「描かれたチャイナドレス―藤島武二から梅原龍三郎まで」展ブロガーナイト ブリヂストン美術館
京橋・東京
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京橋のブリヂストン美術館では、「描かれたチャイナドレス―藤島武二から梅原龍三郎まで」展が
開かれています。
会期は7月21日(月・祝)までです。

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6月12日の夜にブロガー特別内覧会が開かれたので行ってきました。
貝塚健ブリヂストン美術館学芸部長の解説をお聞きして鑑賞しました。

展示会場内の画像は特別に主催者の許可を得て撮影したものです。


大正時代に起こった中国趣味のブームにより、美術の世界でも中国服を着た女性が
描かれるようになります。
画家は現地に行ったり、日本でモデルに着せたりして中国服を題材にした作品を描いています。
展覧会では1910年代から40年代にかけて日本人洋画家が中国服の女性を描いた作品
約30点が展示されています。

内覧会のフォーチューンクッキー付きウェルカムアイスティーです。

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会場にはいろいろなチャイナドレスも展示されています。
襟の形や袖の長さもさまざまです。
来られた方たちの中にもいろいろなデザインのチャイナドレスの方がおられました。

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藤島武二 「匂い」 1915年 東京国立近代美術館
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ご近所であれば結構なお話です。
紅色を強調した画面で、中国服の女性は気だるげに頬杖をついています。
テーブルにはカーネーションと一緒に鼻煙壷(嗅ぎ煙草の容器)が置いてあります。
色調や女性の表情など、雰囲気のある作品で、今回赤く塗った展示室の壁の色とも
合っています。
日本人が油彩で中国服を描いた最初の作品で、藤島武二は中国服に執着し、
約60着を買い集めたそうです。

藤島武二 「女の横顔」 1926-27年 ポーラ美術館
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ヨーロッパ留学中に感銘を受けたルネッサンス絵画に倣った作品で、風景を背景にして
人物を真横から描いています。
中国服は詰め襟が多いですが、この服には襟がなく、首筋を見せています。
モデルは佐々木カ子ヨ(かねよ)で、竹久夢二の作品にも描かれたお葉さんでもあります。
鼻筋の通った秀麗な顔立ちをしていて、日本人には横顔の美しい人がいないと言っていた
藤島武二を満足させたモデルです。

久米民十郎 「支那の踊り」 1920年 個人蔵
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最近、永青文庫で発見された作品で、額縁にも雰囲気があります。
イギリスのヴォ―ティシズム(渦巻派)という運動の影響を受けている作品とのことで、
たしかに女性は渦を巻いているような異様な形をしています。
着ているのは上着とスラックスです。
久米民十郎(1893-1923)は実業家の久米民之助の長男で、イギリスで絵画を学び、
また渡航するため横浜のホテルに居たところ、出航の前日に関東大震災に遭って
亡くなっています。
若くして亡くなったため、現在確認されている久米民十郎の作品は10点も無いそうです。

児島虎次郎 「西湖の画舫」 1921年 高梁市成羽美術館
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画舫とは飾り立てた遊覧船のことで、江南では文人たちが妓女を乗せて
音楽を楽しんだり、酒宴を催していました。
児島虎次郎は中国を旅行していて、その時に見た情景と思われます。
独特の強い色調で歌う妓女や胡弓を奏でる楽師、水辺の景色などを描いた、
異国情緒にあふれた作品です。

小出楢重 「周秋蘭立像」 1928年 リーガロイヤルホテル
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小出楢重は「支那服を描きたい。支那服を描きたい」と口癖のように言っていたので、
友人たちが上海出身で神戸に住んでいたダンサーの周金蘭を紹介しています。
本名を出すのははばかれるというので金を秋に換えて、絵の題にしています。
小出楢重らしい、こってりとした絵肌で、扇を持ち、バラを活けた花瓶の乗ったテーブルに
片手を置いた周金蘭の立ち姿を描いています。

周金蘭は自分に似ていないと言い、小出夫人は後にホテルに飾られている
この絵を観たときに、顔は自分の顔だと言ったそうです。
小出の「Nの家族」には小出夫人も描かれています。

清水登之 「松江の茶館」 1929年 栃木県立美術館
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上海の茶館(喫茶店)のテラスで、人々がくつろいだり、家並みを眺めたりしています。
青い服の女性の纏足(てんそく)も描かれています。
清水登之は弟が上海の日本人学校の先生をしていた縁で訪れ、帰国後に描いています。

安井曾太郎 「金蓉」 1934年 東京国立近代美術館
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安井曾太郎の代表作で、モデルは上海総領事の娘の小田切峰子です。
日本に帰国中に安井のパトロンだった細川護立の依頼により描かれたそうです。
半袖で長い裾に深いスリットの入った濃紺の中国服を着て、足を組んでゆったりと
腰掛けています。
小田切峰子はいつも中国服を着ていて、よく中国人に間違えられたくらいで、
父は金蓉というあだ名を付け、絵の題名も峰子の希望によるものだったそうです。
貝塚さんによれば、この絵を近代美術館から借りられるかどうかで、展覧会が
成立するか否かが決まったということです。

梅原龍三郎 「姑娘とチューリップ」 1942年 東京国立近代美術館
梅原龍三郎は1939年に北京を訪れて以来、戦争が激しくなる1943年まで6回も
北京に滞在しています。
定宿の北京飯店で描かれた作品で、梅原は午前中は窓から見える長安街を描き、
午後は姑娘(くーにゃん)を呼んで描いていたそうです。
姑娘とは若い女性という意味です。
袖無しの濃紺の中国服を着て、安井曾太郎の「金蓉」と同じような構図ですが、
色彩は強く、かなり雰囲気が違います。

正宗得三郎 「中国服を着た女」 制作年不明 個人蔵
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青い中国服の女性が小さな黒いぬいぐるみを持って座っています。
指輪もブレスレットも青色で揃っています。
顔の辺りの白い点は何かの光の反射が写り込んだものです。
モデルは「金蓉」と同じ小田切峰子で、こちらも細川護立の依頼により描かれたものと
思われます。
梅原龍三郎も同じ青い中国服でぬいぐるみを持った小田切峰子を描いているそうです。

正宗得三郎 「赤い支那服」 1925年 府中市美術館
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肩と袖に青をあしらった薄紅の中国服を着て、金の髪飾りを付けた女性が座っています。
2回目のヨーロッパ留学の時のフランス土産の布地を使って、妻の千代子が
「赤い支那服」を作り、それを着てモデルになったそうで、西洋と中国と日本が一つに
なった作品です。

三岸好太郎 「支那の少女」 1926年 北海道立三岸好太郎美術館
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三岸好太郎はヨーロッパに憧れていたのですが、外国に行けたのは1926年の
上海旅行だけで、この絵はその時描かれたものです。
胡弓を弾く女性の姿は唐俑のようで、エキゾチックな雰囲気があります。
油彩画ですが、左側に縦書きの漢字の書き込みもされています。

海外旅行は船で行く時代、最初の寄港地であり、欧米の文化の流れ込んでいた
上海は日本人にとって西洋の入口の意味を持っていたそうです。

恩地孝四郎 「白堊(蘇州所見)」 木版多色摺・紙 千葉市美術館
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恩地孝四郎は陸軍嘱託として1939年に中国中部を訪れています。
名所旧跡には関心が無く、場末や爆撃の跡の残る民家を写真に撮っていたそうです。
白壁で区切った空間に女性の半身を置いた、斬新な構成です。


こうして、まとめて観ると画家たちの中国服への関心の強さとともに、元は満州族の
民族衣装だった中国服がいろいろ変化していく様子も分かります。

かつては憧れの対象だった中国、外国への入口であった中国、日清戦争以来徐々に
日本が優越的地位を占めた中国への複雑な感情が反映されていることが分かる、
とても興味深い展覧会です。

展覧会のHPです。

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【2014/06/15 19:57】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(3) |
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    【2014/06/17 21:39】 url[ #] [ 編集]
  • こんにちは。
  • 異文化への憧れは芸術家にとって良い刺激になるようですね。
    異文化としての中国服という視点はなかなか興味深いものでした。
    ジャポニズムの陶磁器は親しみやすく、使ってみたくなります。

    【2014/06/16 06:40】 url[chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • 描かれたチャイナドレス
  • 前期の展示を見ましたので、安井曾太郎の絵は展示されていませんでしたから、もう一度行きたいです。
    同じ日にパナソニックミュージアムも行って
    フランス人の憧れたジャポニズム、日本人が
    憧れた中国服と、異文化に対する興味は今でも同じかもしれないと思いました。

    【2014/06/15 23:43】 url[まさちゃん #-] [ 編集]
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