「クールな男とおしゃれな女―絵の中のよそおい」展 山種美術館
恵比寿
chariot

山種美術館では「クールな男とおしゃれな女―絵の中のよそおい」展が開かれています。
会期は7月13日(日)」までです。

クール001


浮世絵から現代日本画まで、各時代に描かれた男女のファッションに
焦点を当てた展示です。

前田青邨 「異装行列の信長」 1969年
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天文22年(1553)に舅の斎藤道三との対面に臨む、若き日の織田信長の一行の姿です。
信長は、虎皮と豹皮の袴を着け、腰に瓢箪や火打石を括り付けた異形の姿で
会見場の美濃の正徳寺に乗り込んだといいます。
信長は木の葉模様の湯帷子の左袖を脱いで脇に挟み込み、指貫籠手を着けています。
右腰に付けているのは矢を容れる空穂のようです。
背景を小姓たちの顔と、足軽の陣笠で埋め尽くし、皆が同じ方向を向いた画面は
力に満ち、緊迫感があります。
様式性と写実性が一体となり、信長が歴史に踊り出してきた瞬間を見事に捉えた力作です。

安田靫彦 「出陣の舞」 1970年
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永禄3年(1560)の桶狭間の戦いに先立ち、幸若舞の「敦盛」を舞う信長の姿です。
信長は州浜に千鳥の片身替りの小袖を着て、織田家の家紋の木瓜(もっこう)紋の入った
長袴を履いています。
鎧櫃には桶狭間の戦いで着用したとされる紺糸縅具足が載っています。

人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり
一度生を享け、滅せぬもののあるべきか

「信長公記」によれば、信長は舞い終わると法螺貝を吹かせ、具足を着けさせ、
立ったままで湯漬けを食べて出陣しています。

前田青邨の描く信長の野太さに対し、安田靫彦の信長には張りつめた緊張感があります。

守屋多々志 「慶長使節支倉常長」 1981年
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男004

列柱のあるテラスからローマの街並を眺める支倉常長です。
はるばるとここまで来た思いであろう常長は、白と黒の市松模様のタイルに
合わせるように、白の小袖に黒の裃というシックな姿で描かれています。
一緒にいるグレート・デーンやヨクシャー・テリアらしい犬も白と黒です。
遠くに見えるサン・ピエトロ大聖堂の外観が出来上がったのは1593年です。
支倉常長は元和元年(1615年)に法皇パウルス5世に謁見しています。


鈴木春信 「梅の枝折り」 1767~68年頃
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6月15日までの展示です。
雪持ち竹模様の振袖を着た娘さんが、お供の女性の肩に乗って、咲いた梅の枝を
折ろうとしています。
実際には有り得ないような場面ですが、その姿は初々しく、脱いだ草履が
裏返っているのも面白い情景です。

上村松園 「杜鵑を聴く」 1948年
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装う女性と云えば、上村松園です。
ふと片手を上げ、聞こえてくるホトトギスの声に耳を傾けているところです。
手にした傘で、雨上がりの気配を表しています。
松園好みの青い着物には青海波の模様が入っています。

鏑木清方 「伽羅」 1936年
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沈香炉という、髪に香りを薫きしめるための枕でうたた寝をした女性が目を
覚ました姿です。
市松模様の帯が粋で、朝顔模様の着物や花菖蒲模様の打掛の色彩に
初夏の雰囲気が表れています。

伊東深水 「婦人像」 1957年
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洋装の女性がテーブルに頬杖を突いている姿で、モデルは女優の小暮実千代です。
柔らかな線描で、白い帽子、大きな白い襟と、赤い口紅、赤い長手袋の
対比が印象的です。
黒いテーブルにもその姿が映り、モデルの華やかさを良く表しています。

伊東深水は鏑木清方に師事しており、美人画を得意としています。

伊東深水 「吉野太夫」 1966年
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吉野太夫は江戸初期の京都の廓を代表し、茶道にも秀でていたとされる
太夫とのことです。
立兵庫という、上に伸ばした独特の髪形で、吉野太夫の名に因んで、
満開の桜花を背景に立っています。
桐や扇面散らしの模様で埋め尽くされた打掛や小袖の輪郭線は、リズムを
持って交差しています。
茶入を載せた盆を差し出している禿(かむろ)は、鹿の子絞りに菊を刺繍した
小袖を着ています。


小倉遊亀 「舞う(舞妓)」 1971年
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振袖姿の若い舞妓が金の扇をかざして、誇らしげに振り返った
瞬間をとらえています。
赤紫色の振袖の柄は梅、牡丹、紅葉、菊、南天など四季の草花をあしらって
賑やかです。
赤い帯は菊の模様で、襦袢の赤、足袋の白も見えます。
髪飾りも多く、金、銀、赤をあしらっています。
顔は日本画独特の、すっきりと美しい線描で表しています。
色彩を多く使い、若々しく、華やかな姿を生き生きと描いた作品です。


小倉遊亀 「舞う(芸者)」 1972年
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芸者が扇を帯に差し、右袖を抱え、左手を髪に添え、
首を少しかしげて振り返っています。

芸者の着物はあっさりした竹と流水の柄の黒留袖、白の帯も竹の柄です。
襟元の襦袢と帯の端に見える赤色がアクセントになっています。
眉のあたりの影、口許の形で舞妓との年齢の違いや、心意気を表し、
全体として色数を少なく、すっきりと描くことで芸者の粋な姿を描き出しています。

池田輝方 「夕立」 六曲一双 右隻 1916年
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江戸の風俗を描いた屏風絵で、絵馬を掲げた額堂には空を見上げる若い色白のやさ男、
色黒で髭の剃り跡も青い男、濡れた袖を絞る女、立ち話をする女たちが集まっています。
女の着物は夏なのであっさりした柄です。
今の季節にふさわしい画題です。

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柱には歌舞伎の「毛抜」の場面の絵馬がかかっています。
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左隻では石の鳥居と神門、築地塀、その上には青い銀杏が被さっています。
門の下では雨宿りしている町娘が小僧さんとひそひそ話をしています。
やさ男のことを話しているのでしょうか。

江戸時代の雨宿りの一瞬の人間模様を描き出していますが、人物たちは大正時代の
甘い雰囲気の顔立ちをしています。
雨宿りを主題にしたのは英一蝶が最初とのことですが、英一蝶がいろいろの
階層の人間を描いたのに対し、こちらは若い町人たちです。

池田輝方(1883-1921)は京橋の生まれで、水野年方に師事し、鏑木清方とは
同門で、美人画、風俗画を得意としています。

日本画は衣装の描写も見所なので、さまざまな時代のファッションを楽しめる、
面白い展覧会です。

山種美術館のHPです。


山種美術館の次回の展覧会は、「水の音 広重から千住博まで」展です。
会期は7月19日(土)から9月15日(月・祝)までです。

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【2014/06/05 20:47】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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