「印象派のふるさと ノルマンディー展 -近代風景画のはじまり-」 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
新宿
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東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館(9月1日より改名 
旧:損保ジャパン東郷青児美術館)では、11月9日(日)まで、
「印象派のふるさと ノルマンディー展 -近代風景画のはじまり-」が開かれています。

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フランス北部のノルマンディーの景観は19世紀前半から風景画家たちの注目を集め、
多くの作品が描かれています。
セーヌ川河口のオンフルールはウジェーヌ・ブーダンの、対岸のル・アーヴルは
ラウル・デュフィの出身地でもあります。

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展覧会では約80点の油彩、素描、版画、写真などが展示されています。

作者不詳 「ジュミエージュ修道院の眺め」
 1830年頃 ヴィルキエ、ヴィクトル・ユゴー博物館

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ジュミエージュ修道院はルーアンの西にあり、ロマネスク様式の建築です。
841年にノルマン人のバイキングによって破壊された後に再建されますが、
16世紀のユグノー戦争や18世紀のフランス革命によって破壊され、
現在は廃墟になっています。
ノルマンディーの名も、このノルマン人に由来しています。

ウジェーヌ・イザベイ 「浜に上げられた船」 1865-1870年 エヴルー美術館
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1815年にナポレオン戦争が終わり、当時風景画が盛んだったイギリスからターナーなどの
画家たちが風景の良いノルマンディーを訪れています。
イギリスの画家の影響を受けて、フランスの画家たちもノルマンディーを訪れます。
ウジェーヌ・イザベイ(1803-86)はフランスの風景画家で、ターナーなどの影響を受け、
度々ノルマンディーを訪れ、海の景色を描いています。
小さな作品ですが、ロマン主義の画家なので船も傾いていて、ドラマチックな雰囲気です。

カミーユ・コロー 「オンフルール」 制作年不詳 ランス美術館
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オンフルールはセーヌ川左岸の河口にある、古い小さな港町です。
カミーユ・コロー(1796-1875)はよくノルマンディーを訪れ、抒情的な風景画を描いています。

ギュスターブ・クールベ 「海景・凪」 1865-67年 ロン=ル=ソニエ美術館
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写実主義の画家クールベ(1819-77)はドーヴィルなどに滞在して、海辺の景色を
よく描いています。

ヨハン・バルトールト・ヨンキント 「サント=カトリーヌ教会前の市場」 
1865年 ウジェーヌ・ブーダン美術館、オンフルール

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サント=カトリーヌ教会はオンフルールにある教会です。
ヨハン・バルトールト・ヨンキント(1819-91)はオランダの画家で、フランス各地の
水辺の景色を描いています。

ウジェーヌ・ブーダン 「ル・アーヴルの港、青空」 
1852年 ブーローニュ=シュル=メール市立美術館

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ル・アーヴルはセーヌ川右岸の河口にある、大きな港町です。
帆船の停泊する港から蒸気船が勢いよく煙を上げて出ていくところです。
ウジェーヌ・ブーダン(1824-98)は海辺の空の景色を描く画家として知られています。
オンフルール生まれで、ル・アーヴルに転居し、そこで少年時代のモネに屋外で描くことを
勧めています。
1841年にチューブ入り絵具が開発されたことも屋外での制作を容易にしています。

ウジェーヌ・ブーダン 「ル・アーヴル、ウール停泊地」 1885年 エヴルー美術博物館
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夕暮れの港で空も紅く染まり、帆柱や帆桁が半ばシルエットになっています。

クロード・モネ 「サン=タドレスの断崖」 1867年 松岡美術館
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クロード・モネ(1840‐1926)はパリ生まれですが、ル・アーヴルで育ち、10代の時に
ブーダンと知り合い、屋外で絵を描くことを教わっています。
サン=タドレスはル・アーヴルの北にある町で、モネの父の別荘がありました。
初期の作品ですが、モネらしく光を強く意識した作品です。

1874年の第1回印象派展に出展され、印象派の名前の元となった「印象 日の出」は
ル・アーヴルの港を描いた作品です。

アレクサンドル・デュブール 「オンフルールの帆船」 
 1887年 ウジェーヌ・ブーダン美術館、オンフルール

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アレクサンドル・デュブール(1821-1891)はオンフルール生まれで、ブーダンの友人の画家です。

アレクサンドル・デュブール 「オンフルール、サン=シメオンでの食事」 
 制作年不詳 トゥルーヴィル、ヴィラ・モンテベロ美術館

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サン=シメオン農場はオンフルールにある農場兼宿屋で、1860年代にはコロー、クールベ、
ヨンキント、ブーダン、モネらが集まって絵を描いていて、印象派発祥の地とも言える所です。
宿屋の建物は現在は高級ホテルに改装されているそうです。

ウジェーヌ・ブーダン 「トゥルーヴィルの海岸にて」 
 1880-85年 サンリス美術考古博物館

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トゥルーヴィルはノルマンディーを代表する保養地で、1863年にパリと結ぶ鉄道が開通し、
パリのサン=ラザール駅から6時間で着くようになりました。
多くの観光客がノルマンディーを訪れるようになり、画家たちの題材にもなりました。
ブーダンはその観光客がすぐ買ってくれるような海辺の風景を1865年から描き始めています。

ヴィットリオ・マッテオ・コルコス 「別れ」 
オンフルール、ウジェーヌ・ブーダン美術館

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純白のドレスの女性がパラソルを持ち、眺めやっている海には汽船の煙だけが見えます。
別れを告げた相手は大西洋を越えて行くのでしょうか。
ヴィットリオ・マッテオ・コルコス(1859-1933)はイタリアの画家で、流行のファッションの
女性をよく描いています。

アンリ・ド・サン=デリ 「オンフルールの市場」 
 制作年不詳 ル・アーヴル、アンドレ・マルロー美術館

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晴れた日の市場の賑わいで、日差しを受けた人の影も描き込まれています。
定期市は現在も開かれているそうです。
正面の尖塔はサント=カトリーヌ教会の鐘楼で、その右が教会です。
英仏の間で戦われた百年戦争(1337-1453)で破壊されましたが、船大工の手によって
再建されており、フランスでは最古=最大の木造教会です。
アンリ・ド・サン=デリ(1878-1949)はル・アーヴル市立美術学校に学び、後にオンフルールに
住んでいます。

ラウル・デュフィ 「海の祭り、ル・アーヴルへの公式訪問」 
 1925年頃 ル・アーヴル、アンドレ・マルロー美術館

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海にちなんだ式典でしょうか、港には満艦飾の汽船や帆をふくらませたヨット、櫂を立てた
ボートが集まり、手前では馬車のパレードが歓呼の中を進んでいます。
ル・アーヴル生まれのラウル・デュフィ(1877-1953)はノルマンディー各地を
よく題材にしています。

第二次世界大戦中、1944年の連合国軍によるノルマンディー上陸作戦に続く攻撃により
ル・アーヴルの市街は破壊されましたが、戦後に再建されています。

ラウル・デュフィ 「サン=タドレスで水浴する女性」 
 1935年頃 ル・アーヴル、アンドレ・マルロー美術館

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フォービズムやキュビズム時代のような強い色彩と形の背景の中に女性が座っています。
画面の中心に女性を描くのはデュフィのよく描いた構図です。

デュフィの作品は10点ほど展示されていて、晩年の作品に登場する黒い貨物船の
描き込まれた作品もあります。
正面を向いている黒い影のような船はやがてデュフィ自身を乗せていくのでしょうか。

フェリックス・ヴァロットン 「オンフルールの眺め、夏の朝」 
 1912年 ボーヴェ、オワーズ美術館

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夏の明るい日射しが道に影を映し、遠くにはオンフルールの町と教会が見えます。
高々とした木立の緑も鮮やかですが、どこか不思議な印象を受ける木々の姿です。
フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)はスイス生まれで、フランスで活動し、
よくオンフルールに滞在しています。

ちょうど、丸の内の三菱一号館美術館では9月23日(火・祝)まで、
「ヴァロットン-冷たい炎の画家」展が開かれているところです。

「ヴァロットン-冷たい炎の画家」展の記事です。


19世紀以降のフランス絵画の中で、特に印象派の誕生にノルマンディーの果たした
役割を知ることの出来る、とても興味深い展覧会です。

展覧会のHPです。


次回の展覧会は、「東郷青児〈超現実派の散歩〉と収蔵品選」展です。
会期は11月15日(土)から12月25日(木)までです。

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【2014/09/08 20:51】 美術館・博物館 | トラックバック(2) | コメント(0) |
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