「オルセー美術館展 印象派の誕生―描くことの自由―」 国立新美術館
乃木坂・六本木
chariot

六本木の国立新美術館では、「オルセー美術館展 印象派の誕生―描くことの自由―」が
開かれています。
会期は10月20日(月)まで、火曜日は休館日です。

オ001


パリのオルセー美術館の所蔵する、印象派と印象派に影響を与えた画家たちの作品、
約80点が9章に分かれて展示されています。

1章―マネ、新しい絵画

印象派への道を拓いたマネの作品が5点、バジールの作品が1点、展示されています。

エドゥアール・マネ  「笛を吹く少年」  1866年  油彩、カンヴァス
オ011

マネの代表作の一つで、会場の最初に展示されています。
赤、白、黒、金の色彩が明快で、まずくっきりした赤色が目に飛び込んできます。
灰色の背景の中でズボンの黒い帯が輪郭を際立たせています。
マネは描き方が平面的であるとしてサロンから非難されたということですが、
たしかにほとんど陰影も描かれていません。

吹いている笛の復元品も展示されています。
ファイフといって、鋭く高い音を出す木管の笛で、軍楽隊に使われていたそうです。
皇帝近衛隊直属の少年兵をモデルにしています。
フランスが普仏戦争に敗れてナポレオン3世が退位し、帝政が終わるの
はこの絵の4年後です。

エドゥアール・マネ  「読書」  1865年(1873ー75年に加筆) 油彩、カンヴァス
オ015

窓辺のマネ夫人を描いていて、白いドレス、カーテン、ソファは
勢いの良い筆で描かれ、夫人の顔も日の光を受けて明るく輝いています。
ネックレスやベルトの黒をうまくあしらっているのもマネらしいところです。
本を読んでいるのは息子で、後に描き足されたものだそうです。

フレデリック・バジール  「バジールのアトリエ、ラ・コンダミンヌ通り」 
 1870年 油彩、カンヴァス

オ016

フレデリック・バジール(1841-1870)は南仏の裕福な家庭の出身で、
モネやルノワールなどを支援しています。
中央の背の高い人物がバジール、ステッキを持って絵を見ているのはマネ、
階段下に腰掛けているのはルノワール、階段から話しかけているのは
印象派を支援した詩人のエミール・ゾラです。
バジールはこの作品を描いた1870年に普仏戦争で戦死しており、
バジールの姿はマネが描き足したものです。


2章―レアリスムの諸相

クールベ、ミレー、コロー、ドービニーらの展示です。

ジャン=フランソワ・ミレー  「晩鐘」  1857-59年 油彩、カンヴァス
オ002

バルビゾン派のミレーの代表作です。
夕暮れの紅く染まった光の中で、遠くの教会の鐘が聞こえてきそうです。

ギュスターヴ・カイユボット  「床に鉋をかける人々」 1875年 油彩、カンヴァス
オ010

カイユボットの代表作で、都市の労働者の仕事を題材にしています。、
3人の腕の作る輪の形や、縞になった削り跡、壁の四角い枠の模様による
幾何学的な構成の画面です。
カイユボットはこの絵をサロンに拒否されて、第2回印象派展に出展しています。
たしかにバルビゾン派の絵は農業労働を描いていますが、これは観る方が
自然や牧歌的な世界にあこがれを持っていたからで、都市の下層労働者を描いても
サロンでは不評だったことでしょう。

2013年にはブリヂストン美術館で、「カイユボット展―都市の印象派」が開かれました。
その時はこの作品は出展されていませんでしたが、今回観ることが出来ました。
オルセー美術館自体も、裕福だったカイユボットが買い集めた印象派の仲間の作品が
核になっています。

「カイユボット展―都市の印象派」の記事です。


3章―歴史画

伝統的な歴史画の展示です。

ジャン=レオン・ジェローム 「エルサレム」 1867年 油彩、カンヴァス
遠くにエルサレム市街を見渡せる丘をローマ兵の一団が下っています。
丘の地面には3本の磔柱と処刑された者の影が映っていて、ゴルゴダの丘であることを
示しています。
槍を持った兵士が十字架に向かって手を差し上げているのは、福音書に書かれた、
イエスの死を見届けて、「まことにこの方は神の子であった」と言った百人隊長でしょうか。

ジャン=レオン・ジェローム(1824-1904)は写実的な画風で歴史やオリエントを題材にした画家です。
2013年に三菱一号館美術館で開かれた、「奇跡のクラークコレクション展」にはジェロームの
「蛇使い」が展示されていました。

「奇跡のクラークコレクション展」の記事です。


4章―裸体

アレクサンドル・カバネル  「ヴィーナスの誕生」  1863年  油彩、カンヴァス
オ005

アレクサンドル・カバネル(1823-1889)は新古典主義を継承するアカデミズムの
代表的な画家で、この作品もナポレオン3世の買上げになっています。
印象派の画家からは守旧派として非難されていますが、絵の上手さはさすがです。
波の上に横たわっている姿は何となく不自然ですが、空や海の青色はとても
やわらかく優美です。

ウィリアム・ブグロー  「ダンテとウェルギリウス」  1850年  油彩、カンヴァス
ダンテの「神曲」の一場面で、ダンテとウェルギリウスの前で、地獄に堕ちた男たちが
掴み合って闘争しています。
盛り上がった筋肉まで克明に描き出していて、すさまじい迫力があります。
アドルフ・ウィリアム・ブグロー(1825-1905)はカバネルと同じく、アカデミズムの
代表的な画家です。


5―印象派の風景 田園にて/水辺にて

モネ、ピサロ、シスレー、セザンヌ、ルノワール、ブーダンと、印象派の画家たちが
勢揃いしています。

クロード・モネ  「かささぎ」  1868-69年  油彩、カンヴァス
オ004

雪が冬の日に照らされてまぶしく照り輝いています。
白の中にさまざまな色合いを見せる雪を見事に描き出していて、扉に止まった
黒いかささぎが動きを予感させています。

アルフレッド・シスレー  「洪水のなかの小舟、ポール=マルリー」
 1876年 油彩、カンヴァス

オ017

災害である洪水も印象派の画家にとっては良い画題になります。
家の壁の下にまで跡が付いていて、これでもかなり水の引いた後なのが分かります。
シスレーの特徴の広く取った空は良く晴れて白い雲が浮かび、水面にも
その色が映っています。

ポール・セザンヌ  「首吊りの家、オーヴェール=シュル=オワーズ」 
 1873年 油彩、カンヴァス

セ005

1874年の第1回印象派展に出品された作品です。
セザンヌは印象派の長老格のピサロとよく郊外での写生を行なっています。
オーヴェール=シュル=オワーズはパリの北郊にある町で、後にゴッホは
この地で亡くなっています。


6章―静物

ポール・セザンヌ  「スープ入れのある静物」  1873-74年頃  油彩、カンヴァス
オ009

セザンヌのよく描くリンゴが籠に入っています。
後ろの風景画はピサロの作品です。

アンリ・ファンタン=ラトゥール  「花瓶のキク」  1873年  油彩、カンヴァス
オ014

菊の花は細密に重厚に描かれていて、印象派とは趣きが違います。
アンリ・ファンタン=ラトゥール(1836-1904)はサロンで認められた画家ですが、
印象派の人たちとも親しく、その運動にも共感しています。


7章―肖像

フレデリック・バジール 「 家族の集い」  1867年(1869年に加筆) 油彩、カンヴァス
オ008

南仏モンペリエでワイン醸造業を営むバジール家の人々です。
明るく明快な色彩で、人物は左から右に三角形に並び、
背後に南仏の風景が広がっています。
バジール自身は左端に描かれています。
幸福そうな情景ですが、バジールは1870年に戦死しています。

アレクサンドル・カバネル  「ケラー伯爵夫人」  1873年  油彩、カンヴァス
豪華な衣装をまとい、大きな真珠のイアリングを着けた姿を写実的に描いていますが、
青ざめた色彩で、眼窩は暗く落ちくぼみ、唇は薄く、とても冷たい表情です。
なまじ技量の高い画家だけに、ここまで描いてしまうものかと思います。
伯爵夫人はこの絵に納得したのでしょうか。

クロード・モネ  「死の床のカミーユ」  1879年  油彩、カンヴァス
モネの最初の妻、カミーユの最期の姿を青を使った荒々しい筆遣いで描いています。
すべてを描きとめようとするところに画家の業を感じます。


8章―近代生活

クロード・モネ  「草上の昼食」  1865-66年  油彩、カンヴァス
オ013

とても大きな作品で、左側は縦418㎝もあります。
マネの「草上の昼食」に触発された作品とのことで、光の中に浮かぶ人物を大きな
画面に存分に描いています。
左右2枚に分かれて大きさも違うのは、家賃が払えず代わりに大家に渡した作品で、
買い戻した時には損傷がひどく、切り取るしかなかったためだそうです。
モネも初期は貧乏で、バジールやカイユボットに助けてもらっています。

エドガー・ドガ  「競馬場、1台の馬車とアマチュア騎手たち」 
 1876-87年 油彩、カンヴァス

オ007

ドガの好きな競馬を題材にしています。
馬や人物を画面からはみ出すようにした画面構成はドガの特徴です。
ドガは普仏戦争に従軍した頃から眼を悪くして、やがて屋外での制作を
しなくなりますが、それまではよく競馬の情景などを描いています。

クロード・モネ 「サン=ラザール駅」 1877年 油彩、カンヴァス
オ006

パリのサン=ラザール駅は印象派の画家たちがよく題材にしています。
その中でもこの作品は有名で、画面を区切る駅舎の大屋根が効果的です。
作品を実際に観ると、色彩の散らばりが心地良く、汽車の煙が青色に
塗られているのが印象的でした。


9章―円熟期のマネ

最終章にはマネの晩年の作品が6点、展示されています。

エドゥアール・マネ  「ロシュフォールの逃亡」  1881年頃  油彩、カンヴァス
オ012

最晩年の作品で、会場の最後に展示されています。
ロシュフォールはナポレオン3世の治世を批判して、太平洋のニューカレドニアに
追放されますが、小舟で逃亡しています。
マネは10年以上前の事件に興味を持って描いています。
幾人かの人の乗った小舟が沖の船に向かって進んでいます。
月明かりの下の一面の青い海に緊張、不安、希望が一緒になって浮かんでいます。


印象派の殿堂、オルセー美術館ということで、印象派の作品をたっぷり鑑賞しました。
特に、マネの「笛を吹く少年」、モネの「かささぎ」「サン・ラザール駅」、カイユボットの
「床に鉋をかける人々」が良かったです。

出品リストには第1回印象派展時の相関図というのも載っています。

オ019


会場は作品保護のため冷房が効いているので、何か着る物を持って行かれると良いでしょう。


国立新美術館では9月25日(木)から12月15日(月)まで、「チューリッヒ美術館展」が開かれます。

チ001

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【2014/07/19 20:23】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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