「バルテュス展」 東京都美術館
上野
chariot

上野の東京都美術館では、「バルテュス展」が開かれています。
会期は6月22日(日)までです。

バル001


フランスの画家、バルテュス(1908-2001)の回顧展で、油彩画40点以上や
素描などが展示され、会場には晩年を過ごしたスイスの自宅のアトリエが
再現されています。

バルテュス(本名、バルタザール・ミシェル・クロソウスキー・ド・ローラ)
はパリでポーランド貴族の家系に生まれています。

幼い頃から絵が上手く、11歳のときに描いた、猫のミツとの出会いと
別れを描いた絵は、詩人のリルケに絶賛されています。

「ミツ」 本 1921年 
 節子・クロソフスカ・ド・ローラ・コレクション

40枚のモノクロの絵によるお話で、最後は猫が居なくなって
泣いている場面で終わっていて、リルケの序文が付いています。

バルテュスは画家を志しますが、美術学校には行かず、独学で
習得しています。

1926年にイタリアを訪れ、アレッツォの聖フランチェスコ聖堂で
ピエロ・デラ・フランチェスカの描いた「聖十字架伝」を観て
感銘を受けています。
特にその構図の幾何学性に関心を持ったそうで、「聖十字架伝」の
模写も3点、展示されています。

イギリスのヨークシャー地方を訪れた時にはその光景に魅了され、
それがきっかけとなって、ヨークシャーの荒野を舞台にした、
エミリー・ブロンテの「嵐が丘」(1847年)の挿絵を1933年から
35年にかけて描いています。
鉛筆とインクで描かれた挿絵15点が展示されていて、どれも人物の
姿勢が誇張され、強い緊張感のある構図になっています。

その頃、婚約者のいるアントワネット・ド・ワットヴィルとの
恋に悩んでいた自分をヒースクリフに、アントワネットをキャサリンに
なぞらえていたとのことですが、強烈な個性のヒースクリフに自分を
重ね合わせていたのかと思いました。

「キャシーの化粧」 1933年 
 油彩、カンヴァス ポンピドゥー・センター

バル004

挿絵のうちの1点を油彩で描いたもので、女中を間に置いて、
裸のキャサリン(キャシー)を白く、深刻な表情のヒースクリフを
黒く描き分け、三角形の構図の中に入れています。
そっぽを向いたようなキャサリンの顔が印象的です。

バルテュスは1937年にアントワネットと結婚しますが、
後に離婚しています。

「夢見るテレーズ」 1938年 油彩、カンヴァス メトロポリタン美術館
チラシに使われている作品です。
少女と猫という、バルテュスのよく描いたモチーフの最初の作品です。
バルテュスは少女を神聖不可侵な存在として、イマジネーションの
源にしています。
モデルはパリに居た時の隣人の娘で、扇情的なポーズですが、
色彩は統一され、描写は写実的です。

「おやつの時間」 1940年 油彩、厚紙(板にマウント) テート
バル005

テーブルにはパン・ワイン・りんごといったキリスト教を連想させる
物が並んでいて、少女が幕を上げてそれを見ています。
つややかで重厚なマチエールの作品で、モデルは第2次世界大戦当時
住んでいたシャンプロヴァン地方の農家の娘です。
バルテュスは1939年の開戦で召集されますが、負傷により除隊しています。

「美しい日々」 1944-46年 油彩、カンヴァス
 ワシントン、ハーシュホーン博物館と彫刻の庭

バル008

手鏡を見る少女というモチーフの最初の作品とのことで、モデルは
バルテュスが第2次世界大戦中に一時滞在していたスイスの少女です。
少女の手足から暖炉の炎、薪まで、斜めの線を強調した幾何学的な構図で、
左からの白い光と暖炉の赤い炎を対照させています。

「決して来ない時」 1949年 油彩、カンヴァス 
 フランシス・リーマン・レーブ・アート・センター

バル002

少女と猫を描いた作品の一つで、英語の題は”The Week of the
Four Thursdays(木曜日が4日ある週)”です。
フランスでは学校は木曜日が休みなので、木曜日が4日ある週とは、
あり得ないという意味の慣用句だそうです。
少女はかなり無理な姿勢で猫を撫でていて、観る人の目を惹き付けます。
バルテュスの描く人物の姿勢はロマン主義的な動的な感じではなく、
静的で幾何学的なものに見えます。

「地中海の猫」 1949年 油彩、カンヴァス 個人蔵
バル003

パリのオデオン広場に現在もある地中海料理のレストラン、
「ラ・メディテラネ」の店内を飾るため描かれた絵で、猫になった
バルテュスが魚を食べようと待ち構えています。
虹が魚になり、伊勢海老から少女につながり、円環状になっていて、
少女のモデルはジョルジュ・バタイユの娘です。
色彩も明るく、バルテュスの中でも特にデザイン的だなと思ったら、
店内装飾のための作品でした。
魚や伊勢海老はとても巧みに写実的に描かれていて、具象画家としての
バルテュスの技量の高さを見せています。

「横顔のコレット」 1954年 油彩、カンヴァス 
 節子・クロソフスカ・ド・ローラ・コレクション

バル009

バルテュスは1953年にブルゴーニュ地方の城館に移り住んでいて、
モデルは城館の修理に当った石工の娘です。
簡潔で安定した構図の作品で、光に浮かび上がる少女の顔は仏像を
思わせます。

1961年にはフランスの文化大臣だったアンドレ・マルローの要請により、
ローマのアカデミー・ド・フランスの館長に就任しています。

「朱色の机と日本の女」 1967-1976年 
 カゼイン、テンペラ、カンヴァス ブレント・R・ハリス・コレクション

バル007

バルテュスは1962年にアンドレ・マルローの依頼でパリの
日本古美術展の準備のため日本を訪れた際に、当時20歳の
節子夫人と出会い、1967年に結婚しています。
モデルは着物姿の節子夫人で、和風の室内を描いていますが、
かなり極端なポーズです。

「トランプ遊びをする人々」 1966-1973年 
 カゼイン、油彩、テンペラ、カンヴァス 
 ロッテルダム、ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館

バル006

初期ルネサンスのジョットを思わせる古風な雰囲気の作品ですが、
ここでも人物が机の上に身を乗り出すなど、斜めの線を意識した
特異な構図になっています。
バルテュスは日本文化への関心が深く、人物の表情は歌舞伎の見得から
取ったそうです。

画業の長いバルテュスは多くのモデルを題材にしていて、
作風も変化しています。
その跡をたどり、バルティスの美意識に触れることの出来る、
とても興味深い展覧会です。

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【2014/04/27 20:01】 美術館・博物館 | トラックバック(2) | コメント(0) |
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