「ヴァロットン-冷たい炎の画家」展 ブロガー特別内覧会
東京
chariot

丸の内の三菱一号館美術館で開かれた、青い日記帳×「ヴァロットン-冷たい炎の画家」展
ブロガー特別内覧会に行ってきました。
展覧会の会期は9月23日(火・祝)までです。

ヴァ003


展示会場内の画像は特別に主催者の許可を得て撮影したものです。

「青い日記帳」主催のTakこと中村剛士さんがモデレーターで、高橋明也館長の
あいさつがあり、杉山菜穂子学芸員の解説を伺いました。

vIMG_0598.jpg


この展覧会はオルセー美術館とフェリックス・ヴァロットン財団の監修によるもので、
パリのグラン・パレ、アムステルダムのゴッホ美術館を巡回します。

フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)はスイスのローザンヌ生まれで、16歳のときに
パリに出て、アカデミックな絵画を学んでいます。

やがてモーリス・ドニたちのナビ派に参加しています。

右:「20歳の自画像」 1885年 油彩、カンヴァス ローザンヌ州立美術館

左:「5人の画家」 1902-03年 油彩、カンヴァス ヴィンタートゥール美術館
vIMG_0534.jpg


まだ若く、ちょっと不安そうな顔をしています。


ナビ派の画家たちです。
左から、ボナール、ヴュイヤール、シャルル・コッテ、ルーセルで、左後ろに立っているのが
ヴァロットンです。


右:「タデ・ナタンソン」 1897年 油彩、厚紙 ジュネーヴ、プティ・パレ美術館

左: 「自画像」 1897年 油彩、厚紙 オルセー美術館
vIMG_0529.jpg


タデ・ナタンソンはナビ派を支持した芸術雑誌、「ルヴュ・ブランシュ」の主宰者です。


30歳過ぎの自画像です。


「リュクサンブール公園」 1895年 油彩、カンヴァス 株式会社講談社
公園に集う男女や子供たちをおだやかに描いていて、後のヴァロットンの作品とは
少し感じが違います。
国立新美術館の『オルセー美術館展2010「ポスト印象派」』で観た、ヴュイヤールの
「公園」(1894年)に色調や雰囲気が似ています。


右:「ボール」 1899年 油彩、板に貼り付けた厚紙 オルセー美術館

左:「シャトレ劇場のギャラリー席3階」 1895年 油彩、板 オルセー美術館
vIMG_0548.jpg


女の子が赤いボールを追いかけて、日なたに飛び出してきた一瞬を捉えています。
ヴァロットン自身が建物の窓からこの角度で同じ場所を撮った写真も展示されていて、
写真のような感覚の作品であることが分かります。
向こう側では、二人の女性が静かに立ち話をしていますが、女の子を見下ろす視点とは
違って描かれています。
光と影、動と静の対照が鮮やかで、女の子の帽子と白い服、影が印象的です。

私は2010年に国立新美術館で開かれた、『オルセー美術館展2010「ポスト印象派」』に
展示されていたこの作品を観た時に強い印象を受け、ヴァロットンに興味を覚えるように
なりました。

『オルセー美術館展2010「ポスト印象派」』の記事です。


広い客席の左隅に小さくかたまった観客という、どこか変わった、素直でない
描き方をしています。


左:「夕食、ランプの光」 1899年 油彩、板に貼り付けた厚紙 オルセー美術館
vIMG_0563

貧乏画家だったヴァロットンは1899年に大画商の娘のガブリエルと結婚しますが、
彼女には3人の連れ子がいました。
妻と2人の子どもと一緒に食事をしているヴァロットン自身は真っ黒なシルエットに
なっていて、居心地の悪さを表しています。
特に左側の人物に対する好意的でない感情がうかがえます。
「アンティミスト」(「親密派」)を名乗ったヴュイヤールがよく描いた室内情景で、
猫柄の入ったランプや赤い縞のテーブルクロスなど見せ所はあるのですが、
微妙な雰囲気に包まれています。


右:「ポーカー」 1902年 油彩、厚紙 オルセー美術館

左:「アレクサンドル・ベルネーム夫人」 1902年 油彩、厚紙 オルセー美術館
vIMG_0588.jpg


ポーカーに興ずるガブリエルの実家の人たちです。
人物を隅に押し込めて、中心には人のいない大テーブルを置くという、かなりひねくれた
構図で、これもヴァロットンの感情を反映しているようです。


ガブリエルの母親の肖像で、画商の家らしく絵に囲まれていますが、壁に掛かった
1枚は傾いています。


「貞節なシュザンヌ」 1922年 油彩、カンヴァス ローザンヌ州立美術館
vIMG_0595.jpg

ボックス席で女性と2人の老人が密談していて、女性はいわくありげな目つきをしています。
旧約聖書のダニエル書にある、スザンナが水浴中に2人の長老にのぞき見されるという
話を基にしています。
ボックス席はフランス語では「浴槽」と呼ばれていて、フランス人ならこの絵の意味が
すぐ分かるそうです。
旧約聖書の話とはかなり異なる、皮肉っぽいパロディーです。


右:「トルコ風呂」 1907年 油彩、カンヴァス ジュネーヴ美術・歴史博物館
vIMG_0522.jpg

ヴァロットンはアングルに傾倒し、「トルコ風呂」を見た時は感激して涙を流したということです。
同じく裸体の女性の群像を描いていて、肌の色は艶やかですが、全体に青味がかった
色調はアングルの豊穣さに比べると、冷ややかです。
立っている女性はタオルを使って背中を拭いているように見えますが、西洋人は
このようなしぐさをするのでしょうか。
2人の女性が、何をしているのだろうかという顔でそれを見ています。
ヴァロットンは浮世絵に関心を持ち、所蔵もしていたので、浮世絵を見て知ったのでしょうか。


右:「オウムと女性」 1909-13年 油彩、カンヴァス スイス、個人蔵

左:「赤い絨毯に横たわる裸婦」 1909年 油彩、カンヴァス ジュネーヴ、プティ・パレ美術館
vIMG_0628.jpg


赤と暗緑色という補色の組合わせの間に白い肌の裸婦を置いています。
裸婦は振り向きながらこちらを見ていて、観ていると画面に引き込まれそうです。


右:「残照」 1911年 油彩、カンヴァス カンペール美術館

左:「カーニュの俯瞰的眺望」 1921年 油彩、カンヴァス ローザンヌ州立美術館
vIMG_0553.jpg


風景を形として捉えていて、面白い作品です。


色面で構成された風景です。


右:「アフリカの女性」 1910年 油彩、カンヴァス トロワ近代美術館

左:「チューリップとマイヨールによる彫像」 1913年 油彩、カンヴァス スイス、個人蔵
vaIMG_0646.jpg

2点ともきっちりとした写実画で、布地やガラスの質感もよく表されています。
ヴァロットンが古典的な技法にも優れていたことが分かります。


右:「駆け足で女性を連れ去るサテュロス」 1910年 油彩、カンヴァス ローザンヌ州立美術館

左:「竜を退治するペルセウス」 1910年 油彩、カンヴァス ジュネーヴ美術・歴史博物館
vaIMG_0656.jpg


ギリシャ神話の、英雄ペルセウスが怪獣を退治してアンドロメダを救う話であることは
分かりますが、アンドロメダの髪型は今風で妻のガブリエルのようだし、怪獣はワニだし、
何だかペルセウスは野生動物を虐待しているように見えます。


右:「廃墟と化したユゥルの教会」 1917年 油彩、カンヴァス オルセー美術館

左:「くっきりと浮かび上がるスーアンの教会」 
  1917年 油彩、カンヴァス ワシントン・ナショナル・ギャラリー

vaIMG_0664.jpg

1900年にフランス国籍を取得していたヴァロットンは1914年に第一次世界大戦が始まると
軍に志願しますが、さすがに年齢制限で拒否されます。
その代わりに従軍画家として戦場に行き、激戦地だったヴェルダン周辺を取材しています。
この大戦ではヴァロットンの義理の息子がドイツ軍の捕虜になっています。

ヴァロットンが描くと戦場の廃墟の風景はさらにシュールなものになります。


三菱一号館美術館の所蔵する、モーリス・ドニの「純潔の春」も展示されています。
大きな作品で、ドニらしいやわらかな明るい色彩にあふれ、同じナビ派でもヴァロットンは
かなり画風が違うことが分かります。


ヴァロットンは木版画家としても知られていて、三菱一号館美術館は約180点の作品を
所蔵しています。

上:「突撃」、下:「街頭デモ」 1893年 木版、紙 三菱一号館美術館
vIMG_0546.jpg

細かい線を使わず、黒と白の対比を効かせるのがヴァロットンの版画の特徴です。
アンドレ・マルティが企画し、1893年から95年に掛けて出版された創作版画集、
「レスタンプ・オリジナル」に掲載されています。


右:「息づく街パリ」より「学生たちのデモ行進」、左:「切符売り場」 
 1894年 ジンコグラフィ、紙

vaIMG_0606.jpg

ヴァロットンの版画は風刺が効いていて、皮肉でユーモラスです。


上:「アンティミテ(親密)」より「嘘」、下:「最適な手段」 
 1897年 木版、紙 三菱一号館美術館

vaIMG_0578.jpg

10点のシリーズで、男女の微妙な関係を洗練された中にも醒めた目で見ています。


ともかく、ヴァロットンは一筋縄では行かない歯応えのある画家なので、それぞれの作品ごとに
いろいろ考えさせられる、とても面白い展覧会です。


「展覧会のHPです。


同時開催で、「バルテュス最後の写真 ―密室の対話」展が9月7日(日)まで開かれています。

vaIMG_0682.jpg

最晩年に手の自由が利かなくなったバルテュスがデッサンの代わりにモデルを写した
ポラロイド写真が展示されています。
ドアを開けて入る小さな資料室に展示されていて、バルテュスらしい秘密めかした
雰囲気があります。
この展覧会は、歴史的空間でバルテュスの作品を公開したいというご遺族の意向により、
三菱一号館美術館で開かれているものだそうです。

6月22日まで上野の東京都美術館では、「バルテュス展」が開かれていました。

「バルテュス展」の記事です。


次回の展覧会は、「ボストン美術館 ミレー展」です。
会期は2014年10月17日(金)~2015年1月12日(月・祝)です。

ミ001


その次の展覧会は、「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」です。
会期は2015年2月7日(金)~2015年5月24日(日)です。

ワ001

関連記事

【2014/07/01 21:54】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
comment
 
コメントを書く
コメントは承認後に公開されます。ご了承ください。
please comment















管理者にだけ表示を許可する

trackback
trackback url ↓
http://nekoarena.blog31.fc2.com/tb.php/2297-879744da

プロフィール

chariot

Author:chariot
東京のビルの多い街で暮らしています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

カテゴリー

ブログ内検索

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード


| ホーム |