「医は仁術」展 上野 国立科学博物館
上野
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上野の国立科学博物館では特別展、「医は仁術」が開かれています。
会期は6月15日(日)までです。

医001


儒教の「仁」の思想により施されていたという江戸時代の医療を中心に
紹介する展覧会です。

徳川家康の薬壺
漢0367

十一子の水戸徳川家初代頼房に贈ったものです。
徳川家康は健康への関心が高く、自分で薬の調合も行なっています。

薬箱
漢0360

御典医クラスの立派な薬箱で、原洋遊斎の蒔絵が施され、ガラスの壺や
べっ甲のさじも入っています。

錦絵 「うさぎのはしか退治」
庶0352

うさぎは月で杵を突いて仙薬を作っているという、中国の伝説に
拠っているのでしょう。
病気への知識の乏しかった時代の庶民の願望を表しています。

薬屋の看板や薬箱
庶0374

福久屋石黒傳六商店の看板
庶0372

石黒傳六商店は金沢市尾張町で現在も営業しており、当代は20代目です。
看板に書いてある烏犀圓や紫雪は江戸時代から伝わる名薬です。

貝原益軒 「養生訓」 正徳3年(1713)
庶0413

黒田藩の藩医で儒者の貝原益軒が83歳の時に長寿の秘訣を書いたもので、
養生の大切さを述べています。

「神農本草経(しんのうほんぞうけい)」
漢0358

中国最古の医薬書(医薬書)で365種類の生薬が分類されています。

山田図南 「傷寒論集成」
漢0357

江戸中期の医者、山田図南による「傷寒論」の研究書です。
「傷寒論」は後漢末期から三国時代に書かれた中国の医学書で、
日本でも広く読まれています。

平田長太夫の阿蘭陀流外科修行証書 寛文6年(1666)
蘭0364

和蘭流(紅毛流)の免状の写しで、オランダ商館医と商館長代理のサイン、
訳文と解説を記した阿蘭陀通詞の署名があります。
当時の出島にも現在の大使館医務官に相当する医者が駐在していました。

「和蘭全躯内分合図」と「験号(げんごう)」
蘭0361

長崎通詞の本木良意が天和2年(1682)頃に翻訳した日本最初の翻訳解剖書です。
明和9年(1772)に鈴木宗伝が図版「和蘭全躯内分合図」と解説書「験号」として
刊行しています。
十二指腸を「指十二ハバの長の腸」とするなど、その後の翻訳語の元になっています。

「山脇東洋像」
解0418

山脇東洋(1706-1762)は京都の医師で、伝統的な陰陽五行説による五臓六腑の
概念に疑問を持ち、日本で初めて刑死人の解剖を行なっています。

「山脇東洋真蹟解剖図」 宝暦4年(1754)以降
解0386

「海上随鴎解剖記録及び解剖下図」 文化5年(1808)
解0390

稲村三伯(後の海上随鴎)が京都で主催した解剖の記録で、60人近くが
参加しています。

解0392

解0396

山脇東洋の頃に比べると解剖図もかなり精密になっています。

「重訂解体新書銅版全図」 文政9年(1826)
解0398

杉田玄白(1733-1817)や前野良沢(1723-1803)たちの編纂した「解体新書」は
内容に誤りが多かったので、杉田玄白は高弟の大槻玄沢(1757-1827)に
改訂を依頼し、大槻玄沢は36年かけて内容を充実させた改訂版を刊行しています。

大槻玄沢 「蘭学階梯」 
蘭0378

大槻玄沢の編纂した、初の全般的蘭学入門書の初版本です。
その後の日本の蘭学の普及と発展に大いに貢献しています。

緒方春朔 「種痘必順弁」
蘭0416

筑前秋月藩の藩医、緒方春朔(1748-1810)の著した、日本で最初の種痘書です。
読みやすいように漢字仮名混じり文で書いてあります。
緒方春朔の行なった種痘は牛痘ではなく、人痘です。

「奥田木骨」 文政2年(1819)
木骨は整骨医が勉学のために工人に制作させたもので、この木骨は
大阪の医師奥田万里が尾張藩に献納したものです。

解0402

「鳴滝塾舎之図」
シ0384

文政7年(1824)に長崎郊外の鳴滝に設けられた、シーボルトの診療所兼学塾です。
日本初の本格的な西洋医学の教えられた所です。
シーボルト(1796-1866)はドイツ人医師で、1823年にオランダ商館医として
来日し、塾の開設を許可され、多くの塾生に西洋医学を教授しています。

シーボルトの書いた蘭文免許状
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阿波の医師、高良斎(1799-1846)に出した免許状で、内科、外科、
本草学を修め、手術も行なったとあります。
高良斎はシーボルトの元で7年間学んでいます。

シーボルトの処方箋
シ0380

「華岡青洲像」
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「南紀青洲先生乳岩奇核之図」
青0412

乳がん手術の症例図で、患者の名前、症例、手術手順、治験が書かれています。
華岡青洲(1760-1835)は日本で初めて全身麻酔による乳がんの摘出手術に
成功しています。

「奥伝誓約文之事」
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華岡青洲の塾、春林軒で修学を終えた門人たちが提出した、血判を押した誓約書で、
手術や秘薬のことなどを親・友人といえどもみだりに教えないというものです。
筆頭にある高松涛亭は土佐の医師で、兄の妻、千鶴は坂本龍馬の長姉です。

緒方洪庵の書
末0349

医者自然之臣也とあります。
緒方洪庵(1810-1863)の適塾は、医学・衛生行政の発展に尽した長与専斎、
日本赤十字社を設立した佐野常民などを輩出していますが、塾頭を務めた
福沢諭吉は血を見るのが怖いこともあってか、医学への道には進んでいません。

扁額 「順天堂」 天保14年(1843) 順天堂大学蔵
末0422

佐藤泰然(1804-1872)が佐倉に順天堂を開いた時に、「順天堂」と命名した
姫路藩医山田安朴の揮毫したものです。

ポンペの講義録
末0334

松本良順(1832-1907)が翻訳しています。
西暦紀元一千八百五十八年 於長崎出嶋和蘭医官ポンペ氏筆記 とあります。
ポンペ((1829-1908)はオランダの軍医で、長崎の医学伝習所で本格的な
西洋医学を講じています。
松本良順は佐藤泰然の子で、後に初代の陸軍軍医総監を勤めており、
司馬遼太郎の「胡蝶の夢」の主人公の一人です。

「七新薬」
末0335

ポンペの講義録の一部を刊行したもので、7つの新薬について述べています。
訳者の司馬凌海(1840-1879)は6カ国語に通じ、語学の天才と云われた人で、
司馬遼太郎の「胡蝶の夢」の主人公の一人です。


最後は現代医学のコーナーです。

3Dプロジェクションマッピングで各臓器が次々映し出され、その解説が
されています。
現0324

3Dプリンターによる臓器モデルで、正常肺モデルと肺がんモデルが
並んでいます。
現0327

ヒトiPS細胞も展示されていて、顕微鏡で見ることが出来ます。
現IMG_0316

ミュージアムショップの商品もかなり個性的です。
現0427


タイムスリップシアターや鉄拳のパラパラ漫画シアターも上映され、
豊富な資料を駆使して、江戸から現代への医療の進歩の跡を辿る、
大変興味深い展覧会です。
日本の医療は先人たちの努力と工夫により、和漢洋を取り混ぜて
連綿と受け継がれてきたものだと思います。

展覧会のHPです。


  
 

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