「ザ・ビューティフル―英国の唯美主義1860-1900」展 三菱一号館美術館
東京
chariot

丸の内の三菱一号館美術館では、「ザ・ビューティフル―英国の唯美主義
1860-1900」展が開かれています。
会期は5月6日(火・祝)までです。

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19世紀後半の英国で興った、視覚的な美しさを追求する新しい芸術運動である
「唯美主義」の運動を紹介する展覧会で、ヴィクトリア・アンド・アルバート
博物館の所蔵作品を中心に、油彩画、家具、工芸品など約140点が展示されています。
フランスで印象派の興った時期に相当し、日本では三菱一号館の建設された頃です。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「愛の杯」 
 1867年 油彩・板 国立西洋美術館

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ラファエル前派を代表する画家、ロセッティの作品です。
この時期のロセッティは唯美主義的な作品を描くようになっています。
愛の杯は恋人同士が酌み交わす杯のことで、杯にもハートの模様が彫られ、
背景の蔦は誠実な愛を表しています。

フレデリック・レイトン 「パヴォニア」 
 1858-59年 油彩・カンヴァス 個人蔵

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美の象徴とされる孔雀の羽根をかざして振り向いています。
モデルはイタリア人の女性で、ラテン的な顔立ちをしていて、
漆黒の髪が魅惑的です。

フレデリック・レイトン(1830-1896)はラファエル前派と親交のあった
画家ですが、後にはロイヤル・アカデミーの会長職を勤めています。

フレデリック・レイトン 「母と子(さくらんぼ)」 
 1864-65年 油彩・カンヴァス ブラックバーン美術館

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白百合を活けた壺、鶴を描いた日本の金屏風を置き、ペルシャ絨緞の上で
くつろぐ母子の姿はまさに唯美的な世界を表しています。
当時の富裕層は唯美主義の示した様式に憧れ、自分たちの生活にも
取り入れるようになります。

ウォルター・クレイン 「奥方の部屋」(『ハウスビューティフル』口絵) 
 1881年 スティーヴン・キャロウェイ・コレクション

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女性がお茶を淹れ、猫がお皿のミルクを飲んでいる居間のマントルピースには、
染付らしい陶磁器や日本の団扇が飾ってあります。

ウォルター・クレイン(1845-1915)はラファエル前派の影響を受けて、
絵画、挿絵などの装飾芸術を数多く手がけています。
また、ウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動にも参加しています。

ウィリアム・モリス(1834-1896)は、友人のエドワード・バーン=ジョーンズ
(1833-1898)とともにロセッティの元に集まり、中世風の作品を描いています。

ウィリアム・モリスは、アーツ・アンド・クラフツ運動の創始者で、
産業革命により大量生産の粗悪品が出回っていると考え、モリス商会を
設立して、生活に密着した手仕事の美を復活させようとしました。
その模範を中世に求めた家具や壁紙、陶磁器、ステンドグラスなどを
生産しています。

ブルース・ジェイムズ・タルバート 『壁紙「ひまわり」デザイン』 
 1878年 水彩・ボディカラー・紙 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館

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唯美主義においては、ひまわりは男性的な美、百合は女性的な美、
孔雀は美に対する誇りを表すそうです。

ウィリアム・ド・モーガン 「大皿」 
 1888年頃 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館

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直径40cmほどの大きなお皿で、孔雀が画面いっぱいに羽根を広げています。

ウィリアム・ド・モーガン(1839-1917)はモリス商会にデザインを提供し、
自らも陶磁器の工房を開いています。

エドワード・バーン=ジョーンズ 「ブローチ」 
 1885-95年 個人蔵(ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館寄託)

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七宝、トルコ石、サンゴを用い、高価なルビーは鳥の目に嵌められています。
唯美主義による宝飾のデザインでは、宝石その物の価値ではなく、創意、抽象性、
色彩を重視しているそうです。

エドワード・バーン=ジョーンズは絵画の他に多くのデザインも手掛けています。

エドワード・バーン=ジョーンズとジョン・ヘンリー・ダール 
『タペストリー 「ポモーナ」』 
 1900年頃 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館

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縦170cmほどのタペストリーで、モリス商会の制作です。
ポモーナはローマ神話の果実の女神で、リンゴを抱えています。

アルバート・ムーア 「花」 
 1881年 油彩・カンヴァス テイト

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縦150cm近くの細長い作品で、古代ギリシャのような衣装の女性が
彫像のように立っています。
衣の表現が見せ所で、ムーアは布を描くことが好きだったそうです。

アルバート・ムーア(1841-1893)はギリシャ彫刻に学んで、
古代風の衣装の女性を装飾的に描いています。
作品から物語性を除き、絵としての形式美を追求しています。

アルバート・ムーア 「真夏」 
 1887年 油彩・カンヴァス ラッセル=コート美術館

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縦横2m近い大作で、会場の最後に展示されています。
左右対称を意識していて、双頭の鷲を彫った豪華な銀の椅子で眠る
女性の両脇に古代ギリシャ風の髪型と衣装のギリシャ鼻の女性が
金の扇を持って立ち、仏画の三尊像のような画面です。
女性の衣装とマリーゴールドの花輪のオレンジ色がとりわけ眼を惹く、
古代趣味とジャポニズムが一緒になった、優美この上ない作品です。

唯美主義は時には反道徳的ということで強い非難も浴びたそうです。
その点、日本の美術は元々装飾性が基にあるせいか、唯美主義とは
近しいような気がします。

いろいろの要素の交じり合っている英国の唯美主義について、作品を通じて
分かりやすく紹介してくれる、興味深い展覧会です。

展覧会のHPです。


六本木の森アーツセンターギャラリーでは4月6日(日)まで、「ラファエル前派展 
英国ヴィクトリア朝の夢」が開かれているところです。
ロセッティやバーン・ジョーンズの作品が展示されています。

「ラファエル前派展 英国ヴィクトリア朝の夢」の記事です。

2011年に目黒区美術館で、「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展が
開かれていました。

「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展の記事です。

2012年にはこの三菱一号館美術館で、「バーン=ジョーンズ展―装飾と象徴」が
開かれていました。

「バーン=ジョーンズ展―装飾と象徴」の記事です。


 

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【2014/02/04 22:16】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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