日本美術院再興100年特別展、「世紀の日本画展」 東京都美術館
上野
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東京国立博物館と東京都美術館の共同企画により、「日本美術の祭典」として、
東博では「クリーブランド美術館展」「人間国宝展」、都美術館では
「世紀の日本画展」が開かれます。

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そのうちの、上野の東京都美術館で開かれている、
日本美術院再興100年特別展、「世紀の日本画展」に行ってきました。
会期は前期が2月25日(火)まで、後期が3月1日(土)から4月1日(火)までです。
前期と後期ですべての作品が入れ替わります。

院001


前期展示に行ってきました。

日本美術院は明治31年に岡倉天心によって創設されています。
そして、一時休止状態だったのを横山大観たちによって大正3年(1914)に再興され、
今年で100年を迎えています。
展覧会は日本美術院を舞台に活躍した大家たちの代表作と、現役の画家の作品、
約60点を展示するものです。

第1章 名作で辿る日本美術院の歩み

狩野芳崖 「不動明王」 明治20年(1887) 
 東京藝術大学 重要文化財

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会場の最初に展示されています。
狩野派の技法を基にしていますが、洋画の空間表現に触発された作品です。
光背の代わりに背景に金泥を塗って輝かせ、その姿を浮き上がらせています。
狩野芳崖(1828-1888)は日本美術院創設の前に亡くなっていますが、
橋本雅邦と共に近代日本画の創始者とされています。

下村観山 「弱法師(よろぼし)」 六曲一双 
 大正4年(1915) 東京国立博物館 重要文化財

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能の「弱法師」を題材にした作品で、下村観山の代表作です。
讒言を信じた父によって家を逐われた俊徳丸は盲目となり、あちこち彷徨ったのち、
春の彼岸の日に四天王寺に辿り着きます。
満開の梅の傍らに立つ俊徳丸は痩せ衰えた姿で、杖を持ち、大きな赤い入り日に
向かって合掌しています。
束の間の極楽の様を表していて、能の家に生まれた下村観山ならでは作品と云えます。

下村観山(1873-1930)は日本美術院の創設者の一人です。

横浜美術館で2月11日まで開かれている、「生誕140年記念 下村観山展」展の記事です。

安田靫彦 「飛鳥の春の額田王」 昭和39年(1964) 滋賀県立近代美術館
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大和三山や藤原京に建つ本薬師寺の伽藍などを背景にした、
万葉歌人額田王の姿です。
王の着ける領巾(ひれ)、寺院の甍、大和三山の緑と衣装、
寺院の丹塗りの柱の赤が調和しています。

安田靫彦(1884-1978)は歴史画の大家で、院展の最初から参加しています。
清潔で気品のある画風が特徴です。

「鏡獅子」 平櫛田中 昭和15(1940)年 東京藝術大学
彫003

高さ50.4cmの彩色木彫で、六代目尾上菊五郎(1885-1949)の当り芸、
「春興鏡獅子」を写した作品です。
この「鏡獅子」を元に平櫛田中の代表作となる高さ2mの「鏡獅子」が
昭和33年(1958)に完成し、現在は三宅坂の国立劇場のロビーに展示されています。

平櫛田中(1872-1979)は人形師出身で、岡倉天心に師事し、後に東京美術学校の
教授も勤めています。
初期の院展には彫刻部もありました。

前田青邨 「京名所八題(都八題)」 大正5年(1916) 東京国立博物館
縦長の画面を上手く使った新鮮な構図と勢いの良い水墨による8幅の掛軸で、
前期には清水寺、本願寺など4幅が展示されています。

前田青邨(1885~1977)は闊達な筆遣いで歴史画や花鳥画を描いています。

奥村土牛 「閑日」 昭和49年(1974) 東京国立近代美術館
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簡潔な描き方で、猫の姿を捉えています。

奥村土牛(1889~1990)の作品は画面構成が堅牢です。

2010年に山種美術館で開かれた、「生誕120年 奥村土牛」展の記事です。

第2章 院展再興の時代-大正期の名作

下村観山 「白狐」 大正3年(1914) 東京国立博物館
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再興院展の第1回に出展された作品で、前年に亡くなった岡倉天心を偲んで、
天心の書いたオペラ台本「白狐」、1911に亡くなった菱田春草を偲んで、
春草の代表作「落葉」「黒き猫」の木立と柏の葉を取り入れています。
稲荷神のお使いの白狐は稲穂を咥えています。
写実でありながら、装飾性に満ち、静かで心に沁みる作品です。

安田靫彦 「五合庵の春」 大正9年(1920) 東京国立博物館
縦長の掛軸で、庵で寝ている良寛と手まりを持って起こしに来た村の子どもを
描いています。
箱根に取材したという鬱蒼とした杉木立の中の理想郷です。
安田靫彦は良寛に傾倒しています。

第3章 歴史をつなぐ、信仰を尊ぶ

小林古径 「竹取物語より『昇天』」 大正6年(1917) 京都国立近代美術館
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絵巻物の形で、6つの場面が描かれていて、当初は12の場面にする予定
だったそうです。
かぐや姫はこの世のすべてを忘れ、天女たちに囲まれ、天に帰っていきます。

小林古径(1883-1957)の画風は端正で高潔です。

2013年に山種美術館で開かれた、「小林古径生誕130年記念 古径と土牛」展の記事です。

小山硬 「天草(礼拝)」 昭和46年(1971) 愛知・名都美術館
天草のキリシタンシリーズの1点です。
畳敷きの教会で礼拝する信者たちで、節くれ立った老人の手が
その信仰を表しています。

平山郁夫 「祇園精舎」 昭和56年(1981) 島根・足立美術館
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仏伝シリーズの一つです。
悟りを開いた釈迦が祇園精舎に於いて弟子たちに説法しているところです。
金地の中に釈迦と弟子たちの姿が浮かび上がっています。
祇園精舎は釈迦が説法を行なった所として知られ、平家物語の冒頭にも、
「祇園精舎の鐘の声」と詠われています。

第4章 花。鳥。そして命を見つめて

平山郁夫 「天堂苑樹」 昭和41年(1966) 滋賀・佐川美術館
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仏伝シリーズの一つです。
森の中で釈迦が立って菩薩たちに説法するさまを描いたものです。
金色の諸仏は緑の木々の中に浮かび、左下にうずくまる白象と
遠くの赤いインドの大地が色を添えています。
白象は釈迦の母、麻耶夫人の象徴とのことで、麻耶夫人は白象が
胎内に入る夢を見て、釈迦を懐妊しています。

第5章 風景の中で

今村紫紅 「熱国之巻(熱国之朝)」(部分) 大正3年(1914) 
 東京国立博物館 重要文化財

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タヒチに行ったゴーギャンに倣って、貨物船に乗りインドに向かい、バンコク、
シンガポール、ラングーンなどを経由してカルカッタに着いています。
作品はこの時見た光景を元にして描いた絵巻物で、今村紫紅の代表作です。
黄土を塗った明るい画面に点描を用いて、童話のような異国の風物を描いています。

今村紫紅(1880-1916)は日本画の革新を目指して精力的に活動した画家ですが、
35歳で亡くなっています。

速水御舟 「洛北修学院村」 大正7年(1918) 滋賀県立近代美術館
初期の作品で、山里の鄙びた風景を描いています。
凝り性の速水御舟はこの頃、群青に凝っていて、画面は群青色に覆われています。

速水御舟(1894-1935)は鋭い画風の作品を描いていますが、40歳で亡くなっています。

後藤純男 「淙想」 昭和44年(1969)
北海道の層雲峡に取材した作品で、深山の滝を描いています。
白い滝の落下する断崖はごつごつと半ば抽象的に描かれ、鈍い金色に彩られた様は
荘厳で、仏画を観るようです。
作者によれば、「滝に自らの想いを重ね、具現化する」絵となったそうです。

村上裕二 「市」 平成11年(1999)
白を基調にした画面で、中国の活気に満ちた市場の様子を描いています。

大野逸男 「水溜りの道」 平成11年(1999)
林の中の道に出来た水溜りです。
金泥を使った重厚な画面で、何気ない景色を荘厳なものにしています。

第6章 幻想の世界

郷倉千靭 「拾卵図」  昭和6年(1931) 世田谷美術館
古代中国の、夜に鶏の卵を採ったという話を基にした作品です。
桶を持って卵を拾う女性と、怒る鶏が古代風の雰囲気で描かれています。

岩橋英遠 「神々とファラオ」 昭和42年(1967) 
 株式会社フジ・メディア・ホールディングス

砂漠を行く隊商の上の空間に大きく古代エジプトの神々やファラオの姿が
描かれています。

第7章 人のすがた

西田俊英 「プシュカールの老人」 平成7年(1995) 島根・足立美術館
緑の画面の中に、老人が膝を組んでこちらを向いて腰掛けています。
真直ぐにこちらを見ている目も緑色で、静かな表情に老人の威厳が表れています。

小倉遊亀 「径」 昭和41年(1966) 東京藝術大学 
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会場の最後に展示されています。
力強く簡潔な画面の中に女性らしい優しさが感じられます。
2人と1匹の足並みも揃って、リズムがあります。
むかし、こんな形の折り畳みカゴがあったのを思い出します。
新鮮でモダンな現代日本画です。
 
近代日本画を担ってきた日本美術院を代表する作家の力作が揃っていて、
とても見応えのある展覧会です。
後期の展覧会も是非観たいものです。

展覧会のHPです。




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【2014/02/02 22:08】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(4) |
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  • あかーるさん、こんばんは。
  • 上野は日本美術院ゆかりの地であり、まさに日本美術の聖地ですね。
    後期には前田青邨の「知盛幻生」や小林古径の「孔雀」も展示されるので、また観に行こうと思っています。

    【2014/02/06 20:44】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 100年分いっぺんに見れました
  • 上野の日本美術の祭典3つの中で、私も世紀の日本画展を先週末鑑賞しました。平山郁夫画伯の作品等なじみの作品、待望の安田靫彦画伯の「飛鳥の春の額田王」がターゲットでした。前期だけでしたが、100年分をいっぺんに見れて、行った甲斐が有りました。上野は日本美術の聖地ですね。

    【2014/02/06 17:46】 url[あかーる #X037UcDo] [ 編集]
  • こんばんは。
  • 近代日本画の代表作が揃っているので、壮観でした。
    特に現役の画家の作品も多く展示されていて楽しめました。
    後期は全点展示替えですから、ぜひ観に行きたいものです。

    【2014/02/03 22:59】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 世紀の日本画
  • 初日の午後行って来ました。以前どこかで見たことのある作品が沢山ありましたが、それだからこその名品揃いで堪能しました。後期も是非行こうと思っています。

    【2014/02/03 21:37】 url[まさちゃん #-] [ 編集]
    please comment















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