描いています。
花嫁の服は日本の着物を基にしています。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「ベアタ・ベアトリクス」 1864-70年頃
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結婚後わずか2年で亡くなったシダルをベアトリーチェに重ね合わせて
描いた作品とのことです。
背景にダンテとベアトリーチェ、フィレンツェの街、時を表す日時計が
見えます。
光輪をつけた小鳥の咥えているのはケシの花で、シダルがアヘン剤の
過剰摂取で亡くなったことを示しています。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「プロセルピナ」 1874年
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プロセルピナはローマ神話の女神で、冥界の神プルートーに誘拐され、
冥界のザクロの実を食べてしまったため、1年の半分を冥界で、
半分を地上で過ごすことになっています。
モデルはウィリアム・モリスの妻のジェイン・モリスで、ジェインは
ロセッティと親密な関係にあったそうです。
波打つ黒髪と流れるような衣装、紅い唇と紅いザクロが印象的な、
濃密な作品です。
画面左下に、「ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 1874年の初め」と
書いてあります。

7.象徴主義

象徴主義の画家、エドワード・バーン=ジョーンズの作品も3点展示されています。

エドワード・バーン=ジョーンズ 『「愛」に導かれる巡礼』 1896-97年
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会場の最後に展示されています。

チョーサーの翻案による「薔薇物語」を題材にしていて、「愛」が
薔薇に恋焦がれた巡礼の手を取って導いています。
巡礼はサンティアゴ巡礼の象徴のホタテ貝を頭巾に着け、「愛」は
象徴である大きな矢を手にしています。
中世的な雰囲気のある端正な作品ですが、制作には20年かかったそうです。

2012年には三菱一号館美術館で、「バーン=ジョーンズ展」開かれました。

「バーン=ジョーンズ展―装飾と象徴」の記事です。


短い期間に活動を終えたラファエル前派の特徴のよく分かる、
主要な作品の揃った、とても魅力的な展覧会です。

展覧会のHPです。




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【2014/01/27 20:57】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(2) |
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  • こんばんは。
  • ラファエル前派の活動期間は短いですが、作風が魅力的で、女性関係もいろいろあり、興味が尽きません。
    これだけまとめて観ることが出来るのはほとんど無い機会だと思います。

    【2014/01/28 23:32】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 楽しみです。
  • 目黒区美術館で以前「ラファエル前派~」を見て大好きになりました。

    森美術館にも行くつもりです。

    今年もいろんな記事を読むのを楽しみにしております。

    【2014/01/28 21:22】 url[まっきい #-] [ 編集]
    please comment















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    森アーツセンターギャラリーで開催中の 「テート美術館の至宝 ラファエル前派展 英国ヴィクトリア朝絵画の夢」に行って来ました。 「ラファエル前派展」公式サイト:http://prb2014.jp/ 芸術家グループ「ラファエル前派」。正式名称「ラファエル前派兄弟団」(Pre-Raphaelite Brotherhood)、略してP.R.B.秘密結社のような響きを内包する前衛芸術...
    【2014/01/29 21:23】

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